『あなたのセックスによろしく』著者に聞く、私たちの身体のこと。

Beauty 2021.05.24

毎日同じ料理を食べ続けたら、と想像してほしい。月曜日はポテト、火曜日もポテト、水曜日も……。わびしくなるに決まっている! それなのに、セックスとなると、どうしてワンパターンを押し付けるの?

フランスでいま、大ベストセラーになっている書籍『Jouissance Club(ジュイサンス・クラブ)』の日本語版『あなたのセックスによろしく 快楽へ導く挿入以外の140の技法ガイド』が5月29日に刊行される。

インスタグラムのコミュニティとしてスタートしたジュイサンス・クラブは、ポップなイラストとともにユーモラスにセックスを語り、ティーンから大人たちまで幅広い年齢層が支持。フィガロジャポン7月号「ライフステージで考える、女の身体と100年美容」でもその一部を紹介しているが、すべてのセクシュアリティに平等で、豊かなパートナーシップを築く助けになる新感覚の性のガイドブックだ。著者のジュン・プラに、本書を手がけた背景について話を聞いた。

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ジュン・プラ Jüne Plã
マルセイユ出身。オンラインゲームのキャラクターデザイナーとして活動しながら、2018年より、インスタグラム@jouissance.clubにて、セクシャリティを限定しないシンプルなイラストでのセックスに関する創造的なティップスの発信をスタート。そのフォロワーは2021年5月現在で85万人に増え、11カ国語で書籍化に。

―― 私たち日本人から見たフランスは「アムールの国」というイメージがあるので、フランスでセクシュアリティを語ることがタブーで、性教育が不十分であることを知り、驚いています。ジュイサンス・クラブによって、そんな社会に何か変化をもたらすことができたと感じていますか?

愛とセックスについてのフランスのイメージは、世界中で少し理想化されていると思います。性教育の問題、(性交渉に関する)同意について、そして性器の構造についてなど、私たちは非常に遅れているのです。

ジュイサンス・クラブを立ち上げて以来、何千ものメッセージを受け取っています。自分の性器の構造がようやく理解できた、初めてオーガスムが得られた、自分の抱えている問題を初めて表現することができた、さらにそれをパートナーと話し合うことができたなどです。それは、この本によって、自分たちの望むことと必要とすることの間に、懸け橋を築くことができるからです。要するに、自分の身体をよりよく理解し、自分に合わないセックスを繰り返す代わりに、自分の身体に耳を傾けるよう手助けしているのだと思います。

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ジュン・プラ著『あなたのセックスによろしく 快楽へ導く挿入以外の140の技法ガイド』¥1,760(5/29発売・CCCメディアハウス刊)

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―― どういうきっかけで、セックスの問題に取り組もうと思ったのですか?

本当のことを言うと、私は性交渉をする年齢になって以来、セックスが好きだからです。とはいえ、これまでに得たたくさんの男性パートナーの中で、挿入にこだわらないセックスを教えてくれたのはたったひとりです。この出会いは私にとって大発見でしたが、ほかのパートナーには、それこそ私が望んでいることだ、と理解してもらうことができませんでした。

17年経って、あるパートナーに、彼の手でヴァギナのどの部分にどう触れるか説明するために、技術的なデッサンを描くことを思いつきました。続いて、いわば私の身体の使用説明書を作るために、ほかのデッサンも描こう、と思ったわけです。

―― インスタグラムで「ジュイサンス・クラブ」を始めたのはなぜですか?

最初にデッサンを描いた後、すぐにインスタグラムを思いつきました。このSNSツールはビジュアルがメインだし、閲覧する人も多いから。

―― 反響は予想どおりでしたか?

いいえ、これほどの反響があるとはまったく思っていませんでした。そしてすぐに理解したのは、いつも同じように繰り返される退屈なセックスに耐えているのは私だけではない、ということ。たくさんの人たちが、私には答えられないたくさんの質問をしてきました。私自身も、このテーマについて無知でしたから。ですが、たくさんの証言が寄せられたおかげで、頻度の高い問題と珍しい問題のデータベースを作ることができ、また、それを解決できる可能性のある方法もリストアップすることができました。このデータベースを元に、本を書いたのです。

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まずは、自分の身体の機能を知ることから。イラスト付きでわかりやすく解説されている。

―― その反響は海外からも?

