大修復を終えたグラン・パレ、15メートルのカーテンに le19Mの卓越の職人技による光の雨が輝く。

Paris 2025.06.30

2021年3月に大規模改修のために閉館したグラン・パレ。昨年夏のパリ・オリンピックのフェンシング会場に用いられ、シャネルのデフィレが行われ......と段階的に再開が進められていたのだが、ついに6月、全館リニューアルオープンを果たした。

まずは6月6日にプティ・パレに向かい合ったエントランスから光が入るガラス屋根でおなじみのネフ(身廊)側が再開。こちら側の入口は基本的に有料イベント用である。もっとも「フランスのブラジル年」である今年、入って右手のスペースで7月25日まで開催されているブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトによる展覧会『Nosso Barco Tambor Terra』展とその吹き抜けの会場の上階に展示されているブラジルの現代アーティストによる絵画展は無料で、これはネフにおいて初めてのことだそうだ。

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シャネルの支援を得て大修復を終えたグラン・パレ。建物の鉄の構造を彩る植物レゼダ(モクセイソウ)の緑色が美しく蘇った。photography: Mariko Omura

グラン・パレにはシャンゼリゼ通り側にもうひとつ入口がある。新しくグラン・パレ内にオープンしたレストラン「Grand Café」の右手のSquare Jean Perrin/Avenue Général-Eisenhowerにある入口からの側が6月20日一般公開をスタート。こちらは展覧会場だけでなく、ブティックやティエリー・マルクスによるレストラン「Réséda Café(レゼダ・カフェ)」、サロン・セーヌやロトンド・デュ・パレ・ドゥ・ラ・デクーヴェルト......など無料でアクセスができる場所が待っている。すっかり美しくなった館内。広々とした空間を見て歩くだけでも楽しめるのだ。

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グラン・パレのコーナーにオープンしたレストランGrand Café(写真右)。この左手がネフ(身廊)の入り口、右手がスクアール・ペランの入口(写真右)だ。photography: Mariko Omura

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空間の美しさ、改修工事の見事さ、1900年の建築物の魅力などに感心しながらグラン・パレ内の無料散策を。photogarphy: Mariko Omura

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この空間のハイライト、それはネフ(身廊)側との境のガラスの壁を覆う高さ8メートル、幅15メートルのグリーンのカーテンだ。その大きさと美しさに圧倒される。これはシャネルが設立したle19Mに属するメゾン・ダールが参加して制作された。ちなみにシャネルはグラン・パレのエクスクルーシブなメセナで、この大改修の支援も行っている。カーテンのプロジェクトを率いたのは、刺繍のアトリエ・モンテックスの室内装飾部門であるスタジオMTXのアーティスティック・ディレクター、マチュー・バセ。コンセプトに900時間、そしてle19Mによる制作に720時間を要したという見事なカーテンだ。

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グリーンの濃淡の美しいカーテンがle19Mによって制作された。カーテンが開くとガラス越しにネフが姿を現す。photography: ©19M -Philippe Servent

15メートル幅のカーテンは9枚に分かれている。その両端の2枚はグラン・パレの設備上必要な要素を隠す目的のため固定され、残り7枚は舞台の幕が開くように手動式で左右に収納される仕組みだ。カーテンの色は、この修復で美しく蘇ったグラン・パレの骨格をなす鉄素材を彩るレゼダ・グリーンのグラデーションだ。「色のテストは光あり、光なしで100近く行って、建物に溶け込むグリーンの濃淡を見つけたんです。後ろ側のネフからの光を遮らないように布の透明度も検討を重ねました」と語るマチュー。布は防炎効果のある特殊なタイプが用いられているそうだ。その布の流れるような落ち方にも配慮がなされている。

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室内装飾を専門にするスタジオMTXのアートディレクター、マチュー・バセ。

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カーテンの両サイドに見られるのは、le19Mのメゾンダールがそれぞれのサヴォワールフェールで描いた光の雨。photography: ©19M -Philippe Servent

カーテン全体にリズミカルに配置された短冊状の帯は328枚。そのうち左右に固定された2枚のカーテン上に縫い留められた70枚の短冊に、"光の雨"をテーマにle19Mのルサージュ、モンテックス、パロマ、メゾン・ミッシェル、マサロ、ルマリエ、ロニョン、ゴッサンスがそれぞれのサヴォワールフェールを駆使した。それら短冊は高さ8メートルのカーテンの人間の目の位置に固定されているので、前を通る人々は職人たちの仕事をじっくりと見ることができるのだ。フランスが誇る1900年建築の文化遺産内、職人技が輝くサヴォワールフェールによるコンテンポラリーなクリエイションが息づく光景。それを見るためだけにでも、新しくなったグラン・パレに出かけたい。

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Lesage(ルサージュ)

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ルサージュはコットン・ツイードを素材にリュネヴィル・クロシェのテクニックで刺繍を施した。photography: ©19M -Philippe Servent

Paloma(パロマ)

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クレープデシンとシルクオーガンジーの素材を用いて、イタリアン・スモックとカナディアン・スモックを手がけたパロマ。繊細な刺繍ステッチで布を寄せ集めて麦モチーフに。photography: ©19M -Philippe Servent

Atelier Montex(アトリエ・モンテックス)

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モンテックスの刺繍は立体的。染めた糸を詰めたガラスの透明チューブで幾何学模様を描いた。photography: ©19M -Philippe Servent

Goossens(ゴッサンス)

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ゴールドの真鍮プレートに桜の花を槌を打って浮かび上がらせたゴッサンス。10枚の真鍮の短冊の中、桜の花は徐々に消えてゆく。photography: ©19M -Philippe Servent

Maison Michel(メゾン・ミッシェル)

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帽子作りで用いるフェルト、ラフィア、グログランの3素材のコラージュを施したメゾン・ミッシェル。photography: ©19M -Philippe Servent

Lemarié(ルマリエ)

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1880年創業の羽根細工のアトリエであるルマリエは、グリーンの羽根でマルケトリーを。photography: ©19M -Philippe Servent

L'Atelier Lognon(アトリエ・ロニオン)

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プリーツを専門とするアトリエ・ロニオンは現在ルマリエの傘下だ。モスリンにファンタジー・アコーディオン・プリーツを施した。photography: ©19M -Philippe Servent

Massaro(マサロ)

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1894年から高級靴作りに専念するマサロ。靴のつま先に小穴で模様を描く穿孔の技術を用いた。photography: ©19M -Philippe Servent

Grand Palais
-Avenue Winston Churchill
75008 Paris
-Square Jean Perrin/3, avenue Général-Eisenhower
75008 Paris
https://www.grandpalais.fr/fr
@le_grand_palais

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editing: Mariko Omura

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