筋トレの最終兵器、ケトルベルって?
Beauty 2021.05.27
蛍光イエローのミニダンベルは忘れ去られ、クロスフィット®とフィットネスのエクササイズではケトルベルが使われるようになってきた。さまざまな目的に用いることができる使い勝手が良いこのスチールボールは、ターゲットを絞ったダイナミックなエクササイズによって、筋肉全体を引き締めることができる。
別名ジリア(gyria)と呼ばれるケトルベルは、筋肉のたるみに対抗する強力な武器になる。 photo : Getty Images
砲弾に持ち手をつけたような見た目をしているが、戦いの道具ではない。ケトルベルはジリア(編集部注:ペルシャ語で重量を意味する)とも呼ばれ、筋肉の衰えに効果的な道具であることがわかっている。
もともとは古代ギリシャ時代のオリンピックの示威行動で使われていたもので、数世紀後にはロシアの特殊部隊の訓練に取り入れられた。現代ではスポーツジム、特にクロスフィット®のエクササイズで人気のアイテムになっている。
力とバランスのエクササイズ
スイングの動きは、主要な筋肉群(太もも、お尻、腰、腹筋、肩)を鍛えるのに役立つ。 photo : iStock
使い方は? 「ケトルベルを片方または両方の手でつかみ、上下または左右方向にダイナミックに動かす」とジャン・モネ大学の生物力学部教授でサン・テティエンヌ地方スポーツ医学研究所創設者であるアラン・ベリは説明する。
ダンベルと違って、ケトルベルは持ち手をつかんでもいいし両側面を持ってもいい。「こうすることで手首と前腕を鍛えられます」と、スポーツコーチでパリにあるスタジオ ウォークアウト&デトックスの共同設立者のフレデリック・ポーペールが解説する。
ケトルベルで鍛えられるのは、これらの部分だけではない。「太ももや二の腕を中心に、体幹から“腹部と腰椎”まで鍛えることができます」とポーペールは説明を続ける。彼によれば、週3回のペースで45分から60分のメニューを、プランクポーズ、縄跳びまたは腕立て伏せのような他のエクササイズと組み合わせて行えば、1カ月後には効果が現れるという。
アラン・ベリによると、ケトルベルの長所はその円運動にある。「ケトルベルを砲丸選手のように、投げることなく振り動かし、バランスを取ることで、筋収縮と筋肉の連動性にそれぞれ働きかけます」。重量挙げマスタークラスの世界チャンピオンに3度輝いたこの専門家によると、肩関節を覆う「回施筋腱板」のような筋肉群全体を鍛える効果は2倍になる。
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姿勢とケトルベルの重量に注意
自宅でケトルベルを持ち上げる前に、気を付けるべき注意点がいくつかある。まずは、さまざまな動きを覚えることから始めよう。
「前かがみになるとき、脊柱を痛めないように、背中の上部と腹部、腰椎にしっかりした筋肉をつけなくてはいけません」とアラン・ベリは忠告する。最初に気をそそられたとしても、チュートリアル動画を見ながらのエクササイズは避けること。「動画の内容がいいかどうかは関係なく、自分の身体をうまく動かせず、どのようなポジションを取ればいいのかわからない人もいます」とスポーツコーチのフレデリック・ポーペールは警告し、こう付け加える。「事前にトレーナーによるケトルベルのレッスンを1度受けるのがベストです」
ケトルベルの重量のチョイスもおざなりにしてはいけない点だ。ポーペールによれば、大半の運動器具のオンラインサイトでは、6キロから32キロの重さのケトルベルが売られている。「重量は段階的に上げていくこと。最初は軽い負荷で、徐々に重量を増やしていきます」とアラン・ベリ。自分の理想的な負荷を知るためのコツは?「同じ動きを10回、まごつかずに繰り返せるようにならなくてはいけません」と、重量挙げのチャンピオンは強調する。
以上の2つのステップを省略してしまうと、筋肉や腱の延長や裂傷をはじめとした筋肉の外傷のリスクがかなり高まってしまう。最初のトレーニングを安全に行うためには、ウォーミングアップを行うことが望ましい。「有酸素運動または器具なしの運動、もしくはその両方を行うと、筋肉が温まって柔軟性が高まり、その後のエクササイズをより効率的に行うことができます」とベリ。エクササイズ後には、筋繊維の回復や腱と靭帯の伸縮性を高めるためのストレッチをお忘れなく。そして充分に頑張った後は、ゆっくりくつろいで身体を休めよう。
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フレデリック・ポーペールに教わる簡単なトレーニング
1. 僧帽筋を鍛えるスクワット
スクワットの姿勢をとり、両腕を伸ばし両手はケトルベルのグリップをつかむ。肘を曲げながらケトルベルを顎の高さまで上げたら、元の位置に下げる。
2. 腹斜筋と二の腕を引き締めるエクササイズ
お尻を軸にバランスよく座り、両脚を上げる。両手でケトルベルを持ち、頭と肩をひねりながらケトルベルを胸の前を通して左右両側に振る。
3. 主要な筋肉群(太もも、お尻、腰、腹筋、肩)を鍛えるスイング
スクワットの姿勢で両腕を斜め下方向に引き伸ばし、ケトルベルを両手で持って目の高さまで振り上げる。両腕を伸ばしたまま、骨盤を前に倒す。そして、ケトルベルを振り子のように元の位置まで下げる。
*クロスフィット®はクロスフィットLLC社が所有する商標登録されたブランド
texte : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuriko Yoshizawa