南仏のバラに育まれた、新ミス ディオールの愛しい香り。
Beauty 2022.05.19
南仏にある花と香りの楽園グラースで、春の訪れを告げるとされるローズ ドゥ メ(5月のバラ)。このバラを慈しむ花農家とディオールのパートナーシップにより、ミス ディオールのヴィンテージフレグランスの取り組みが始まる。
ミス ディオール ローズ エッセンス
ローズ ドゥ メの花の芳しさに加え、茎のグリーンノート、ムスクが香りのハーモニーを描く。ローズウォーターの優しさと、パチョリやベチバーの大地の香りと響き合い、唯一無二の香り立ちを実現。ミス ディオール ローズ エッセンス(オードゥトワレ) 100ml ¥23,650(6/3限定発売予定)/パルファン・クリスチャン・ディオール
ミス ディオール ローズ エッセンス、その魅力を解剖!
POINT1
Grasse Roses
繊細で香り高い、グラースならではのバラ。
花が生き生きと咲き誇るグラースにおいて、代々女性たちに愛され、母から娘へと受け継がれてきたローズウォーター。センティフォリアローズ(100枚の花びらの意)とも呼ばれる多くの花びらを持つバラから蒸留したローズウォーターが、上質な芳しさを運ぶ。極めて優しく、フェミニンで、安らぎを与えてくれる。
POINT2
Bottle Design
ミス ディオールのデザインコードを継承したボトル。
ガラスボトルの断面にはミス ディオールを象徴する千鳥格子。ネックに結ばれている手摘みされた花を入れる麻袋をイメージしたリボンは、ナチュラルでラフなデザイン。CDのロゴマークもあいまって、クチュールブランドならではのものづくりの美が宿る。
POINT3
Sustainability
環境に配慮したものづくりの姿勢。
ボトルはリサイクルガラスを25%使用。またフレグランスを抽出した後に残った花びらや廃棄予定の茎などの繊維を生かし、100%リサイクル素材で作られたペーパーボックスの中にボトルをセットしている。自然への敬意を示したものづくりの姿勢が示されている。
POINT4
Vintage Fragrance
その年だけの芳しさを持つ、ヴィンテージの発想。
フランス文化におけるワインのように、前年に収穫されたバラから生産されるスペシャリティ。今年が初年度となり、数量限定で生産されていく。まさに、毎年収穫によって香りと味わいが異なる、生きたフレグランス。原産地と収穫年を記載し、トレーサビリティもクリアにしたラベルの発想も素敵。
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ローズ ドゥ メの作り手、
キャロル・ビアンカラーナに聞く。
Carole Biancalana
キャロル・ビアンカラーナは南フランス・グラースの花農家ドメーヌ ドゥ マノン経営者。2006年よりディオールとの専属契約を結び、いままでも上質なフレグランスの生産をサポート。
―― グラースの自然、大地、歴史のどういうところが、「花を育む場所」として優れているとお考えですか? 長くこの地にいらっしゃって、あらためて再発見するグラースという土地の魅力とは?
海と山の間に位置するグラースは、花の生産に適した類まれなテロワール(土壌)の恩恵を受けています。たとえばブドウの木を例にとっても恵まれた気候、標高、地理的条件が、花に幾つもの豊かな側面を与えます。丘陵に沿ったブドウの段々畑の間の小道を抜けると驚くほど美しい花畑が広がります。長年、ここで暮らしていても、いまだに美しい景色や、知らなかった小路を発見するんです。
昼と夜の気温の差があり、海も山もある南仏。風と光の恵みのあるグラースの畑でローズ ドゥ メは育まれる。
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―― 今回の新作ローズ エッセンスでは、バラの香り成分を生かすだけでなく、ローズウォーターの効能そのものを生かす、という考えで作られています。その商品のプランを知らされた時、どのように感じられましたか?
フランソワ・ドゥマシーによる、ローズウォーターをあえて「香水」に取り入れるというアイデアが気に入りました。大きな挑戦でしたが、そのアイデアは素晴らしく革新的でした。
―― ローズウォーターは、長い間、グラースの女性たちを癒やしてきました。キャロルさんもそうですよね? あなたご自身の経験として、個人的に、ローズウォーターはどんな効果をあなたに与え、その香りはどんなふうにあなたの心を癒やしてくれましたか?
