息切れ、めまい、喉の痛み...原因はストレスかも?
Beauty 2022.07.11
突然声が出なくなったり、筋肉が緊張したり、ヘルペスができたり……身体は時として、私たちの感情の状態やトラウマにさえも注意を向けようとする。
突然の声の枯れ、筋肉の緊張、不眠症の始まり……時に身体は、私たちの感情の状態に注意を向けようとする。photo: Getty Images
誰もが自分の感じたこと、特にネガティブなことを言語化する能力を持っているわけではない。そのため、身体がそれを代弁することがある。感情のコントロールは身体にも影響を及ぼす、つまり、不安や悲しみ、心配がさまざまな身体的症状として現れるのだ。子どもの頃、学校に行く前にお腹が痛くなったことは誰もが経験したことがあるだろう。
フランスの神経科医のオレリアン・ベノワリッドは、特定の器質的原因がない場合、精神状態が、身体、ホルモン、免疫系に影響を与え、「感染症や自己免疫疾患の発生を助長する可能性がある」と述べている。『気のせいではない! 心身症のタブーに終止符を打つ』の著者であるベノワリッド医師によると、身体的反応の程度は、個人の遺伝的体質と、何よりも過去の経験やトラウマに依存すると言う。そして、自分自身と健康を守るためには、身体が発する赤信号を認識する必要がある。
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1. 疲労がたまる
夜の状態は、私たちの幸福度をよく表している。クレムリン=ビセートル疼痛治療センターの心理学者であるデボラ・ハダド・バドリは、「考え込んだり落ち込んだりすると、必然的に睡眠が浅くなる」と言う。その結果、睡眠が困難になり、夜間や早朝に目が覚めてしまうのである。最終的に「安らかな眠りが得られなくなり、注意力や気分の低下、免疫力の低下、ひいては精神的な衰弱につながるのです。そして、この疲労が慢性化すると、身体にとってより有害なものとなる」という。
しかし、一般的にほとんどの人が、この不幸な症状を軽く見ている。心理学博士で心療内科医、Souffrance et Travailネットワークの代表のマリー・ペゼは、「燃え尽き症候群の場合、同僚や上司、部下からの非難や復帰後に余分な仕事が発生するのを恐れて、疲労感を無視することが多い」と報告している。「睡眠負債を抱えた人は、なんとかやり過ごすため、エナジードリンク、アルコール、抗不安薬、抗うつ薬など、化学的な手段に頼ることが多くなる」と彼女は付け加える。
心療内科医のマリー・ペゼは、睡眠習慣(昼寝、早寝)をしっかりとっているにもかかわらず、疲れが取れない場合に気をつけるようアドバイスしている。
2. 休暇中に体調を崩す
極度に疲れている状況では、意外かもしれないが、休暇の到来は必ずしも有益とは言えない。「まるで疾走する列車を止めるように、過活動を続けようと必死になりすぎた直後は、後遺症を感じるのです」とマリー・ペゼは指摘する。その結果、最後の砦である免疫力が低下し、耳鼻咽喉科の感染症や神経痛などを繰り返してしまうのだ。
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3. 息切れ、めまい
ストレスが心に重くのしかかると、正しい呼吸ができなくなることがある。不安要素、対処すべき重要な案件、家族の予期せぬ出来事に直面すると、不安な人の心拍と呼吸は大きく変化し、激しい胸の痛みと締め付けを引き起こす危険性がある。「心臓の鼓動が速すぎると、脳が酸素不足になり、めまいを起こしたり、意識を失ったりする」と神経科医のオレリアン・ベノワリッドは言う。
病歴や深刻なサインがない場合、心理学者のデボラ・ハダド・バドリは、「多くの感情を司る」みぞおちに注意を向けるように呼びかけている。感情の「ゆらぎ」を調整するためには、心臓のリズムを整えるコヒーレンス法が有効だとバドリは指摘し、「落ち着きとリラックスに戻るには呼吸が必要です」と断言している。
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4. 喉の違和感や痛み、しゃべることができなくなる
中には、喉という非常に分かりやすい機能に起きる症状もある。「人前で話すことに伴う強いストレスやあがり症などの影響で、身体がその試練に耐えられなくなり、言葉を失ってしまうことがある。また、精神的なものだけでなく、口頭発表の際に声帯に関連する筋肉を使いすぎて、症状が出ることもある」と神経学者のオレリアン・ベノワリッドは説明する。
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5. ヘルペス、帯状疱疹などの発疹
恥ずかしかったりうれしかったりすると顔が赤くなるなど、皮膚は時にムードを裏切ることがある。しかし、顕在化したものはこれだけではない。心理学者のデボラ・ハダド・バドリはこう説明する。「たとえば、大喧嘩をした後にヘルペスができることはよくあることです。他にも、強い心の動揺から、人によってはイボや帯状疱疹(水痘ウイルスの再活性化)が出現することもあります」
6. 体重の変化、胃痛
「不安を補うために間食をする人がいる一方で、急に食欲が落ちる人もいます。この現象にだるさが伴う場合は、うつ病を見逃さないように注意しましょう」と、心理学者のデボラ・ハダド・バドリは警告する。「このような状態になると、心身の状態を無視するようになり、やる気がなくなり、常に悲しくなり、体重の増加や減少に繋がりかねません」
心療内科医のマリー・ペゼは、「食事の量だけでなく、職場でのハラスメントなど特定の状況下で消化器系の問題が見られることがあります」と指摘する。「このような状況が続くと、運動性下痢から大腸障害まで、多かれ少なかれ深刻な通過障害を長期にわたって被ります」と彼女は付け加えた。
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対処法
神経科医のオレリアン・ベノワリッドは、胸痛や息切れの場合は、心因性の原因を特定する前に、心電図などの医療検査をすべて受けて確認しなければならない、と指摘する。その上で不安が証明されたら、化学療法だけでは十分ではない。心身医学的アプローチは、心理療法的アプローチ(催眠療法、ブリーフセラピー、精神分析)も補完すべきである。「“慢性疼痛”の場合、精神的外傷を探すことが非常に重要です。そのため、私は患者さんに複雑な感情的エピソードを経験したことがあるか、性的暴行の被害に遭ったことがあるかどうかを体系的に尋ねています」と医師は主張する。
身体の痛みに対する手技療法も無視できない。オレリアン・ベノワリッド医師は、病態に関連する筋肉の緊張を治療するためのキネジセラピー(運動療法)を提唱している。「“代替医療”も否定はしません。ホメオパシーや漢方薬などのプラセボを使うことで、患者の状態を改善するためのあらゆる条件を整えるのです」と神経科医は付け加える。
(1)Aurélien Benoilid著『Non, ce n’est pas que dans votre tête ! Pour en finir avec le tabou des maladies psychosomatiques』Marabout社刊
text : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) traduction : Hanae Yamaguchi