「髪を失う前の自分に」ジュリー36歳、植毛を決めた日。
Beauty 2023.07.31
4人の女性がコンプレックスの源を解消した。無くなってしまった髪の毛を取り戻すことによって。このインタビューではその内の一人が自身の経験を包み隠さず話してくれた。
36歳のジュリーが植毛の経験について話してくれた。「髪の毛が無くなる前の自分に戻りたかったの。」photography: Getty Images
ジュリーは30代になった頃、フランスでは“スチュワーデス症候群”とも呼ばれているけん引性脱毛症と診断された。実際、彼女はCAだ。「この職業では頻繁に起こる脱毛症です。他にも日常的に髪の毛を強く後ろに引っ張ってシニヨンにすることが多いダンサーや、髪の毛を編み込みにする女性によく見られます」と美容外科医であり、パリのメゾン・リュテシア医長、サラ・ファドリ先生は指摘する。実際ジュリーはバレリーナでもある。13年間、仕事中も、生きがいでもあった趣味に勤しむ時も、必ず頭の高い位置にシニヨンを作ってきた。「徐々に進んだので当初は髪が無くなってきたことに気づかなかった」と彼女は語る。
彼女は植毛を検討する以前からあらゆることを試してみた。サプリ、育毛シャンプー、ひまし油……でも効果はなかった。「髪の毛を刺激するためにメソセラピーやPRP療法も提案されたわ。でも、額のラインに毛根自体が無くなってしまったので、どの治療もダメだった。髪の毛を引っ張りすぎて毛根が根元から抜けてしまったのね。もう取り戻しようがない。植毛が最も根本的な解決策だったの」と彼女は続ける。
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きっかけ
「ある日鏡をみていたら、額がずい分広いことに気が付いたの。そうしたら、もう気になって気になって。道行く人におかしな目で見られていることにも気が付いたわ」とジュリーは打ち明けた。近しい人たちが何も言ってこなかったことに驚いた。「話す勇気がなかったと説明されたわ。傷つけるのが怖かったと。何かの病気かもしれないと思っていた人もいたようね。」コンプレックスが一歩を踏み出す原動力になった。「髪の毛を失う前の自分に戻りたかった。自分の顔、自分の髪の毛、普通の容姿。それまでの生え際のラインと濃い髪の毛を取り戻したかった。求めたのは自然な自分らしさ。自信を取り戻せるように。」そしてパリの植毛専門の美容外科クリニック、メゾン・リュテシアに予約を取った。当初、髪の毛を完全に剃ることに不安を感じた30代の彼女はDHI法(直接自毛植毛)に魅力を感じた。「外科手術ではない、メスを入れない、そして傷跡が残らないからね。」
処置
「DHI法では髪の毛が多い後頭部にあるドナーゾーンを一列に細く剃り、一本ずつ手作業で毛根を採取します」とサラ・ファドリ先生は説明する。「次に局部麻酔のもとで、髪の毛の角度や方向を選べるペン状の器具を使用してドナー株を移植します。まだある髪の毛の間に植毛していくので、レシピエント部(薄毛部)は剃りません。すると目立たずにごく自然に生えてきます」とファドリ先生は保証しつつも、最も頻繁に起こる後遺症としては浮腫ができることだと忠告する。ジュリーの場合、採取は午前いっぱい、移植は午後いっぱいかかった。「処置後の数日間は傷が治りかけているドナーゾーンとレシピエントゾーンのどっちもかゆくてたまらなかった。かかないためにはすごい努力が必要だったわ!」と思い出す。
結果
5カ月後、最初の髪が生えてきた。「信じられない光景だったわ。その後、一年間は生え続けた。望んでいた以上の完璧な結果だわ。額が元のサイズに戻った」とジュリーは喜ぶ。「まるで何もなかったかのように、とても自然に埋められている。私を変貌させたのではなく、逆に自分ともう一度とつながることができたの。元の自分をやっと見つけられた感じ。植毛は私の人生の暗い部分を消してくれたの」と彼女は肯定する。そして、感動した声で付け加えた。「この処置のおかげで充実した社会生活を取り戻すことができたわ。鏡の中の自分の姿を見ると、毎回少し感動してしまう。もう隠れる必要はないのだと。」
*匿名性を守るために名前は変更してあります。
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text: Victoria Hidoussi (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki