身体と環境をいたわる「身土不二」の食生活を。
Beauty 2023.02.02
桐村里紗
先週は大寒波の到来、東京も初雪でしたね。
大雪直前に東京から鳥取に移動し、なんとか帰宅できたものの、鳥取県の山間にある江府町はすっぽり雪に埋もれ、朝から昼まで雪かきをしました。
立春を迎えても、まだまだ本当の春は先。これから寒い時季を越さなければなりません。
土地の旬のものを食べる。
「身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。
もともとは仏教の考え方ですが、食養生の言葉としても使われます。
私たちの身体と、その身体を育む土=環境は、ふたつにあらず、つまり、一体。
そのために、自分の暮らす土地の季節のものを食べようという考え方です。
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photo: iStock
たとえば、南国のフルーツ。マンゴーやパイナップル。それに夏が旬のキュウリやズッキーニ。
これらはカリウムが多いので、身体を冷やします。
東南アジアや東アジアなどの暑い地域の食べ物がやたらに砂糖たっぷりで甘いと感じたことはありませんか?
甘みは、身体を冷やすのです。
ですから寒い地域の人が摂ったり、旬ではない寒い季節に食べると、身体を冷やしてしまうので良くありません。
一方で、寒い地域の食べ物は塩分が強め。
冬が旬の根菜は、身体を温めます。それを煮込むと、さらに温める力が強くなります。
根菜を味噌で煮込んだ料理は、寒い日に身体を温めてくれますね。
ちなみに寒い地方で採れるリンゴは、果物の中でも唯一身体を冷やしません。
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冬はサラダやスムージーを控えて。
スーパーマーケットに行くと、冬でもトマトやキュウリなどの夏野菜や、南国のフルーツが当たり前に並んでいます。
でも、冬に生野菜のサラダやフルーツたっぷりのスムージーを食べると、身体を冷やしてしまいます。
スイーツの摂りすぎも、冷え性を悪化させます。
コーヒーも南国の飲み物ですから、ホットであっても身体を冷やします。
砂糖たっぷりの甘いラテなどは控えたほうが無難。
冬は身体を温める根菜とともに、甘みの代わりに適度な塩分をとりましょう。
発酵した味噌や塩麹を使うと、ますます温め作用がアップします。冬は発酵食品を活用した煮込み料理を定番に。
飲み物は、カフェインのないハーブティーなどがいいですね。
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photo: iStock
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プラネタリーヘルスを考えた食事を。
季節性や地域性を無視した食べ物は、環境にも負担をかけます。
冬の寒い時期にトマトを育てる場合、ハウス栽培をしなければならないので電力を余計に使います。
また、ヘルシーフードの代表とされるアボカドは、世界の課題です。先進国で爆発的な人気となったがために南米のマフィアの資金源となり、治安の悪化や環境破壊の原因になっています。
自分が暮らす地域の旬のものを食べることは、そうした環境への負荷やグローバルインバランスに無自覚に加担せず、ローカルを元気にするためにも重要です。
身体と環境を一体化するために、「身土不二」を意識してみてください。
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桐村里紗
医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
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