人気のハイム3姉妹にインタビュー(前編)

昨年のフジロックフェスティバル'13での初来日に続き、今年1月に単独公演を行なったハイム。アメリカはカリフォルニア出身のバンドながら、デビューアルバム『Days Are Gone』がイギリスチャートで第1位に輝き、そこから世界的にブレイク。FIGARO本誌で昨年取材した時はまだアルバム完成前だったので、再取材してきました。マネージメントがジェイ・Zのロック・ネイションとあって厳しいのか、取材時間は15分間という短さでしたが、前回の取材を覚えていてくれて、和やかに会話〜♪

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左から、知的な雰囲気の次女ダニエル、末っ子キャラのアラナ、陽気なムードメイカーの長女エスティ。


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『FIGARO japon』2013年12月号に初来日時のインタビュー記事を掲載。

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前回の取材時にでんでん太鼓をプレゼントしたら、大喜びの表情。


父親がドラマーで母親がギタリストという恵まれた音楽環境に生まれ、物心ついた時からドラムを叩いていたというハイム3姉妹。しかも長女エスティ(27歳)は10歳からベースを、次女ダニエル(25歳)は6歳から母親に、8歳から本格的に先生からギターを習い、末っ子のアラナ(22歳)はギターもピアノも習ったという。両親が教会や病院、学校などのチャリティーで演奏する際にいつも同行し、しかも父親がモータウン・ミュージックの大ファンだったので60~70年代のR&Bやファンクミュージックを中心に演奏。そして移動中の車内で人気の高いクラシック・ロックやフォーク・ミュージック、ヒップホップなどをラジオから聴くのも大好きで、それが自分たちのオリジナルを2006年から作り始める基盤となっていった。また、90年代にTLCやデスティニーズ・チャイルドなど、女性のパワーが台頭してきたR&Bをよく聴いたことにも強く影響されているという。

デビュー曲「Forever」


■ ドラムが歌と演奏の原点


---- ハイムの音楽の魅力の一つとして、自分たちの聴いてきた音楽をほどよくミックスしている点があると思います。昨夜のライヴを見て再認識したのですが、なかでもドラムのシンセパッドを使った軽やかな音遣いと、エスティのベース音の重さなど、ビート感と音の重さ軽さのバランスがとても良いと思うんですね。

アラナ(以下A):「私もドラマーもパッドを使っていて、私達はいつもオーガニックなドラムとオーガニックでないドラムをミックスしているの」

ダニエル(以下D):「トラックを演奏しないといけないから、トリガーを付けているのよ」


---- そのアイディアは、どこから思い付いたの?

D:「私がジュリアン・カサブランカスと演奏していた時(ダニエルは2009年に彼のソロ・ツアーで、バックバンドThe Sick Sixのメンバーとして同行)、私のメイン・パートはドラムパッドだったの。レコードと同じようなサウンドを演奏するためにね。で、ハイムがどういう風にライヴをしたらいいか考えていた時、よりレコード(音源)に近いサウンドを作り出したいと思ってトリガーを使うことにした。そうすれば、同じサウンドを呼び戻せるから。とはいえ、演奏はちゃんとしているのよ。ボタンを押せば、自動的に最初から最後までトラックが流れるっていう仕組みじゃないの(笑)。実際に体を動かしてプレイしないといけない。あれは機械じゃなくて一種の楽器で......」

エスティ(以下E):「このバンドでズルは許されないから(全員笑)」


---- シンセドラムの音の感覚というのは、どこから?

D:「80年代の音楽、特にプリンスがシンセドラムを使っていたし(筆者注:シーラ・Eのことだと思う)、私達はいつもドラムが好きだし、エレクトロニックなドラムを使うと違ったフレイバーを楽しめるでしょ」

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ライヴの終盤、3人でドラムを叩き合うため、ステージに必ず用意されているドラムセット。彼女達にとっても最もエキサイティングな瞬間だそう。


---- では、リズミックというか、ダニエルの特徴ある歌い方はどのようにして生まれたの?

D:「母が私達の小さい頃から歌っていて、とても興味深い声を持っているの。私達の声もいっていればディープだし、彼女の歌い方だと思う、母はジョニ・ミッチェルを聴いて育ったし」


−− というか、エスティのビートの刻みもそうだけど、ユニークなノリや単語の弾み方については?

D:「それはリズムからだと思う。父がドラマーだから。子供の頃からリズムに囲まれていたし、ロールを何度もやったし」


---- 確かにビートに同じ単語をリズミックに詰めている感じがする。あれは曲を作りながら、こういう歌い方がいいなぁって決めていったの?

D:「大体の場合、ドラムを最初に入れるの。歌詞なしのアイデアで。メロディが最初のことも時々あるけど。通常はドラム、コード、歌詞なしで、という順ね」


−− そこでエスティのベースラインの作り方が鍵になってくるわけですが、心掛けていることは?

E:「左手の秘密よ。読者には語らないわ(全員笑)」

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ダニエルは個人でも、ジュリアン・カサブランカスやシー・ロー・グリーンのツアーに参加してきた。

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ダンスが得意なエスティは、大学で民族音楽を専攻したほどリズム等にこだわるが、取材中はとにかく茶々を入れて笑わせる。


−-- 今回はフジロックの時と違って、キーボードが1人サポートで加わりましたが、ステージでギター、キーボード、ドラムパッドも担当するアラナの役割に加え、キーボード奏者が1人入ることによって残響音というか、音の広がりが出てきますよね。

A:「新しくキーボードを入れようと思ったのは、レコード(音源)が発売された時。レコードのサウンドってすごく難解でぎっしり詰まっているから、ライヴでは再現できないの。腕は2本しかないから、全てを演奏するのは無理でしょ(笑)。だから、代わりにプレイしてくれる人がいたらなって思ったの。あとは、ライヴに変化をつけたかったのも理由のひとつ。パフォーマンスもステップアップしている。もう2年間もショーをやっているけど、同じ内容のものを何度もプレイしたくはないわよね。より中身の詰まったショーがやりたくて。そうすれば、サウンドをもっとレコードに近づけることができるし」

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アラナは曲の中で、ギターやキーボード、ドラムパッドも操る器用ぶり。実際は、幼少時からヒップホップにハマってきたという。

セカンド・シングル「Don't Save Me」


後編では、歌詞の話や曲をまとめる際に意識していることについて聞きました。

*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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