Culture 連載

きょうもシネマ日和

ボブ・マーリーの愛と情熱と魂に触れる旅『ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド』

きょうもシネマ日和

120824mic1.jpg(C)SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

ちょっぴり前の話になるけれど、今年のオリンピック、ウサイン・ボルト選手は本当に早かった。え、話題が遅すぎ...?でも続けちゃいますよ。しかも、200mに至ってはジャマイカ勢が金・銀・銅を独占。テレビでは多くのジャマイカ人が狂喜乱舞し、ニュースキャスターは「ジャマイカ独立50周年のこの年に皆さん喜びを隠せません!」と興奮気味に語っていた。
そんな映像を見ながら私はふと「ジャマイカのこと、考えてみれば私何も知らないな...」と思ったのだった。ジャマイカと言えばレゲエ→ボブ・マーリーといったお粗末なイメージ(とほほ)。しかも、ボブ・マーリーは"愛と平和を歌ったミュージシャン"という認識はあっても、知っているのは有名な曲だけ。ズッチャカ♫ズッチャカ♫ズッチャカ♫という、ちょっぴり暢気な感じ(←失礼!)の音楽は決して私の日常になじんでいるとは言い難かった。

120824mic2.jpg本作のフライヤー写真、ジャマイカを象徴する赤と黄色、緑が印象的。本作はジャマイカ独立50周年記念作品に選ばれた。(C)SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

しかし、しかしである。本作を見て一変。私のボブ・マーリーに対する想いは"好き"を通り越して"尊敬"、、いや、そんな上っ面のフレーズでは表現しきれない、彼を想うだけで熱いものが胸から込み上げてくるような、え、それって恋?いや、そうじゃなくて、何とももう心震えずにはいられないのである。

◆ストーリー

ジャマイカの山間部にある小さな村、ナイン・マイルに生まれたボブ・マーリー。黒人社会のこの村で、彼は"混血"として生まれた。イギリス人の海軍大佐(当時50歳近く)とジャマイカ人の母親(当時18歳)の間に生まれ、黒人からの差別はもちろん、白人からの"よそ者"の目で見られた。そんな中、首都、キングストンのトレンチ・タウン地区に移住し、様々な仕事をしながら貧しい生活をしのぐ。様々な葛藤や辛苦を支える、唯一の存在は"音楽"だった。彼は後にザ・ウェイラーズのメンバーとなるバニー・リビングストンと出逢い、レゲエのあの独特なリズム感と彼にしか書けない魂のこもった歌詞を生み出してゆく。波瀾万丈な日々を乗り越えながら、ボブ・マーリーの存在は徐々に知られてゆき、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、日本に至るまで、多大なる影響を与えて始める。

120824mic3.jpg監督は、『ラストキング・オブ・スコットランド』でフォレスト・ウィテカーをアカデミー主演男優賞に導いたケヴィン・マクドナルド監督。本作の為に何度も遺族と話し合いを重ねたという。(C)SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

これらの様子が当時の映像やボブ・マーリー本人へのインタビュー映像、そして彼の家族、親戚、彼と関わってきたミュージシャンら(総勢60名!)の証言によって綴られていくのだけれど、これが何とも興味深い。

わぉ!ボブ・マーリーって子供の時、ドレッドヘアじゃなかったんだ(当たり前)!ボブの奥さん(彼女も歌手)ってこんな素敵な女性だったんだぁ。といった、ちょっぴり浅めな感激から始まり、彼がドレッドにしたキッカケとなるラスタファリ運動のこと、スカとレゲエの違い〜レゲエが誕生した背景などがジャマイカの歴史とともにわかりやすく紹介され、これらを理解すればするほど、ボブ・マーリーの人となり、苦悩、情熱、愛への渇望、、、彼を形成して来た全ての要素が浮き彫りになっていく。

120824mic4.jpg本作で流れる名曲の数々はサウンドトラックそても発売中。その歌詞には穏やかなメロディとは裏腹に体制への反抗、虐げられた彼の心の叫び、そして愛...彼の魂が込もっている。じっくりその歌詞を読みながら、どこまでも優しいボブの声で心を満たして欲しい。(C)SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

◆ボブ・マーリーの起こした奇跡、未公開映像なども。

ご存じの方も多いと思うが、ボブ・マーリーは当時ジャマイカで流血の争いを繰り広げていた2大政党の争いに巻き込まれて狙撃されるという事件にあいながらも、その対立する政党の党首をステージにあげて握手するという奇跡を起こしている。そんな奇跡の裏側にはジャマイカのレーベル<スタジオ・ワン>から離れ、自らの音楽を貫くために独自でレーベルを立ち上げたり・・と、その奇跡にいたるまでの彼の不屈の努力や挑戦があることも、本作では知る事ができる。

しかも、これらの全てがドキュメンタリーに時々ありがちな"頭"に入ってくる、のではなくて、"心"にしみ込んでくる。そばにボブ・マーリーの魂が寄り添ってくれているのではないかと思えるほどに。

120824mic5.jpgこの公開を記念し、【RUDE GALLERY(ルードギャラリー)】がコラボレーションTシャツを制作。彼の歌う"Positive Vibration"の中で「ラスタマンバイブレーションはポジティブ I&I(みんな)前向きだ」と歌う彼の信念を背中に掲げた、メッセージ性の強い1枚に仕上がっている。(C)SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012


本作では、近親者しか知り得ないエピソードだけではなく、未発表音源や未公開映像、彼の晩年の闘病生活についても詳しく語られるので、ボブ・マーリーファンにとっては、またとない貴重な機会に違いない。

しかし、彼の事を知らない方にも是非ご覧頂きたい。もし、「この夏、全然旅していない!」という方は、映画館に足を運ばれたら良いと思う。本作は、ボブ・マーリーを始めとする素敵な人々との出逢い(スクリーン上でだけど)、ワクワクする気持ち、新しい世界の発見と喜び、一歩前に歩みだしたくなる勇気、、、といった、旅が与えてくれる様々な感情をもたらしてくれるはずだ。
私はこのスクリーンで初めてボブ・マーリー と出会えたと思った。そして、私の中の何かが大きく変わった。どう変わったとか、何が変わったなんて話を大切な仲間たちと分かち合いたい。そんな気持ちでいっぱいだ。

『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』
●監督:ケヴィン・マクドナルド
●出演:ボブ・マーリー
●配給:角川映画
●144分
●2012年、アメリカ、イギリス映画
http://www.bobmarley-movie.jp/
9/1(土)より、角川シネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷他にて3週限定ロードショー
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