人気のハイム3姉妹にインタビュー(後編)
Music Sketch 2014.02.24
前回に引き続き、1月に単独来日公演を行なったハイムのインタビューを。
■ 3人はもとより、みんなが共感できる歌詞を
−-- 歌詞の話に移すと、ラヴソングを歌っていても、その多くが孤独感を歌っていますよね。特に私が気に入っているのは「Running If You Call My Name」での孤独感の表現の仕方なのですが、サウンドとの絡みを意識して書いているの?
ダニエル(以下D):「だいたい一緒ね。違う場合もあるけど。これは同時だったわ。これはある特定の時期に書いた曲で、アルバムで一番最後に書いた曲。内容は恋人との別れについてよ。自分達のその経験を表した曲なの」
エスティ:「私達3人ともホントに偶然で、同じ時期に同じ経験をしてて、......不思議よね。私達もそうだし、他の人たちだって、みんな違う生活をしているのに、同じ出来事が同じ時期に起こったりする。だから私達が曲を書く時は、複雑だと思っている愛をもっと冷静に受け入れられるようになるのよね。皆がそれを経験しているってわかるから」
サード・シングル「The Wire」
−−「my song 5」は?
D:「5年半前、本当に沢山の曲を書いていたの。いつかリリースできたらなって思いながら、目的もなく毎日曲を書いていたわ。起きたらまずガレージバンド(Macのソフト)の録音ボタンを押して......。でもタイトルは決めてなかった。どんな作品になるかわからないまま、書いていたから。My Song 1とかMy Song 2とか適当につけてて(笑)、5番目だからMy Song 5。その日も、とにかく同じドラムビートに合わせて、何か思いついたらそれを全て音にしていた。だからあの曲は、その日に思いついたランダムなアイディアがひとつになってできた曲なの。一日中、"これはどう?""これいい感じじゃない?"みたいな感じでいろいろ試していた。そういうのでできたデモを沢山保存していたの。その中にこの曲があったのよ」
4枚目のシングル「Falling」
−− 曲をまとめる時に一番意識していることは何でしょう?
D:「レコーディングする時はフィーリングね。エモーション、ノスタルジーとか哀しみ、踊りたくなったり、とか。そして、感情や記憶を呼び起こすような曲。そこはすごく重要な部分。それを感じられる時だけ、この曲はこれで大丈夫って思えるの。しっくりくるっていうかね」

さまざまな感情を共有できる、デビューアルバム『Days Are Gone』。
「Better Off」
−− 最後に、イギリスから火が点いたわけですが、ウケた理由はなんだと思います?
アラナ:「わけがわからなかった(笑)。バンドをずっとやってようやく『Forever EP』をレコーディングして、オースティンでのSXSWなどに出演していた。私たちが育ったLAでは、ラジオで自分たちの曲が流れるまでには何段階もステップがあるの。だからイギリスで自分たちの曲がラジオから流れてくるのを聴いた時、どうやってこんなことが起こったの!?って思っちゃった(笑)。イギリスはアメリカと全然違って、DJが気に入ったら、その曲をすぐラジオで流す。曲が流れるまでの面倒な作業や手続きなんかない。で、ラジオを通じて、そこから、"この子たちどこのバンド?"とか"この曲歌ってるの誰!?"って、話題になったみたい。"ライヴで見てみたい"って楽しみにしてくれてて。だから最初のUKツアーの時は長いこと滞在したわ。その後も何度も戻ってライヴした。イギリスは最初に私たちに興味を持ってくれた場所なの。この1年半、本当にクレイジーだった。最高だわ」

実際のライヴもとても楽しく、終盤に向けてとてもエネルギッシュ。
ライヴではフリートウッド・マックの「Oh Well」のカヴァーもやっていました。(映像はTV番組出演時のもの)
−-- 東京公演はすぐにソールドアウトしたし、注目も集まっているので、夏フェスなどでまた戻ってきて下さいね。
3人:「もちろん戻ってきたいわ。日本は大好きよ!!!」
昨年のiTunes Festivalに出演した時の模様。ラストの全員によるドラミングは圧巻!!!
ライヴ写真はすべて2014年1月23日渋谷クラブ・クアトロ公演のもの。撮影:TEPPEI
*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
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