ローズウォーターは、時を超えてグラースの女性たちの間で大切に受け継がれてきた、シンプルかつ美しい習慣です。ローズウォーターは私の祖母と母の香りであり、彼女たちがくれたキスを思い出します。 バラは美しい世界そのものを表現するものであり、その美しさが人々に心地よさを運んでくれるのです。
あふれんばかりの花が入った麻袋。1kgからローズウォーターは1ℓしかとれない。
花はすべて大切に手摘みされる。
朝摘みの花をフレッシュなうちに蒸留。
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―― グラース地域を活性化させたいというお気持ちがあると思います。日本でも地方創生は大きなテーマでもあります。グラースを活性化させるためにどんな苦労や努力をしてこられましたか?
私は家族からこの農園を引き継ぐと同時に、この仕事の重大さに気付きました。契約も将来性もなかったけれど、グラースの花生産業を再建するすべてがありました。その時、私はまだ若くて経験もなく、男性が多い農業の世界では、自分に力があることを証明するために挑戦し続けなければいけませんでした。「Fleurs d'Exception du Pays de Grasse」という女性の花農家が中心となった協会を設立し、担当者やバイヤーを説得し、生産物に新しい命を吹き込み、花農家の未来に希望をもたらすことができると確信させました。協会では、類まれな花と認定されるにはAB(オーガニック認定マーク取得)はもちろん、社会的責任への従事、ノウハウの継承、農家同士の団結も重視しています。たとえば気候変動に直面したら、課題を解決すべく、すべての経験を共有しています。
―― ディオールというフランストップの歴史や伝統を持つメゾンが、美しいものづくりをサポートする……このパートナーシップによってグラースはどう生まれ変わりましたか?
ディオールは、ドメーヌ ドゥ マノンと専属契約することによって、グラースという地域と産業全体に強いメッセージをくれました。特別な花々を生産する花農家とディオールがパートナーシップを組む初の試みは、他者にとっても模範となりました。それが出発点であり、若い生産者が自信を取り戻し、グラース地域の活性化へと繋がったのです。現在、ディオールはグラースの幾つもの花農家とパートナーシップを組んでいます。
春になるとグラースの町の噴水からは、ほんのり花の香りが漂うといわれている。
ムッシュ ディオールが暮らしていたラ・コル・ノワール城もグラースの近郊にある。
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―― 商品のパッケージまで、摘んだバラの捨てる部分から繊維を取り出して作るなど、サステナビリティに配慮した商品設計に対してどう感じられますか? 現代において、とても尊重するべき考え方と思いますが。
私たちの生産物はオーガニック認定を受けており、生物多様性の保全、廃棄物の排出量の削減、好循環の維持に努めています。そのため、環境への配慮を継続する必要があると確信しています。パッケージにいたるまで、環境保全に永続的な関心を寄せているディオールの取り組みをとても誇りに思います。
―― キャロルさんは「バラの大使」でもあります。あなたにとって、「バラ」とは何か、一言で表現してください。
バラを表現する言葉が幾つも思い浮かびますが、ひとつだけあげれば「愛」です。
―― ミス ディオールというディオールのメゾンの大切なレガシーの体現者であるクリスチャン・ディオールの妹、カトリーヌや、女優ナタリー・ポートマンをどう思われますか?
カトリーヌ・ディオールは勇気のある女性で、苦しみ、傷つきつつも困難を克服してきました。庭に育つバラの存在にも勇気づけられたのでしょう。花農園を営む女性たちはカトリーヌを誇りに思っており、私たちが彼女の遺産としてふさわしいと証明されることを願っています。私の花農園を訪れたナタリー・ポートマンもまた、女性の代表として挑戦し続ける、献身的な強い女性。ふたりとも、私たち同様、情熱と愛をもって挑み続ける女性たちです。
*「フィガロジャポン」2022年7月号より抜粋
photography: ©CHRISTIAN DIOR