疲労回復、ストレス緩和...マグネシウムの効果とは?
Beauty 2021.06.09
マグネシウムといえば、フランスでは定番中の定番のサプリメント。日本でもドラッグストアなどで見かけるマグネシウムには、自律神経を整える効果がある。つまり心を落ち着かせ、ストレスや疲労を緩和するのに有効だ。ただし最大限の効果を引き出すためには、守るべきルールもある。マグネシウムケアの方法を解説しよう。
疲労、ストレス、イライラ。こんな症状が現れたら、マグネシウムケアをやってみよう。 photo : Getty Images
マグネシウムケアをするのはなぜ?
理由はいたって単純。マグネシウムは身体機能の維持に欠かせないミネラルのひとつだから。「マグネシウムは体内で起こる300もの代謝反応に関与しています。筋肉や神経の働きや、老廃物の排出、消化にも関わります」と、自然療法士のニコル・トリピエは言う。医師で栄養療法の専門家ジャン=ポール・キュルテ(1)はマグネシウムを徹底特集したニュースレターの中で「マグネシウムはエネルギー生産の触媒となる」と述べている。
生きるために不可欠なミネラルであるマグネシウムだが、体内で合成できないため、1日に必要な量(約375mg)を食事や水から摂取する必要がある。
食事の偏りがマグネシウム不足につながることもある。「現在は土壌が痩せてしまっているため、きちんとバランスの取れた食生活をしていても、食事だけでは必要な量のマグネシウムを摂取するには不充分なのです」とトリピエは言う。キュルテも同意見だ。私たちが普段の食事で摂取しているマグネシウムは100~220mg程度と医師は言う。
マグネシウム不足のもうひとつの原因として挙げられるのは、日常的なストレス。驚くには当たらないところだ。「ストレスは神経回路を酷使します。神経回路を正常に働かせるためにはマグネシウムが欠かせないのです」と薬学者のトマ・カサブは指摘する。酸性食品(とくに砂糖)の摂りすぎも、身体からマグネシウムを流失させる原因なる。残念なことに、コーヒーやアルコールの摂りすぎもまた、マグネシウム欠乏を招くことになる。
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マグネシウム不足のサイン
マグネシウムとペアになって働くカリウムやナトリウム、カルシウムといったミネラルの量を調べない限り、マグネシウム不足かどうかを知るために血液検査をしてもあまり意味はない。
薬学者のカサブはこう説明する。「体内のマグネシウムの半分は骨や歯などの硬組織に沈着しており、あとの半分が肝臓や筋肉といった“柔らかい”組織に存在しています。血液中に含まれるマグネシウムはわずか1%にすぎません」。現代の西洋医学では、これを「見えない欠乏症」と呼ぶ、と自然療法士のトリピエは説明する。
だから、マグネシウム不足をチェックするには、自分の身体の声を聞くのが一番。よく眠れていない? 外に一歩足を踏み出す前から疲れを感じている? バランスのいい食事を摂り、最低限の運動はしているのに、元気が出ない? そう感じたら、よくない兆候だ。「けいれん、めまい、しびれ、妊娠中でもないのに朝起きたときに吐き気がする、気分のイライラなども、マグネシウム不足の前兆」とトリピエ。月経前の体調不良もマグネシウム不足が疑われる。
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マグネシウムケアはいつ、どのように?
まずは日々の食生活を見直すところから始めたい。 photo : iStock
季節の変わり目に始めることが多い。代謝が低下する冬に備えて寒くなる前に行う。あるいは冬の終わりにすれば、身体に蓄積された老廃物を除去するのに有効だ。
トリピエはケアを行うなら1月がベストとアドバイスする。薬学者のカサブは前兆症状が現れたときに始めるといいと言う。「ケアは1年に3回まで。一度のケアは最低1ヶ月間。3ヶ月続けるのが理想的です」とカサブは説明する。
過剰摂取を心配する必要はない(余剰分は尿に排出される)が、1年365日マグネシウムのサプリメントを摂取するのは無意味。「長期間摂取し続けると、身体が慣れてしまい、反応しなくなってしまいます」とトリピエは言う。
また1回の摂取量が100mgを超えないように注意すること。一度にそれ以上摂取すると、身体が吸収しきれないため、胃腸のトラブル(詳述は避けておこう)を起こす可能性が。こうした不都合を避けるためには、1日何回かに分けて摂取するといい。
したがって薬局に駆け込む前に、まずケアをする目的を明確にし、食生活を見直すことから始めよう。バランスの悪い食事がマグネシウム不足の一因となっていることもある。改善するには、マグネシウムを豊富に含む食材を積極的に取り入れること。たとえば、野菜、とくに葉野菜(ホウレンソウ、フダンソウ、ブロッコリーなど)、バナナ、アボカド、ブラックチョコレート、海藻、甲殻類、小麦胚芽、かぼちゃの種、ゴマが挙げられる。
サプリメントを活用するなら、有機食材専門店か薬局で購入できる。カサブの一番のおすすめは、天然のマグネシウム、とくに海水から抽出されたマグネシウムだ。錠剤、カプセル、アンプル剤の形で市販されている。トリピエのおすすめは塩化マグネシウム。1リットルの水に1袋分を溶かして飲む1カ月ケアだ。
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マグネシウムケアをしてはいけない人は?
ほとんどいない。ただし腎臓に問題のある人は注意したほうがいい。「すべての人間にとって不可欠なミネラルですから、アレルギーや不耐性などの問題が生じることはありえません」とカサブは説明する。ただし念のため7歳以下の子どもにサプリメントを与えるのは控えたほうがいい。
ラジオ局ユーロップ1の健康情報番組「Question de santé」の共同司会者で救急専門医のジェラルド・キエルゼクは、2016年11月、マグネシウムケアについて「とくに効果はないが、悪影響もない」と語った。
また、フランス国立保健医学研究所が2015年6月に発行した「サプリメント:真偽を見分ける」と題された資料の中には、次のようなただし書きがある。「現時点で900件近くの科学的研究が発表されているが、マグネシウムを主成分とするサプリメントに健康に有益な効果があるかどうかについて、明確な判定を下すことは難しい」
(1)Jean-Paul Curtay著書『Okinawa, un programme global pour mieux-être』Anne Carrière出版刊。著者はニューヨーク科学アカデミー会員でもある。
text : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)