板谷由夏のヘルシー&ビューティ。 真のナチュラルな生き方、暮らし方。
Beauty 2019.03.20
常に、にこやかでのびやか。健やかな美しさをまさに体現している女優、板谷由夏。その秘密は、自然の中で育まれた素直な感性にあり。彼女へのインタビュー、そして専門家との対談から深掘り!
女優
ドラマや映画、舞台、CM 、雑誌など幅広く活躍。4月より放送の帯ドラマ劇場「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系)に出演。WOWOW「映画工房」でMC 、TOKYO FM「コスモポップスステーション」でラジオパーソナリティも。@yukaitaya
日常にある「自然」を愛おしむ。
空も緑も大好き。天気や季節を感じることを人一倍大切にしているという。
「日々の空気を感じるって"動物"として自然なことだと思う。もともと自然が大好きな両親に育てられたからか、その感覚が根本にあるんです」
東京を離れ、五感で自然に触れられる環境に引っ越して約10年。何気ない瞬間を愛おしんでいる。
雨上がりの冷たく澄んだ空気を吸い込んで、頭がスカッ!
「山や海がある環境の緩い空気感が自分に合っていると感じますね。寒くても暑くても、朝、窓を全開にして風を浴びたり、庭に生えている野菜やハーブをぷちっとちぎって食べたり、ちょっと弱っていると感じた時には、花屋に寄って旬の花を買ったり。自然が日常の傍らにいます」
植物辞典のような父が持ってきた花は、鳥の模様と花びらが似ているというホトトギス。
ロケが早く終わった日。春の花、ミモザを買って機嫌よし。愛猫のメイも癒やしをくれる存在。
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女優として目覚ましい活躍を遂げるいっぽう、ふたりの男の子の母でもある。
「子どもたちを産んだ時、"ぴかぴか"ぶりに感動したの。何も無駄なものがない、何にも汚れてない状態。このぴかぴかを、いかにぴかぴかのまま大きくするかに懸けよう、と思ったんです。だからといって、あれじゃなきゃ、これはだめ、とがんじがらめにするわけじゃないけれど、できる限り外からの余計なものをなくし、安心、安全にこだわりたい、と。すると、彼らが自然治癒力の塊だと気付かされる。熱を出したら、あっ、菌と闘ってるんだな、熱が下がったら、あっ、闘い終わったなって。子どもという自然に日々、教わっているんです。私自身も、オーガニックがいいとか、無農薬がいいとか、いろいろな事情は知りながらも、あまり神経質になりすぎるのも違うかな、と。完璧じゃなくていい、贅沢じゃなくていいから、家族で『おいしいねーっ』と笑うほうが身体にも心にも断然いいと思ってる。そういう意味でも私は"自然児"かもしれません」
夏の太陽にキノコを干して、おいしくなあれ。
昨年の仕事納めの日の朝粥。大切にしているおいしいもの。
感覚をクリアにすること。
健やかさ= 美しさ。フィガロが考える美の定義に「大共感! 健やかで穏やかで笑っていられるのがいちばん」と笑うこの人には、無理がない、無駄もない。
「最近、楽になってきたんです。以前は、忙しかろうが疲れていようが、家のことは私がしなくちゃと必死に抱え込んでた。でもようやく"手放す"ことができるようになりました。『ごめん、無理』と言えるようになったら、きりきりすることがなくなって、自分も家族も、健やかで穏やかに。お願い上手になって、変わりました(笑)」
大切なのは、「心地よい」という感性。「楽しい」という感情。肌も同じこと。
「化粧品も、まず好きな香りで選んでいます。理論や効果も大切。でも、何より使いたいって本能が夢中になるのがいちばんいい気がして。自分も自然の一部だから、気持ちいいには歯向かわないほうがいいかなって(笑)」
肌につけるものは香りで選ぶ。スキンケアもボディケアも、メリッサが香るイトリンを愛用中。
クリアな感覚が真のナチュラルをつくる。ちなみに自身が手がけるブランドの名は「SINME(シンメ)」。それは、いくつになっても「新芽」は生まれるという姿勢から。自分が自然の一部であるという、考え方そのもの......。
photos:YUKA ITAYA
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植物が私たちにくれるもの。
身近な植物や自然の力と人間の感覚の関係を、あらゆる方向から研究し、科学的なエビデンスをもとに解明している清水邦義先生。そんな先生が「人は、自然の一部」と語る女優、板谷由夏の「感覚」を「科学」すると?
