「整形はメイクの延長線」ミレニアル世代が考える"次世代の美意識"とは?

Beauty 2021.11.02

18歳から34歳にとって、美容医療や美容整形は当たり前のことになりつつある。「ネット中毒」とも言われるこの世代にとって自分の身体とは、他の表現媒体と同様、表現手段のひとつに過ぎないと考えているようだ。

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ネット依存度の高いこの世代にとって身体は表現手段のひとつに過ぎなくなった。photo:Getty Images

「先生、明日のパーティーの前に唇の形を整えたいの」。最近、こんな依頼が美容整形医院でよく聞かれるようになった。注射針を怖がらないミレニアル世代にとって、美容医療は綺麗になるために行う普通の手段のひとつに過ぎない。だから彼女たちは(費用が高いことを除けば)美容整形を気楽に受ける。フランスの調査会社Opinion Wayがヘルスケア企業アラガン社に依頼されて行った調査によると、18歳から24歳の女性の26%が顔の美容整形を行うつもりがあると答えた。「この層は全客層の35%を占めます。この3年間で若い客層はシニア世代と比べて2倍伸び、ポストコロナによってさらに速まりました」。こう話すのはフランスの注射医療製品の最大手であるガルデルマ社の美容医療部門のトップであるマクサンス・デルマだ。

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WEB会議が、「顔の欠点」を気付かせた?

Web会議の普及と共に、38%のフランス人女性が自分の容姿の欠点に気づき、それを修正したいと考えるようになった。若い世代にとっては目の下のクマすら耐えられないそうだ。その結果、ほんの数カ月で大都市圏では美容外科医院の数が瞬く間に増えた(Lazeo, Clinique du Rond-Point des Champs-Élysées, Marjolaineなど)。

アメリカや韓国ですでに実践されているシステムを模倣し、マーケティング手法(常時SNSで広告、予約はオンライン、初診は無料、複数の施術を行った場合の割引、支払い方法の簡略化……)がすでに出来あがっているチェーン店が増え、美容整形はいままでにないほど身近なものになった。「10年後にはチェーン店が市場の70%を占めるでしょう」とマクサンス・デルマは予想している。従来の整形外科のような威圧感がないチェーン店は、インフルエンサーの強い支持もあって、若い世代を引き付けている。

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欠点に対する強迫観念?

若い世代にとって、美容整形はメイクの延長戦でしかない。ハイライトやシェーディングで顔に立体感を出すコントゥアリングメイクの最新版のようなもの。その上、もっと人目を引き、長持ちするのだ。常に自身のコミュニティをあっと言わせようと気を配っているミレニアル世代にとってはマストな選択肢となった。

目の下のクマ(くぼみを埋めること以外は、残念ながらほとんどの場合施しようがない)の次の需要は、肌の質感に対する施術だ。これはインスタの投稿の際、(フィルターで修正されるのであっても)必須である。「誰しもちょっと直したい箇所は必ずいくつかはあるので、みんな躍起になっていますね」とセリーヌは言う。25歳ですでにハイドラフェイシャル(マイクロダーマアブレーションによる新世代毛穴クレンジング)、マイクロニードリング(肌に微細な穴をあけ肌の生まれ変わりを促進する)、レチノールピーリング(肌の輝き、アンチエイジング効果、欠点を修正)をすでに経験済みだ。

次は唇への注射だ。この世代にとって、存在しないに等しい薄い唇ほどみっともないものはない。中にはロシアンリップと呼ばれる4Lサイズの大きな唇を求める若い女性もいる。キューピッドの弓のように上唇がふたつの山を描く唇はエロチックだとされているので、当然SNS上での人気が高い。しかし精神科医であり『Grandir, vivre, devenir』 (Éditions Odile Jacob)の共著者であるジャン=クリストフ・セズネックはこのように言う。「現代社会はセクシュアリティーに関する何かがうまく機能していません。それが身体にまであふれだし、言い表せないみだらな表現となって現れているようです」

「顔をより楕円形に見せるため顎のラインへの注射も増えている。同じくフォックス・アイやキャット・アイと呼ばれるこめかみに向けて釣り上がった目を求める女性も増えています。これにはピンと張った糸を注入する手術が必要となるのですが、私はこれに対し即ストップをかけます。なぜならこれは眉が緩んだ際に行う対処法であり、35〜40歳前の女性には施さないからです」と美容整形医のジュリアン・サママは説明する。

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フランスの整形は“自然なタッチ”が売り?

フランスの美容整形医療は自然なタッチを生み出すので高い評価を得ている。しかし最近のミレニアル世代の極端な要求は、「フレンチタッチ」に打撃を与えている。たとえば顔の整形では「バッカルファット除去」という頬をくぼませる要求が多い。流行りの頬側脂肪を除去する手術だ。結果、シャープで細く、より個性的な顔になるのだが……。

「いまの時代、自然は従うものではなくコントロールする対象になりました。若い人たちが頭に描いたイメージに沿って美容外科手術が形を与えます。数年前に流行ったベビーフェイスと異なり、現在は“野生化”に対する強い憧れがあるように感じます。人間と動物をハイブリッドすることにより、個性的でセクシーな外見を得るのです」と哲学者・社会学者であり 『Manuel d’émersiologie. Apprends le langage du corps』(Éditions Mimésis)の著者であるベルナール・アンドリユ氏は説明する。

身体の形も再形成の対象だ。胸の位置は高く、お腹はまっ平で、腹筋は鉄のように硬い。そしてカーダシアン家の女性のようなお尻。調和を保つためヒップディップも埋めなければならないから、ここにも彫刻を施す。腰と太ももの間にあるへこみ(ヒップディップ)は自然なものだけど、受け入れ難いほど醜いと考える女性は脂肪吸引、その後、脂質を再度注射する整形術を受ける。フレンチタッチ? それともフェイクタッチ?

text:Linh Pham (madame.lefigaro.fr)

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