SNSの「美の基準」に反旗を翻す女性たち。

Beauty 2021.03.18

完璧なシルエットは存在しない、もしくはインスタ上のみに存在する。2月14日、スポーツコーチのルシール・ウッドワードが、全く異なる2つの角度から自身の体を撮影して、それを証明した。この投稿は反響を呼び、どんどんシェアされ、真似する人々も。

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SNS上には、インフルエンサーたちのパーフェクトボディのビデオや写真が溢れている。 photo :  iStock

17.1万回。これは、スポーツコーチのルシール・ウッドワードが最近投稿したインスタの視聴回数だ。フランス人女性のルシールは、YouTube上のアドバイスとトレーニング動画配信によってフィットネスの世界に名を馳せたが、今回、SNS上に見せかけだけのパーフェクトボディが横行している問題について鋭く切り込んだ。

2月14日、自身のアカウントに投稿した動画で、ルシールは姿勢と角度によってシルエットが全く変わることを示した。横姿で登場したルシールは、セーターをめくり上げ、平らなお腹とくびれたウエストを披露。しかし次の瞬間、全身をリラックスさせ、下腹部にぽっこりと丸みが現れた。同じ身体を撮影しているが、ポーズが異なるのだ。

彼女は動画と共に、「妊娠中? ノー! 生理初日? イエス! 姿勢が悪い? イエス!痩せたほうがいい? ノー! パーフェクトボディなんて存在しないわ! それはすべてアングル、タイミングと、心と身体のポーズの問題よ!」と投稿。ルシールは既に何枚かのフォトモンタージュを投稿し、SNS上の美の基準の「フェイク」を非難している。

彼女だけではない。ヴィクトリアズ・シークレットのモデルを務めたポルトガル人のサラ・サンパイオ、イギリス人ジャーナリストのダナエ・マーサー、フィットネス・ブロガーのチェシー・キングなどのインフルエンサーたちもハッシュタグ#samebodydifferentpose(同じ体、違うポーズ)をつけて、インスタやTik Tokに写真や動画を投稿している。

 

 

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「美の基準」の圧力に立ち向かう

ルシール・ウッドワードの場合、すべてはある苦い経験から始まった。毎日、彼女のメールボックスには、自分の外見に耐えられないと悩む女性たちから無数のメッセージが届く。「自分のことが嫌い、自分が普通ではないと悩んでいる人々から、このようなメッセージを受け取るのはとてもつらいこと。この動画は私のフォロワーだけでなく、“完璧”に囚われ、そこから逃れられず絶望する人たちのために作成しました」と彼女は説明する

美しくなければならないという圧力や、フォトショップでのボディライン修正はここ最近始まった問題ではない。しかし、OMNSH(人間科学デジタル世界観測所)の創設者で、心理学者、精神分析医のマイケル・ストーラは、近年、SNSがそれを悪化させていると指摘する。

「この苦しみは、すでに女性誌によって創り出されていましたが、インスタグラムは完璧な身体であらなければならない、という考えを一般人にも浸透させました。インフルエンサーたちと接点を持つことで、人々は彼らを身近に感じます。それにより、理想のレベルが倍に高まるのです」

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ボディ・ポジティビズムの限界

2月12日に投稿されたTikTok動画で、トップモデルのサラ・サンパイオはあらゆる角度からポーズをとった身体を撮影し、次のようにアドバイスした。「自分の動きに応じて、身体がさまざまな見え方をするのは、普通で、健康的で、素敵なこと。他人にも自分にも優しくね、そして他人のボディチャレンジにとやかく言わないこと」

この投稿は彼女のフォロワーから高く評価され、100万回以上の「いいね!」を獲得した。精神分析医で精神社会学者、肥満の専門家でもあるキャサリン・グランジャールは、この反響について次のように説明した。「女性は自分たちを苦しめる美の基準にうんざりしているのでしょう。今、社会的にこの種のコンテンツのニーズが高まっています」

 

このメッセージが今日パワフルな影響を及ぼしているのは、ありのままの自分を愛するというボディ・ポジティビズム・ムーブメントのおかげだ。アメリカでは数年前からそのムーブメントの高まりが見られ、アメリカ人歌手のビヨンセやフランス人歌手のLizzoやYseultなどのセレブリティによって拡散されてきた。「このムーブメントによって、1つの体型だけが望ましいと考えることが愚かだと非難されるようになりました」とグランジャールは述べる。

一方、この一連の流れによって人々の気持ちが楽になるのだとしたら、この社会にはまだまだ改善の余地があるとルシール・ウッドワードは考える。「このムーブメントは、あらゆる体型の女性を網羅することが重要ですが、実際のところ、セルライトがないふっくらとしたお尻、そして滑らかな肌の写真をよく見かけます。これは必ずしも現実を反映しているとは言えません」と彼女は示唆する。したがって、ルシールは、フィルターや誇張された姿勢を使わず、自然光の中で体を撮影することが重要だと強調する。

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「自分に寛容であること」

私たちはいつかありのままの自分の体を受け入れることができるのだろうか? マイケル・ストーラは、このような考え方の変化は心強いものではあるが、効果を十分に発揮するにはまだ時間がかかると考える。「自分に寛容であるということは、社会的な要素が影響しており、この点では、インフルエンサーたちの存在は重要です。と、同時に精神的な影響もある。こちらはさらに根深く、ゆっくりと解消してくしかないのです」と彼は述べる。

ストーラによれば、ボディ・ポジティビズム・ムーブメントはまだそれほど規模は大きくない。「本当の変化をもたらすためには、より創造的に、より戦闘的にムーブメントを進める必要があります。しかし、そのような抵抗活動は、実際にはSNS上では行われない。インスタグラムは広告のように機能するため、願望と罪責感という人間の脆さを利用する。『フォローしているインフルエンサーたちのようになりたい』という願望と、実際にはなれないという罪責感です」

より大きな変化はまだ起こっていないが、ルシールは自らの発信を通じ、彼女のコミュニティの少なくとも一部にリーチできたことを嬉しく思っている。40歳の彼女には感謝のメッセージが寄せられ、多くの女性から『安心した』というコメントを受け取った。ありのままの自分を受け入れる啓発活動に真摯に取り組むインフルエンサーの彼女にとって、嬉しい知らせだ。

texte : Kassandre Fradelin (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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