農学博士 九州大学農学研究院 准教授
2000年、九州大学大学院農学研究科博士課程修了。森林圏環境資源科学研究にて、ガンや生活習慣病を癒やすキノコの働きや、自然の香り成分が心身に及ぼす影響などを解明。自然素材を原料とした化粧品、アロマ、機能性食品、住環境、トイレタリーなどへの研究も。
清水:大学のキャンパスの中に木の家の実験棟を建てたんです。天然杉の無垢材で内装された空間と木目調のビニルクロスで内装された空間を比較すると、間取りや見た目は同じでも、前者のほうが睡眠の質が高いという結果(※1)が得られたんです。本物と偽物の最大の違いは、「匂い」(※2)でした。
※1 国産のいぐさでできた畳と和紙でできた畳の空間を比較した場合も、いぐさ畳のほうが睡眠の質が高いという結果に。
※2 天然木を自然乾燥させたものは、香り成分が多く残る。畳も、特に国産のいぐさは香り成分が多く、和紙には匂いがまったくない。
板谷:木の家がよいと言われる理由がデータとして証明されたんですね。
清水:香りが安心感を与えるとわかってきた中で、もっと濃度を上げればより効果が高まるはずと研究を進めたところ、結果はまるで逆。「かすか」なほうがリラックスでき、作業効率が上がるとわかったんです。
板谷:おもしろいですね。でも、それはなぜでしょう?
清水:本物の自然の匂いはかすか、ですよね? 同様に、化粧品もただ精油をたくさん使えばいい、というものじゃない。そのバランスを考えて処方されているものって実はそんなに多くないんです。薬も高濃度のほうが効くとは限らない(※3)んですよ。
※3 化粧品や薬の場合、一定の濃度を超えると効果が頭打ちになるばかりか、毒になることも。自然の黄金バランスに「正解」がある。
板谷:つまり、植物も家の中にたくさん置けばいいというわけではない?
清水:植物はCO2量を下げてくれますが、ありすぎると圧迫感があってかえってリラックスできないというデータも。ありすぎてもなさすぎてもだめ。悠久の歴史において人間が自然に調和していた状態が理想的なんです。
板谷:食べるものも気になります。
清水:植物がポリフェノール(※4)をつくるのは、微生物や害虫など外敵から自らを守るため。裏を返せば外敵がいないとつくらないわけです。そう考えると自ずと、野生で育つもののほうが生命力にあふれているといえます。
※4 抗酸化物質のひとつで色の濃い野菜に多く含まれる。栽培時に栄養を与えるいっぽうで、無菌にして植物を育てるとサイズは大きいけど中身が弱い、というものが出来上がる。野生がいいといわれる理由はここにある。
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板谷:ある意味、「自然に逆らわない」ことが大切なんですね。
清水:きちんと生活していれば、身体に悪いものを食べた時、臭いなどでおかしいと気付くでしょう? ところが、最近は見極められなくなってる。それは、身体が自然と乖離している証拠。自然を受け入れる感覚を意図的に開かないといけないと思います。人工のものに囲まれた生活に慣れると、体調の良し悪しさえわからなくなるから。
板谷:確かに、花が咲いたとわからない人は、自分のこともわからない気がしますよね。人間も自然の一部だから。
清水:人類の誕生はおよそ500万年前。片やこんなふうに文明化されたのはたかだか数百年。時間軸で見ると、人は99.9% 以上、自然の中で過ごしているんですね。つまり、遺伝子も肉体も皮膚もすべて自然対応型にできているということ。ところがここ10年で、それまでなかった「テクノストレス」が生じた。赤ちゃんも病院で生まれたその瞬間に、最先端の機器に囲まれ、ストレスを感じてる。そのせいで感覚が鈍っていると思うんです。あくまで仮説ですけど、ね。
板谷:生まれたての赤ちゃんなんて、ぴかぴかの自然なのに......。
清水:そのメカニズムは100年経ってもわからないと言われるほど複雑。科学の限界を感じるからこそ、ひとりひとりが持つ感性や感覚を実験で解明しようとしているんです。
自然とのバランスを取る。
板谷:デジタル化も、便利さも、もののあふれ方も、もう頭打ちで、求めすぎちゃいけないというギリギリをとうに通り過ぎていると思ってるんです。このままでは大変なことになるって。人間って弱いから、すぐ楽なほう、便利なほうに行っちゃうもの。だからこそ、私は息子たちをできるだけアナログ方向に引っ張りたいと思う。便利じゃない方向に、ね。
清水:美しさもそう。「すぐ」「劇的」を求めると感覚が鈍り、いつかボロが出てくる。でも、現代はテクノロジーなしには生きていけないのも事実。仙人のようにすべてを拒絶して生きるというのでなく、両方とうまくつき合うことでバランスが取れるのかな、と。
板谷:この世に生を受ける=自然の一部になる。それを次の世代に伝えていきたいですね。
清水:世界に目を向け、いろいろなことに敏感に気付き、危機感を意識する。板谷さんが美しいのは、それが自然にできているからなんでしょうね。
▼イベント開催決定!
五感で「自然」と向き合う旅へ
強羅花壇で過ごす、プレミアムな1泊2日。
日時:2019年6月30日(日)、7月1日(月)
場所:強羅花壇
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
www.gorakadan.com
詳しくはコチラ→
collaboration:ロエベ ジャパン カスタマーサービス(ロエベ) tel:03-6215-6116, カドー伊勢丹新宿店(ラアル) tel:03-3351-5586
photos:DAISUKE YAMADA, stylisme:MIHOKO SAKAI, coiffure:MATSU KAZ (3rd), maquillage:AKIKO SAKAMOTO (3rd), interview et texte:CHITOSE MATSUMOTO