パリジェンヌが注目する2023年のヘアスタイルは?
Beauty 2023.03.03
この春、パリジェンヌたちが注目するヘアスタイルは? フランスのヘアスタイリスト、デルフィーヌ・クルテイユとアドリアン・コエロが今年のヘアトレンドを解説!
photography: Getty Images
新たな年、新たなトレンド。そしてかつての流行りがカムバックすることも。人々が求めたものは過ぎ去り、また戻ってくることもあるからだ。ファッションにおいて、過去は常に未来の糧となるのだ。
では2023年のヘアスタイルはどうなるのか。どんなスタイルに挑戦してみたくなるのか。ヘアスタイリストであり自身のサロンとブランドを立ち上げたデルフィーヌ・クルテイユとアドリアン・コエロが詳しく解説してくれた。
バタフライかピクシー、どちらを選ぶ?
カットの面では、ショートもロングも同じように人気を得るだろう。2000年代が大きくカムバックする中、レイチェル・カット(ドラマ「フレンズ」でジェニファー・アニストンが演じている登場人物の名前)が再熱。セレブだけでなく世界中の女性を魅了し続けている。
セレーナ・ゴメス以降、何人ものインフルエンサー(フランスではサビナ・ソコル)が”ブランチェル”スタイル、つまりブリジット・バルドーとレイチェル・グリーンのミックスである2022年バージョンを取り入れたことは記憶に新しい。
2023年はこのスタイルがバタフライ・カットとしてアップデートされる。「前髪はカーテンバング、鎖骨やあごのあたりは束になったレイヤー」とアドリアン・コエロは説明する。
ドライヘアの人の場合はカラーも重要となる。「バレイヤージュで明かりを取り入れ、反射光や影をつくって遊びましょう。そして立体的にすることで、ボリューム感とワイルド感が演出されます。ジェニファー・アニストンのカラーは手の込んだ素晴らしいものでした」。このカットは自宅でも比較的簡単にお手入れできるスタイルだと付け加える。「あらゆる方向に髪の毛を乾かし、ボリュームを出すために上部の2~3束を、たとえばダイソンのエアラップで巻く。これで毛先が所々に現れるようになります。結局はカットする時にすべてがかかっています」
巻き毛の人にはおすすめできないが、ある程度クセのある髪の人には最適だ。「髪が細い人はあまり内側にはレイヤーを入れず、顔周りにレイヤーを集中させましょう」
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ショートヘアが好みの人にとって、ピクシーカットに注目が集まるのは嬉しいことだろう。ゾーイ・クラヴィッツ、フローレンス・ピュー、フランス人のレア・セドゥなどの有名人が取り入れたこのカットは、いままでになく人気が定着する。
このスタイルはパンクにもロックにもなるが、アドリアン・コエロによると、2023年はもう少しソフトな感じで、切り過ぎ・刈り過ぎはナシとのことだ。「でもひとつだけ注意点があります。恋人と別れた後など、感情的につらい時にカットするのは避けるべき。このようなカットに挑む時は、本当に試してみたいから、別の人物を演じてみたいから、本来の髪の毛の色に戻りたいからなど心の準備がちゃんとできてから」とアドバイスする。
もし迷っているなら、中間になる段階的なカット、例えばビクシーボブ(ボブとピクシーのミックス)から試してみよう。「襟足と前髪を長めに残しておきます。そして徐々に顔周りを露にしていく。ピクシーカットでは顔が完全に露出されるので」
逆に、デルフィーヌ・クルテイユは大胆に短いピクシーカットにポテンシャルを感じている。「シンガーのPomme(ポム)がバッサリと切ったように。年齢によっては、もしくは角ばっている輪郭の持ち主はもう少し柔らかいカットの方がいいかもしれません」
実際、彼女のサロンで、彼女が専属ヘアスタイリストを務めるモデルのルイーズ・ドゥ・シュヴィニーのヘアスタイルを希望する顧客は少なくないという。シャネルのショーによく登場するルイーズは、このフェミニンなベリーショートが実によく似合っている。
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サイドの分け目がカムバック。
