アンチエイジングの最新事情をアップデート 老化細胞除去ワクチンで、老けない身体に!?

Beauty 2023.02.23

美容医療や最先端医療の進化を追いかけていると、可能性と選択肢が増えて、歳を取るのも悪くないと思える。とはいえ、決して安くはない治療でもあるわけで、自分の年齢や目指す理想にマッチするかはよく吟味を。今回は、老化細胞除去ワクチンの開発に成功した順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学の南野徹教授に、その取り組みについて聞いた。

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南野 徹
順天堂大学大学院 
医学研究科循環器内科学 教授

千葉大学医学部卒業後、東京大学にて医学博士号を取得。その後ハーバード大学医学部にて血管老化の研究を開始。2012年、新潟大学循環器内科教授を経て、20年より現職。

「私たちは、老化細胞を除去する抗体に関して研究しています。老化細胞とは、遺伝子に傷が入って分裂することをやめた細胞。これらが蓄積すると、生活習慣病やアルツハイマー病の発症や進展に関与することがわかっています。本来なら老化細胞は免疫の働きで取り除けますが、何らかの原因で取り除かれず、溜まると悪さをする。そうならないために、自身の免疫をワクチンでブーストしようという発想です。具体的には、老化細胞に出るマーカーを標的にしてワクチンをつくり、それを注射することで白血球を活性化させ、自ら老化細胞を取り除く仕組みです。

実際、それが皮膚や髪などのエイジングとどう関係するか。それは私の専門外になりますが、内臓の状態が悪いと見た目にも影響が出てくることは間違いありません。腹部に脂肪細胞が溜まったマウスは動脈硬化を起こし、毛並みも悪い。マウスと人は違うので一概には言えませんが、見た目を若く保つためには、体内の健康が前提になるのは明らかです。

現段階では老化細胞がいつから溜まるのかはわかっていません。また、老化細胞は人によって溜まるスピードがまちまち。寝不足や不摂生で生活習慣が乱れていると、免疫力も弱まり、溜まりやすくなります。とはいえ、老化細胞をゼロにする必要はなく、半分くらいにするイメージ。簡単なPET検査で老化細胞の量を数値化し、その結果次第でワクチンを打つかどうかを判断できるといいと思っています。

ワクチンではなく新薬をつくるという選択肢もありますが、ワクチンはもともとある身体の免疫を使うので、コストも期間もタイトにできます。老化細胞は分裂せず、ジワジワと溜まっていくもの。それを副作用のリスクをできるだけ軽減しながら取り除くには、ワクチンが最適、という結論にいたりました。まずは5~10年後の認可を目指して治験を重ねると同時に、いずれは保険診療にしていきたい。高血圧や糖尿病のように老化が疾患のひとつとして認められ、老化細胞除去ワクチンを打つことでより多くの人が若々しく健康な状態で寿命をまっとうできるようになればと考えています」

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photography: iStock

Q. 老化細胞除去ワクチンを打つと、何年でも生きられる?

A. “健康寿命”が延びるだけ。
「寿命そのものは変わらないと考えています。私の研究は、人生最後の10年を寝たきりにならず、元気で楽しむためのワクチン開発です。50歳くらいで打ち始めて、80歳まで健康でいられたら……そんなイメージ目標です」

Q. ワクチンには抵抗が……摂る、塗るという方法はある?

A. 食品は研究を進めています。
「“摂る”に関しては、野菜の皮などに含まれるケルセチンに老化細胞を除去する効果があることがわかっており、緩やかに除去を促すサプリメントなどの開発を進めています。皮膚は専門外のため、“塗る”に関しては研究していません」

Q. ワクチンを打つと、運動能力や記憶力も衰えない?

A. マウスの実験上では、運動能力に差が出ています。動脈硬化のリスク軽減も明らかに。
「老化細胞の種類は、組織や臓器によってそれぞれ違います。私たちのワクチンは、マウス実験において血管や脳の老化細胞除去に高い数値をマークしており、ゆえに人においても運動機能や認知症に効果があると期待しています」

*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋

editing: Sachico Maeno

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