フランソワ・オゾンに聞く、『2重螺旋の恋人』秘話。

インタビュー 2018.07.31

第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、話題を呼んだフランソワ・オゾン監督の最新作『2重螺旋の恋人』が8月4日から日本でも公開となる。

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容姿はそっくり、職業も同じ精神科医。だけど中身は正反対の双子の男性、ポールとルイ。そんな似て非なるふたりとの禁断の関係にのめり込んでいくクロエの運命は……? 来日したオゾン監督に、作品や撮影の裏話を聞いた。

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フランソワ・オゾン/François Ozon
1967年パリ生まれ。1993年に国立の映画学校を卒業。『焼け石に水』(00)でベルリン国際映画祭のテディ賞を受賞し、世界三大映画祭の常連に。セザール賞の監督賞には『まぼろし』(01)を手始めに『8人の女たち』(02)、『危険なプロット』(12)、『婚約者の友人』(16)でノミネート。『しあわせの雨傘』(10)で同賞の脚色賞にノミネートされるなど、高い注目を集め続けている。photo:AYA KISHIMOTO

ー オゾン監督にとって「双子」とは、どんな存在ですか?

「以前から双子に興味があり、映画のテーマにしたいという気持ちがあったんです。作品を撮るにあたってリサーチのため、実際に女性、男性、さまざまな双子に会いました。私は、双子というのは自然によって作られた傑作、美術品だと思います。だから、この映画の中でマリーヌ・ヴァクトが演じるクロエは美術館で働いていて、双子をある意味、近代美術のインスタレーションのような形で見せている部分もあるんです」

ー ポールとルイの対比として、作品中さまざまなシンボルが登場します。

「そうなんです。努力して探さないと、全部は見つけられないくらいたくさん散りばめました。どれが本物で、どれが偽物か。どれが現実で、どれが妄想か……」

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ー 双子が二極性を見せる一方で、クロエの持つ二面性も興味深いです。

「クロエに関しては、アイデンティティに問題のある女性ということを見せたかったんです。特に彼女の場合は、母子関係に。外見的なことでいえば、『17歳』の時のマリーヌとの違いも出したかったので、最初は髪をブロンドにしようかと考えたんですが、そうすると彼女は優しげな印象になってしまう。今回のヒロインはアグレッシブでバイオレントな感じにしたかったので、彼女に『髪を切ってもいい?』と聞いたら『いいわよ』と言うので、ヘアスタイルを変えました。髪を短く切ったら、アンドロジナスな雰囲気が出たんです」

ー 髪を切るシーンは冒頭に出てきますが、とても強い印象を与えられました。

「あのシーンでは本当にマリーヌの髪を切っているんですけど、じつはカメラテストとして撮ってみたもので。その場にはマリーヌとヘアスタイリストと私だけしかいなくて、即興でカメラを回しながらマリーヌに『カメラを見て』と言ってみたら、彼女がカメラに向けた目線がすごく強く、すでにクロエになっていたんです。なので、シナリオにはなかったのですが、急遽このシーンを使うことにしました」

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ー 作品中、監督が特にこだわったのはどんな部分ですか?

「精神分析のシーンです。ふたりの人物が向き合って座っているだけで、動きも少なく退屈になってしまう危険性があったので、演出的な工夫を凝らしました。鏡や光の反射を取り入れたり、画面を分割したり……。そういった興味深いアプローチができたので、面白いシーンになったと思います。マリーヌも、精神分析のシーンでとても官能的な存在になっていますね」

ー まさにスリリングで惹きつけられるシーンでした。

「前作の『婚約者の友人』が、とてもクラシックで感情を抑制したような映画だったので、今回はがらりと変えて、アグレッシブな映画を撮りたかったんです。というのも『婚約者の友人』を自分で見返してみたら、なんと、私の映画なのにラブシーンがなかったんです! 私は歳を取ってしまったのかな?と……(笑)。それで一念発起して、初期作のような挑発的な映画を撮ることができました」

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<Story>
クロエは原因不明の腹痛に悩む25歳の女性。精神分析のカウンセリングを受けることで痛みから解放された彼女は、分析医のポールと恋に落ち、同居を始める。そんなある日、クロエは街でポールそっくりの男を見かける。彼はポールの双子の兄で精神分析医のルイだった。なぜポールはルイの存在を隠していたのか? 疑惑にかられ、偽名を使ってルイのクリニックに通い始めたクロエは、優しいポールとは反対に傲慢で挑発的なルイに惹きつけられていく……。

『2重螺旋の恋人』
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ジョイス・キャロル・オーツ「Lives of the Twins」
出演:マリーヌ・ヴァクト、ジェレミー・レニエ、ジャクリーン・ビセット、ミリアム・ボワイエ、ドミニク・レイモン
2017年/フランス/1時間47分
©2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU
配給:キノフィルムズ
8/4(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
https://nijurasen-koibito.com
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