はい、たくさんの外国人フォロワーがいます。このテーマは万国共通なのですから! そして、フランス語のアカウントが成功し、本も11カ国語に翻訳されて成功しているので、とうとう英語のアカウントも作りました。@blissclub__です。まだ出来たてホヤホヤ、たった2カ月です。皆さんも見にきてください!

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―― この本は、ペニスとヴァルヴァ(外陰部)の構造と機能について、これまでにないほど非常に細かくわかりやすく説明しています。あなた自身にとっての発見や驚きは何でしたか?

なんといっても、クリトリスです! 2018年にインスタグラムで、クリトリスの本当の構造を知った時、とても驚きました。私たちはみんな、クリトリスとは小さなボタンのように思いがちですが、本当はもっとずっと大きい。特に気になった点は、ペニスと同じような構造だということです。もうひとつ、前立腺がどこにあり、何の役割をしているかも知りませんでした。

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快楽を得るとは、自分の身体に敬意を払うこと。本書はそう教えてくれる。

―― 本を読んだけれど、どこから一歩を踏み出せばいいかわからない……という人にアドバイスをお願いします。

本を読んだ人が皆、もっともインスパイアされたことから始められるよう、十分な要素とクリエイティブなアイデアを盛り込んだつもりです。結局のところ、皆さん自身の身体の問題なのですから。

最初の一歩を踏み出すためには、まず、このステップが誰にとっても動揺を伴うものだと知っておきましょう。セックスに関することであろうと、ほかのことであろうと、新しいことを始めるのは難しいものです。私からのアドバイスは、自分に合ったリズムで始めることです。相手を喜ばせるためや、他人と同じようにするために自分にプレッシャーをかけないこと。そして、自分の望み、迷い、リミット、必要なことなどをパートナーに言葉で伝えることです。これもまた、難しく感じる人もいると思いますが、一度やってしまえば、いいことばかりです。保証しますよ。

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―― 社会には男女不平等やセクシュアリティについての無理解がまだあり、セックスについて語るのもタブーです。私たちひとりひとりがこの状況を進化させるためにできるアクションは何だと思われますか?

まず、中学や高校での性教育の充実のために政府がもっと予算を投じるべき時だ、と考えています。

それから、個人的なレベルでは、セックスについて、直面する問題や好みの方法について、友だち同士やパートナー同士でもう少し話し合うことができると思います。言葉を分かち合うことで、素晴らしい議論が生まれる。なぜなら、疑いや疑問に直面しているのは自分だけではない、とすぐにわかるからです。

そして、繰り返しになりますが、自分の身体と、身体が送ってくるサインを信頼することです。たとえば挿入で苦痛を感じる時などは、挿入にこだわる理由は一切ありません。プレッシャーが大きくて勃起が難しい。ならば幸いなことに、手や口があるのだから、これを駆使して、ペニスよりもずっと大きな無限の可能性を試せばいい。そして、セックスをしたくない時は、そう言いましょう。

こんなふうに言うと当たり前みたいに聞こえますが、この社会において、私たちは自分の直感を信じること、自分のライフスタイルを直感に従って適応させることを学んでいないのです。

―― あなたの次のチャレンジは何ですか?

私の野望は、カーマスートラ(注:古代インドの性愛経典)の競合になり、世界中の家庭に私の本が置かれることです。ははは!

もっと地に足のついたお答えをすれば、より若い世代に向けたセクシャリティについての本を書くことでしょうか。まずはそれから始めたいと思います。


フィガロジャポン オンラインセミナー開催
『女の身体を知る、大人のための性教育。』

“女の身体”を掘り下げる、大人の性教育セミナーを6月6日(日)にオンラインで開催します。講師は植物療法士の森田敦子先生。フランスで学んだ植物療法とセクソロジー(性科学)に基づき、女性がデリケートゾーンと向き合うことの重要さ、身体の機能を知ってもっと快適に過ごす方法などを、たっぷりと解説していただきます。

開催日:2021年6月6日(日)
配信開始時間:13:00~(約60分間の予定)
申込締切:5月28日(金)23時59分まで

詳しくはこちらから

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