Paris 連載

今週のPARIS

色の魔術師ソニア・ドローネーの
テキスタイルとモードを大発見!

今週のPARIS

パリの近代美術館にて「ソニア・ドローネー 抽象の色彩」展が2月22日まで開催中だ。没後初の大回顧展では、画家としてだけでなく、テキスタイル・デザイナー、服飾デザイナーとしての彼女の活躍ぶりにも大いにスペースを割いていて、見ごたえがある。1979年に94歳で亡くなるまで芸術活動を続けたソニア。フランス人の画家ロベール・ドローネーとの結婚でフランス姓となったが、1885年にウクライナに生まれたロシア人である。

c01_02-thisweekparis-141126.jpg

(左)ストックホルム展のカタログのカバーとなったセルフポートレート。抽象画のように見えるが、顔が描かれている。1916年© Pracusa 2013057 © BNF (右)亡くなる8年前の1971年に撮影されたポートレート。© Pracusa 2013057 © BNF André Villers © Adagp, Paris 2014


c03_04-thisweekparis-141126.jpg

服飾芸術のハイライト作品は、1924年頃のハリウッド女優グロリア・スワンソンのためのコート。遠目には色布のパッチワークのように見えるが、さにあらず。服の全面にウール糸で刺繍を施したものだ。(左)© Pracusa 2013057 (右)Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine


ドイツで絵画を学んだ後、彼女がパリで暮らし始めるのは22歳の時。その翌年に画家としてグループ展に参加しているが、その顔ぶれたるやピカソ、デュフィ、パスキンなど錚々たるものだ。ロベール・ドローネーと結婚し、彼が抽象画の概念の確立に努める一方、彼女は結婚前にすでに刺繍のタペストリーを手がけていたように、応用芸術へと活動の幅を広げていった。第一次大戦を逃れて夫妻で暮らしたマドリードでは室内装飾とモードのメゾン「カーザ・ソニア」を開くだけでなく、舞台衣裳の仕事にも手を染める。1921年にパリに戻った夫妻は、マドレーヌ寺院に近いマルゼルブ大通り19番地のアパルトマンに落ちつく。大勢の前衛芸術家たちがやってくる場所となったそのアパルトマン内に、「アトリエ・シミュルタネ」を1923年に設けて、ソニアはテキスタイル制作を本格的に開始するのだ。展覧会場に展示されている当時のアパルトマンの写真を見ると、布が壁一面を覆う大胆なディスプレイをほどこしたアトリエ兼ショールームだったことがうかがえる。

c05_06-thisweekparis-141126.jpg

c07_08-thisweekparis-141126.jpg

ソニア・ドローネーのテキスタイルの仕事が、布見本、デッサン、写真などさまざまな形で展示されている。会場の奥のガラスケースの中で、布がゆっくりと上下に回転して別の布見本へと。夫ロベールが、20年代のサロンドトーンヌへの出品の際に考案した機械仕掛けだ。Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine


アールデコ展と後に呼ばれることになる現代産業装飾芸術国際博覧会 が1925年に開催された際に、彼女はブティックSimultané(シミュルタネ)を設けて、テキスタイルや服、スカーフなどを展示した。メゾン・ソニアから生まれる服は、フォルムはシンプルだが色彩豊かで個性的。この時代、女性クチュリエのココ・シャネル、ジャンヌ・ランヴァン、マドレーヌ・ヴィオネたちが活躍していたが、芸術を日常生活に、という発想で創られたソニアの服は、彼女たちの服とはタイプを異にした。当時ソニアはモダニティのパイオニア、あるいはヴィジョネアなどと 称された。

c09_10-thisweekparis-14116.jpg

c11_12-thisweekparis-141126.jpg

c13_14-thisweekparis-141126.jpg

ファッション関連品の充実した展示に、1920年代、アヴァンギャルドな女性たちが自由にファッションを楽しむ姿が目に浮かぶ。Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine


c15-thisweekparis-141126.jpg

ロベール・マレ・スティーヴンスによるアールデコ建築の前で撮影されたのは、ソニアがデザインした毛皮のコート、そしてソニアのデッサンによる布のモチーフを描いたシトロエンB12「シミュルタネ」。1925年。© Pracusa 2013057 © BNF Robert mallet-Stevens © Adagp, Paris 2014 Jacques Heim © DR


この「シミュルタネ」という命名は、 夫ロベールと彼女が化学者による色彩理論をもとに色彩の対比効果に注目した絵画を研究しているところから来ている。この展覧会場で色彩がリズミカルに溢れているソニアの絵画も存分に堪能できるのは、もちろん! なお、パリでは2月22日までの展覧会だが、その後ロンドンのテートモダンにて4月15日から8月9日まで開催が予定されている。

c16_17-thisweekparis-141126.jpg

(左)「Prismes électriques」1913-1914 © Pracusa 2013057 © Davis Museum at Wellesley College, Wellesley, MA, Gift of Mr. Theodore Racoosin (右)こちらは1952年のグアッシュ「Composition pour jazz, 2e série, No F 344」Paris 1952 © Pracusa 2013057 © Courtesy Natalie Seroussi et Galerie Zlotowski, Paris

c18-thisweekparis-141126.jpg

1913年の作品「Le Bal Bullier」。夫妻も通ったモンパルナスのダンスホールのル・バル・ビュリエで踊る人々が描かれている。Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine

c19-20-thisweekparis-141126.jpg

(左)1913年、木にペイントしたおもちゃ箱。 (右)ソニアの表現意欲は室内装飾にまで及んだ。Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine

c21_22-thisweekparis-141126.jpg

(左)装丁も早い時期から手がけていた。 (右)ディアギレフのバレエ『クレオパトラ」の衣裳など、バレエ作品の衣裳も多数残している。 Vue de l'exposition Sonia Delaunay, les couleurs de l'abstraction © Pierre Antoine


「Sonia Delaunay Les couleurs de l'abstrastion」展
(2015年2月22日まで開催)

Musée d'Art moderne de la Ville de Paris
11 avenue du Président Wilson
75116 Paris
休館:月曜
入場料:11ユーロ
www.mam.paris.fr

4
Share:
Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories