世界は愉快:エコロジー編 from ロサンゼルス ぷっくりかわいい多肉植物で、LA的サステイナブルガーデン。

世界は愉快 2020.09.21

文/稲石千奈美(在LAカルチャーコレスポンダント)

LAをドライブすると、庭や緑地帯には基本的に2タイプのデザインがあることに気づく。ひとつは典型的なアメリカの青々とした芝生、もうひとつは乾燥気候に強い原生植物や多肉植物などが中心のデザインだ。よりサステイナブルな後者は、エココンシャスなLAの住人たちがデザインするスタイリッシュなガーデンとして人気を集めている。

南カリフォルニアはもともと乾燥したやや暑めの地中海性気候で、近年は冬の降雨量が少なく、温暖化の影響を受けた水不足が深刻だ。住所の番地によって庭の芝生への水撒きをしていい曜日が設定され、シャワーは4分が目安、ホースで水を流しながらの自宅洗車が禁止になったこともあり、他人事ではない。一般住宅では水の使用量の1/3が庭の水撒きといわれ、カリフォルニア州では庭を芝生から乾燥気候対応のエコガーデンにリフォームするプロジェクトが推奨されている。

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カンガルーポー、ラベンダー、アガベなど乾燥に強い植物でデザインした裏庭。photo : Anigo Garden Design

このガーデンリフォームに対し地方自治体から補助金が出るのも、リフォームが増えている理由。水撒きの量を減らすことはもちろん、貴重な雨水を地下水として浸透させる仕組み、照り返しによるアーバンヒート現象やオゾン層の破壊を防ぐために一定数の植物を植えることなども補助金の支給条件だ。これらの条件は年々厳しくなっており、気候変動の深刻さがうかがえる。

うちの庭も昨年、サステイナブルガーデンへのリフォームが完成。カリフォルニアっぽいガーデンになった。乾燥した気候を生き抜くために、植物体内にしっかり水を貯めることができる多肉植物はサバイバル気質なのに、見かけはぷくぷくしてなんとも愛らしい。形状や色、サイズがいろいろあり個性がたっぷり。ほかにも乾燥耐性だが美しい花を咲かせる植物に、ハチドリや蝶が多くやってくる、昔はオレンジ畑だった土地柄らしく柑橘系の木には実がなり始めるなどのうれしい変化もある。巨大なアガベも12に株分けされてそれぞれが一人前の姿でたくましい。芝生は完全撤去したが、玉砂利を敷いたり、南アフリカ原産で乾燥にも熱にも強いキク科のダイモンディア(通称シルバーカーペット)を植えたり。今年は記録的高温の夏なのだが、節水効果のあるドリップ散水システムでシルバーグリーンのブランケットを広げたように元気に育っている。

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地上スプリンクラーが必要だった芝生を撤去して、節水仕様のドリップ散水システムへ。奥は単体だったものを株分けしたアガベの列。

10年前にこの家に引っ越してきた時、お隣の老夫婦が「多肉植物が必要だったらいつでもお分けするわよ」と鉢寄せを贈ってくれた。園芸好きなご夫婦の庭には数十種類の多肉植物が育ち、株分けをしてはプレゼントしたり、交換したり。60年前に雨の多いシアトルから越してきた時は失敗もあったそうだが、いまでは地元のサステイナブルガーデニングのベテランだ。おばあちゃんから教えてもらったLAの気候と自然に適したエコなガーデニング習慣は、多肉植物の子株をみんなとシェアしながら広げようと思う。


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多肉植物育てのベテラン、お隣のレイモンドさん。多肉植物の株は気前よくシェアしている。photo : Uma

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株分けした多肉たちはいつでも分けてプレゼントできるように鉢に準備。photo : Uma

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photos et texte : CHINAMI INAISHI

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