Culture 連載

きょうもシネマ日和

"家族になる"を笑って泣いて考えるドキュメンタリー『うまれる ずっと、いっしょ。』

きょうもシネマ日和

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今年も残り1カ月。振り返ってみると、大きな出来事としては、妹の結婚(私のではない)。そして、妊娠(重ねて書くが私のではない......)。大きくなったそのお腹を触らせてもらうと、バランスボールのような弾力感。この中に、小さい頃はよく喧嘩をしていた妹の子供がいると思うと、不思議すぎて頭がトリップしそうになる。

その一方で、「あぁ、こうやって家族が増えていくんだなぁ」と実感する。

そんな状況だっただけに、今回紹介する『うまれる ずっと、いっしょ。』は、何だか他人事とは思えない身近な"生と死"がそこにあって、何度も温かい涙が私の頬をつたった。

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前作『うまれる』はDVD化せず現在も上映会を続け、これまで約350の学校でも上映、10万人近くの子どもたちにも鑑賞されている。その子ども達の9割が集中して見ていた等の検証結果も。


◆ イントロダクション

本作は、2010年に公開されるや口コミや自主上映で瞬く間に広がり、40万人を動員した大ヒットドキュメンタリー『うまれる』の第2弾。

作品公開と同時に娘さんが生まれた豪田トモ監督が、その後4年をかけて撮影した「家族とは、父親とは、幸せとは」という様々な不安、責任、そして希望を追いかけた心の記録だ。

カメラが追ったのは3組の家族。
血のつながりのない息子を育てる30代のお父さん、最愛の妻を失った夫、不治の障がいを持つ子を育てる夫婦......彼らを通して、観る者は一体何を感じるのか。。

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ナレーションは樹木希林さん。観客からの投票と監督の想いが一致してのオファーに、樹木さんは快諾したそう。


◆ 大人の絵本を開くようなドキュメンタリー

まず、本作の魅力はドキュメンタリーである事を忘れてしまう、まるで絵本のような作品であることだ。

こんな風に書くと、スクリーンの中で生と死に向き合っている登場人物の皆さんに失礼でしょ! と言われてしまいそうだが、報道番組で放送されるようなドキュメンタリーとは一線を画す。無理な緊張感や深刻さはなく、子供が絵本を開いてその世界に飛び込んでいく時のようにスクリーンと観る者の心を繋ぎ、だからこそリアルに感じる事ができる、そんな愛の軌跡が捉えられている。

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本作に登場する方々とは、監督自らがきちんと会い、信頼関係を築きながら撮影を続けたとか。


◆ 登場する3組の家族たち

血のつながりのない息子を育てる父親、慶祐さんは30歳。「こんな人と結婚したい!」と多くの女性が思ってしまいそうなイクメンだ(イケメンでもある)。そんな彼を本当のお父さんと思い込んでいる息子のそう矢君は妻、千尋さんの前夫との間に出来た男の子。慶祐さんと千尋さんはこの事実を彼に告げることを決める。

まるでドラマのような現実が目の前で繰り広げられ、真実を告白しようとする慶祐さんの緊張がそのまま私にまで伝わってきて手に汗を握る......。そして、その結末はどんな著名な脚本家も負けちゃいそうなくらい、あったかい笑いと涙に溢れたエンディングだった(是非スクリーンで確かめて)。

最愛の妻を失った賢藏さんも、そして、不治の障害を持って生まれてきた虎ちゃんを育てる松本さん夫婦も、何だかとっても人間らしくて大好きになってしまうような方々だった。泣きたい時は泣くし、現実を受け止められない自分を受け入れたり......。そして、自分たちの心に宿る愛を支えに生きている。

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豪田監督は、かつては自身の家族と良い関係を築くことができなかったそう。同じような経験を持つ方にも本作は何かの気づきを与えてくれるかもしれない。


◆ さいごに


3組の家族に出会って気づいたことがある。共通しているのは、彼らは"愛さずにはいられない"ということ。たとえ血が繋がっていなくても、天国へ逝ってしまっても、いつまで生きられるかわからなかったとしても。どんな状況にいても「ずっと一緒にいたい」と思える。そこには何の見返りも期待しない。そんな相手がいるということ。

昨今のニュースでは、家族にまつわる悲しい事件が後を絶たない。そんな中にあって、彼らは私が「家族ってこうであったらいいなぁ」と漠然と思っていたことを、想像以上の愛で示してくれた。


私が好きな「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」という曲に「どんな苦しみに身が引き裂かれようとも、愛さえあればすべてはバラ色」というフレーズがある。彼らを見ていると、歌の世界だけのロマンティックな歌詞ではなく、現実のことと信じられるような気がする。愛されることも素晴らしいけれど、愛する相手がいるって、何て幸せなことなんだろう。


おそらく本作も前作同様、DVD化されないのではないかと思うので、気になる方は是非、映画館で3組の家族と一緒に泣いたり笑ったりしてほしい。


『うまれる ずっと、いっしょ。』
監督:豪田トモ
シネスイッチ銀座にて公開中。
(C)2014 Indigo Films
http://www.umareru.jp

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