「失感情」になってない? 自分の本音を知るヒント。
Beauty 2022.12.06
桐村里紗
女性って、本当に我慢強い生き物です。
日常的に不具合を抱えていたとしても、ギリギリまで我慢している人が多いと感じます。
「女性は出産を経験するから男性よりも痛みに強い」とも言われますが、つらさを我慢し、麻痺させることは自分の心と身体の声を無視することです。
無視しているうちに、その声はどんどん聞こえなくなってしまいます。
「いま、あなたはどう感じていますか?」と聞いても、答えられない人が増えています。
「うれしい」「楽しい」「嫌い」「つらい」など、ポジティブなもの、ネガティブなもの合わせてたくさんの感情があります。
自分のいまの気持ちや感じていることがわからずに表現できないことを「失感情」と言います。
これは、周りのことばかり見て、周りに合わせすぎて、自分を無視した結果として起こります。
photo: iStock
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ポジティブな感情は自覚できるけれど、怒りや悲しみなど、ネガティブな感情だけが抜け落ちていることもあります。
日本人の場合、周りと波風を立てないために「怒ってはダメ」などと、ネガティブな感情を無視する人が多く見られます。
そのうちに、本当は怒っているのにわからなくなって、怒るべきシーンでもニコニコしてしまうようになります。自分でも自分の中に起きている怒りに気付けない。
でも、それは「ない」のではなく「見えない」だけ。押し込められた感情は、そのうち爆発することになります。
その結果、普段おとなしく穏やかそうな人ほど、急に怒って手が付けられないとか、急にそのコミュニティとの関係を絶ってしまうとか、極端な行動をとることが多いものです。
感情はニューロンを通して身体にも影響しているので、それがストレス性の不調や病気にも繋がります。女性の場合は月経の乱れなど婦人科疾患としても起こりやすいですね。
普段からプリプリ怒っているくらいのほうが、むしろ自分の感情をその場で表現できているのだから、健全なのです。
喜怒哀楽、ネガティブもポジティブも、全ての感情が大切です。
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無視し続けてきた自分のことを知るために、自分を観察するリハビリが必要です。
でも、「失感情」で麻痺していると、なかなか難しい。
まず簡単にできるのは、「好き」と「嫌い」をちゃんと区別すること。
周りに合わせすぎると、好きなものも嫌いなものも全て受け入れてしまい、ごちゃごちゃになっているはずです。
自分の好きな色、好きな香り、好きなデザイン、好きな人で、日常を満たす。
そして、嫌いなモノや人は、この際バッサリと捨ててしまいましょう。
仕事関係での付き合いは仕方がない場合もあるとして、好きでもないのに「友だち」的なことをやっているなら、いっそ止めるとストレスが減ります。
興味のない話題に無理やり合わせるくらいなら、おひとり様で楽しんだほうが自分のため。
いったん、自分中心でOKです。
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自分の中心軸がないと、周りに流されるだけ。
まずは自分が腰をどっしりと据えてから、そのままの自分が周りにどう役立つかを考えたらいいんです。
無視していた自分を大切にして、心と身体のかすかな声を聴くこと。これが、自分を大切にするヘルスケア・ウェルビーイングの基本です。
text: Lisa Kirimura
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桐村里紗
医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
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