自分にうれしい=地球にうれしい「プラネタリーヘルス・ダイエット」。
Beauty 2023.01.06
桐村里紗
エシカルファッションは、その原料が環境に優しいから、着ていてうれしくなる。
それと同じで、自分の身体をつくる原料である食べものも、環境に優しいものが身体にもうれしい。
自分も地球もヘルシーになる、そんな食事法が「プラネタリーヘルス・ダイエット」です。
人と地球に持続可能なダイエット
プラネタリーヘルス・ダイエットとは、世界16カ国の各分野の研究者37名たちからなるグループ(EATランセット委員会)が科学的な根拠に基づいて、人間の健康と同時に、持続可能な食糧システムを実現する解決方法として、世界中の人たちのお手本となる食事法を示したもの。
このプラネタリーヘルス・ダイエットは、医療やヘルスケアの専門家だけでなく、環境や農業、政治学などさまざまな分野の研究者の視点も入っているために、人の健康だけでなく、サステイナブルな社会や地球を実現するものであるというのがポイント。
世界人類が100億人に上るとされている2050年になっても、人と地球がヘルシーでいられる持続可能なダイエット方法として提案されました。
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食の多様性の低下と環境負荷
さて、今日あなたは何を食べましたか?
朝は定番のパンとヨーグルトにカフェラテ?
低糖質だから、お肉はいくらでも食べてOK?
これ、自分にとってもヘルシーではないし、地球にも負担を与えるメニューです。
いま、世界の食生活は偏っていて、世界のエネルギー消費の75%が、偏った12種類の作物(小麦・米・とうもろこし・大豆など)や、5種類の家畜の肉やミルクでまかなわれています。その生産のために、環境の生物多様性が低下していくことが問題になっています。
確かに欧米も日本を含めたアジアも、どの国に行っても同じフードチェーンがありますし、伝統食の代わりに似たようなものを食べていますね。
私たち日本人も、食事がずいぶんと西洋化されて、小麦と牛乳、肉を毎日たくさん食べています。
偏った食事、加工度の高い食事は、食の多様性や食の持つ全体性を失ってしまうので、腸内環境にとっても栄養面でもアンヘルシーです。
そして、大量生産型の加工食品やたくさん食べる家畜の飼料には、単一品種の作物が大規模に、農薬や化学肥料を使って大量に生産するというスタイルの農業で育てられています。
そうした農業が土地や周辺の環境、さらに川から海にも影響し、生物多様性を減少させ、砂漠化を促進し、気候変動の原因になっています。
ではいったい何を食べたらいいの?
という疑問に答えるために提案されたのが、プラネタリーヘルス・ダイエットです。
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野菜は2倍、肉は半分
プラネタリーヘルス・ダイエットは、日本のような先進国では、「野菜の量をいまの2倍に」「肉の量をいまの半分に」。
これが最もシンプルな提案です。
これなら、できそうじゃないですか?
もう少し付け加えると、1日のお皿の半分を、いろいろな種類の野菜でモリモリにし、肉を減らす代わりにプラントベースのプロテインとして豆やナッツ類を増やす。
乳製品や加工油脂や砂糖などの精製糖を控えめに。
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現代的な食スタイルの人にも実践しやすい方法で、厳格なベジタリアンというわけではなく、場合によっては動物性の食品も食べてよいフレキシタリアンに近いスタイルです。
次回は、もう少し具体的な方法をご紹介しましょう。
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桐村里紗
医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
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