2021年、Tiktokで「分け目」議論が白熱した。分け目は完璧な”左右対称派”であるゼンデイヤ、ヘイリー・ビーバーやケンダル・ジェンナー世代からは完全に無視されていたが、2023年は分け目を少し横に逸らしてみたくなる予感。「ヘアスタイルに軽いアシンメトリーを作ることが目的。キム・カーダシアンなんてすごく似合ってます!」とアドリアン・コエロは言う。
分け目はそれぞれの髪の生え方にもよる。「そしてそれぞれの目(例えば大きく見せたい場合など)に合った分け目も研究してみましょう」とデルフィーヌ・クルテイユは付け足す。とにかく完璧なシンメトリーはもう終わり。ボリュームを出してみたり、逆に光沢のある滑らかなスタイルにしてみたり、分け目を動かして遊んでみよう。ちなみにベラ・ハディッドはすでに横分けの虜になっている。
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前髪はカーテンかボトルネックでスタイルを主張。
女性にとって永遠の葛藤である前髪は、2023年も私たちを悩ませ続けそうだ。「前髪はあっと言わせる抜群な効果を発揮します。自分がその大きな変化を求めるか次第ですね」とアドリアン・コエロは注意を促す。彼によれば、今年は“ボトルネック”(普通の前髪と長すぎる前髪との中間で、サイドの髪との境目が曖昧になったスタイル)、もしくは70年代風の“カーテンバング”で、顔周りを少し長めに残したものどちらかの間で悩むことになりそうだ。
「もう少し直線的なラインでシャギーな雰囲気を出すオプションもあります」。デルフィーヌ・クルテイユもファラ・フォーセットを例に出しながら、この70年代のトレンドを推す。「イメージはカーテンバングだけど、もう少し長くして、動きを与えることが重要です。セリーヌやグッチなどのメゾンが再び流行らせたヴィンテージなブローが前髪に動きを与えてくれます」
ステラ・マッカートニー 2023春夏コレクション。 photography: Imaxtree
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グランジ、“ベッドヘア”……無造作に崩したスタイルが主流。
ヘリオット・エミル2023春夏コレクション。photography: Imaxtree
最新のランウェイでのヘアスタイルは解放の風が感じられた。まるでベッドから出たままのような、グランジに近い崩れたスタイルだ。ウェット感を出してベタベタ髪を装うところもあった。そこまでいかなくとも、このトレンドに乗るには質感に注目するよう、デルフィーヌ・クルテイユはアドバイスする。「1990年代のケイト・モス風の、パーティーに行った翌朝のような感じを出したいのです」。このためにはドライシャンプーやパウダーワックスなどで髪を整えることをアドバイスする。
「細い髪質の人が無造作感を出すには、パウダーワックスとスプレーを混ぜて使ってもいいでしょう。髪を三つ編みに編んだまま寝るのもおススメです」。この方法はアドリアン・コエロもすすめる。彼は自身がプロデュースするミスト「Brume mémoire」を寝る前に軽く湿らせた髪にスプレーする方法を提案する。「少し髪が汚れ、乱れた “翌朝ルック”です。完璧なウェーブは絶対にNGで、あえてラフでボサボサした無造作感を演出しましょう」とCoelho Beautyの創業者は説明する。彼もまた「ゴムのブーツと勝手気まま無作法時代の」ケイト・モスを参考に挙げた。グラデーションカットにして、頭を下に向けてドライヤーで乾かせば、ワイルドなパンク感が増すことは間違いない。
アウェイク2023春夏コレクション。photography: Imaxtree
「ブロンドの人気は少し落ちてきた気がしますが、季節的なこともあるかもしれません」。赤茶色が選ばれることが多いようだとデルフィーヌ・クルテイユは言う。「最近のショートの女性は楽しむ方法がいろいろあります。髪が痛んできたらカットして新しい色に挑戦できますからね」。褐色系の人にはゴールドハニーのハイライトが人気だ。
text: Justine Feutry (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki