パンデミックがもたらした、新しい美しさとは?

Beauty 2021.08.20

2020年3月、突如として世界の動きをストップさせたCOVID-19のパンデミック。フランスではロックダウンにより外出が制限され、女性たちがおしゃれをしたり、派手なメイクをしたりする機会は減ったといいます。そんな中起こった“美”にまつわる変化とは?パリ在住のジャーナリスト、レベッカ・ジスマヌのリポート。

【関連記事】さよならブラジャー、その理由。

iStock-1225345059.jpeg

ロックダウン中、マスク装着などの習慣などにより、フランス女性に起こった変化とは? photo : iStock

文/レベッカ・ジスマヌ(パリ在住ジャーナリスト)

ロックダウンで在宅ワークやテレビ会議の機会が増え、服装がカジュアルになったのと同時に、毎日化粧するのをあきらめた、という女性は多い。Ifopの世論調査によると、3年前に「毎日化粧をする」と答えた女性は42%だったが、2020年6月の調査では21%にまで減少。30歳以下の女性の半数が、パンデミック前よりも化粧をしなくなったという。

マスクの着用という新しい習慣も、フランス女性がメイクをしなくなった一因だ。NPDニールセンによると、このパンデミックにより、口紅の売り上げは33%に急落。マスクが汚れるから、とファンデーションをつけるのをやめた女性も多い。

自宅で過ごす時間が増え、他人の目から解放されたフランスの女性たちは、取りつくろうことをやめ、飾り気のない素の自分を受け入れるようになった。もちろん、毎日化粧をしていた女性の中には、自分の素顔に慣れることにチャレンジだと言う人もいた。それでもロックダウンは、自然な自分を愛する方法を学ぶ良い機会となった。

---fadeinpager---

なぜメイクをするのか。

しかし、職場では、化粧をすることへの社会的な圧力は依然として強い。フランス人女性の3人に2人は、オフィスに行くときには化粧をしなければならないと考えている。私の友人であるニナ(30歳)もそう考えるひとり。彼女はロックダウンが終わった時に、「メイクとは、職場と密接に関係した社会的な産物だ」と気が付いたという。

さらに在宅勤務であっても、フランス女性の56%がビデオ会議に参加する前には化粧をすると答えている。一方、30歳以下の女性の60%が「ノーメイクでも仕事に行ける」と認めていることから、その圧力の感じ方は世代によって違うようだ。

フランスの各化粧品ブランドもこの新しい現実に適応し始めた。何しろフランスは世界の美容市場の23%を占めている美容大国。化粧品は、航空機に次いで輸出量の多い分野なのだ。2020年11月、ロレアルは、デジタルメイクアップライン「Signature Faces」を発表。スマホやパソコンのフェイスカムに映った顔に適用できる無料のメイクアップフィルターは、人の目を気にする女性のテレビ会議への参加を容易にし、さらに同社の新製品を紹介するための巧みな手法であるともされている。

また、インスタグラムで「#maskmakeup」というハッシュタグをつければ、マスク着用中のメイクアップのヒントも見つけられるようになった。

 

 

---fadeinpager---

パンデミックで私たちは美しくなった?

2021年1月に行われたIFOPの別の世論調査では、回答した女性の60%が、パンデミック以前よりも美しくなったと感じていると答えた。一方、平時より美しくなくなったと感じているのは、自分を認めるために外からの承認がより大切だと考えている若い女性に顕著だといい、15〜25歳の48%が平時よりも自分を美しいと感じられないと答えている。

しかし、彼女たちが自信を取り戻すベストな方法は、これまでのメイクに戻ることではないのかもしれない。というのも、多くの女性が肌を厚く覆うことよりも、スキンケアやセルフケアに重点を置くようになっているからだ。

私もその一人で、化粧水や乳液を塗らずに外に出ることはないものの、毎日ノーメイクで過ごしている。と言っても、ファンデーションなしの自分の顔に自信がない私にとって、それは決して簡単なことではなかった。それでも続けていたら、ある時女友達から「毎日ノーメイクでいるのって勇気ある! 私もやってみたい」と言われ、正直とっても嬉しかった。

ヌードメイクやスローメイク、クリーンメイクなどのトレンドは以前から存在していた。まるですっぴんであるかのように、肌にみずみずしい輝きを与える控えめなこれらのメイクは、フランス人が理想とする、インフルエンサーのジャンヌ・ダマスなどが体現するような女性像には欠かせないものだ。

いま、バーやレストランのテラスが再開し、生活が少しずつ元に戻りつつある中、女性たちも出かける準備をしている。ただし、これからのお出かけは、厚塗りのメイクアップなしで……かもしれない。

Portrait.png


レベッカ・ジスマヌ

パリを拠点に活動するジャーナリスト。日本にも滞在経験があり、日本映画の大ファン。

 

 

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories