
ラッピングされた凱旋門とパリの大人達
約束に遅れそうになりタクシーに乗ったときのこと。凱旋門のロン・ポワンと呼ばれる円形のロータリーを走りながら、急に運転手さんが「マダム、どう思う?」と外国語訛りのフランス語で話し掛けてきました。「何が?」と携帯をいじっていた手を止めて顔を上げたら、運転手が窓を開けて指差した先にはグレーの布で覆われた凱旋門が。
何だこれは?!布で覆われた凱旋門の周りにはトラックやクレーン車がたくさん停まっていたので「工事してるんですかね?」と答えたら「違いますよ。何とかっていうアーティストの作品らしいんですよ」あ〜、そういえばそんな記事を読んだっけ。梱包アートで有名なクリストとジャンヌ・クロード夫妻の意思を継いたプロジェクトで、コロナで延期になっていたのが実現したんだ!
「美しいと思う?」の質問に一瞬口ごもってしまいました。だって、驚きはあるけど良さが全く分からない・・・。その日は曇っていたので灰色の空の中に、グレーのシートですっぽり覆われた凱旋門は、悲しい雰囲気を醸し出しており、その周りはヘルメットを被って作業着を着たおじさん達が往き交い、クレーン車を操る姿はどこからどう見ても工事現場。後から分かったのですが、その日は公開日(公開は9月18日〜10月3日)の直前でまさに絶賛工事中だったようで、あながち私の感想も間違っていなかったのですが。
「 費用は1400万ユーロ(18億円)ですよ!それだけの税金をかけるなら、失業者やお腹が空いている人達を助けることを優先させるべきだ。政府は何を考えてるんだよ!」と、運転手さんは怒り心頭の様子。確かクリスト財団が全額支払い、公的・私的援助は1ユーロも受けていないと書いてあったような・・・??その後も目的地に着くまでの間、運転手さんのフランス政府へ対する怒りと、移民達の苦労、コロナ以降Uberなどの配車サービスの増加で正規のタクシーが苦境に喘いでいる状況や愚痴を延々と聞かされ、最後は「あんたも外国人だし苦労するでしょう」と同情してくれましたが、いえいえ、見ず知らずの人の愚痴を聞いて相槌を打つのも一苦労ですよ(^_^;)
強いて言うなら、1985年にもクリストとジャンヌ・クロード夫妻がポン・ヌフ橋を梱包したそうですが、凱旋門ではなくて他の建造物でもよかったのでは?凱旋門は第一次世界大戦で犠牲になった無名戦士の墓があり、聖火が灯り献花がされる、平和を祈るモニュメントです。この日も、クレーン車のすぐ横では軍服を着たムッシュー達がお墓を囲んでセレモニーを行っていました。歴史的建造物に溢れるパリにおいて、敢えてそういう場所と芸術を融合をしようとする発想が芸術の都ならではかもしれないけれども、平和を祈念する場所にはあまりふさわしくないように感じました。
***
タクシーといえば、先日こんな出来事もありました。南仏での結婚式に出席するため早朝6時発のリヨン駅発のTGV(高速鉄道)に乗らなくてはならないのにタクシーが全然捕まらず、Uberを呼んだら2人の運転手にキャンセルされて3人目の運転手がやっと来てくれたら、先日イダルゴ市長が決めた時速30Kmを遵守する運転手さんでした。時刻は5時半を回っていて、後25分しかない!早朝なので他に車も走っていないのにノロノロとカタツムリのような走行に「お願い!電車に間に合わないから、もっと早く走ってください!」と何度も頼んでも「市内は時速上限が30Kmと決まっているから出来ない!」と頑として譲らず、結局駅に着いたのが6時5分前でスーツケースを持って必死でドタドタ走って出発数秒前に電車に飛び乗りました。もちろん運転手さんの言い分が100%正しい。だけど、焦って心臓がバクバク、朝一番からドッと疲れました。
そし翌日パリへ戻ってきたら、ノーカーデーで救急車や消防車、タクシーは通行可ですが一般乗用車は不可でした。夏のような陽気で、ちょうどその日は文化遺産の日。人出が多く、自転車で移動している人達も沢山いました。リヨン駅からタクシーに乗ったら、セーヌ川沿いの車道を自転車がビュンビュンと走っていて危ないったらない。乗っているタクシーの真横にもさっきから自転車を乗った男性がぴったりとついていて危ないなぁと思っていたら、案の定ガツン!という音が。運転手さんは信号待ちで車に傷が付いていないか確認すると、「ここは車道だぞ!ふざけるな!」と男性に怒鳴りつけました。自転車は自転車専用レーンをヘルメット着用で走るのがルールなので、運転手さんが怒るのは最もだ。男性はヘルメットもしていない。もし車がドアを急にバンっと開いたら、横を走る自転車は転倒して大事故になるかもしれない。ところがである。男性は謝るどころか中指を立てて、聞くに絶えない下品な言葉で怒鳴り返してきて「Casse-toi!(失せろ!)」ブチ。運転手さんマジ切れ。「車道を走っている貴様が消えろ!」
そこからは思い出すのも恐ろしい、タクシーと自転車のカーチェイス。ノーカーデーだから車が少なく車道は空いている、蛇行して煽ってくる自転車を急発進で追いかけて自転車にぶつけて倒そうとするタクシー。 「ちょっと、ムッシュー止めて〜!危ない!先に私達を家まで送ってからにして!」と叫ぶ私に、「君まで叫ぶと余計ややこしくなるから、黙ってなよ!」と言うパートナー。コンティ通りのサンミッシェル橋から始まったカーチェイスは、男性が罵声を浴びせながらデザール橋を曲がったところで終了したけれども、生きた心地がしませんでした (>_<)
パリはヒステリーな大人が多すぎる・・・。
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