新生「グタール」の調香師、カミーユに聞く香りの話。

Beauty 2018.10.05

パリのフレグランスメゾン「アニック グタール」が、新たに「グタール」として生まれ変わった。創始者アニック・グタールの娘であり、ブランドを受け継いだ調香師のカミーユ・グタールは、メゾンに根付いた伝統はそのままに、ロゴやパッケージデザインに新たなインスピレーションを取り入れ、モダンにアップデート。
そんなカミーユに、ブランドについて、香りについて、話を聞きました。

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カミーユ・グタール/Camille Goutal
調香師。高校卒業後にフォトグラファーの道へと進み、ファッションやインテリアデザインの世界で活動後、1999年に母の後を継いでアニック グタールに。母が長年信頼してきたパートナー、調香師のイザベル・ドワイヤンとともに「ソンジュ」(2005年)、「アン マタン ドラージュ」(2009年)、「ル シェブルフイユ」(2002年)、「イル オテ」(2015年)などの作品を生み出し、メゾンの精神を伝え続ける。

―アニック グタール時代から引き継ぐスピリット、そして新生グタールが吹き込む新しさとは?

「まず変わらないのは、香りそのもの。クオリティも香料や処方も変わっていません。ただ、ブランドとしては約40年が経っていますから、リフティングしないとちょっと老けて見えるかな?ということで(笑)、私たちの個性をよりモダンな形で紹介できるようビジュアルを変更しました。それから“アニック”という名前から女性のためのブランドだと感じてしまわれる方もいたので、ブランド名を変えたことで、私たちのブランドが性別にとらわれないものであることをアピールできるようになったと思います」

―同じ香りでありながらボトルデザインを2種類用意し、ユニセックスに対応したというのがおもしろいですね。

「男性がもっと気軽に手に取れるような形で、というのを考えた結果です。また、女性がパートナーにプレゼントする時にも贈りやすいですよね」

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同じ香りを2種類のボトルデザインで。フェミニンボトル(右)には繊細なプリーツ模様を施し、ゴールドカラーのボトルキャップを採用。ユニセックスボトル(左)には力強い輝きを表現するダークシルバーのキャップを合わせた。

―小さな頃から香りが身近にある環境だったと思いますが、香りにまつわる思い出は何かありますか?

「まだ母がアニック グタールを創設していなかった時代のことですが、彼女は日曜日に寝室でゆっくり朝食をとるのが好きでした。その時のコーヒーの香りと、ちょっと焦げたトーストのおいしそうな匂い。小さなアパルトマンに住んでいたので、それが私の寝室まで漂ってきて目覚めていました」

―それは何歳の頃ですか?

「2歳半か3歳頃だと思います。それから同じくらいの頃、指に火傷をしてしまったことがあるんですが、病院で女性看護師が薬を塗ってくれた時に、アルコール消毒液と、彼女がつけていた香水が混じり合った匂いがしたのを覚えています。いま振り返ると、彼女がつけていたのは、ロシャスの『ファム』だったと思います。その頃から私は香りに敏感だったようですね」

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2年ぶりの来日というカミーユ。ふたりの子どもを持つ母親でもある。

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―調香師の母、画家の父をはじめ、音楽家やデザイナーなどクリエイターを親戚に持つ家庭でさまざまな芸術に触れて育ったそうですが、フォトグラファーの仕事に惹かれた理由は?

「少女時代からメランコリックなところがあって、時間がどんどん過ぎ去っていくことに儚さを感じていたので、写真を撮ることによってその瞬間を引き留められることに興味があったんです。風景とか、色とか、会った人とか、差しこむ一瞬の光とか……ふと心に強く訴えかけてくるものを写真に残したいと思っていました。その思いはいま、調香の仕事にも生きています。私の香水作りの基本は、感情や感動を香りに閉じ込めて、永遠に残したいというものですから」

―写真を撮ることと香り作りの共通点、興味深いです。

「五感を使っていろんなものをキャッチして、それを写真に撮るか、香りとして表現するかの違いだけなので。クリエイティブな仕事というのは、使うツールは異なっても、目的は同じなのではないか、と思います」

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温かみや伝統を大切にしながら、ロゴやパッケージを一新。

―ともにブランドを受け継いだ、同じく調香師のイザベルさんとあなたはどんなふうに協働しているのですか?

「ラボラトリーではふたりで仕事をしていますが、各々がプロジェクトを持っていて、何かを一緒に作ることはありません。ただし途中で行き詰まった時などには、お互いに意見を交換したりということはあります。常に情報共有はしているので、ある意味でピアノの連弾をしているような感覚ですね」

―信頼関係があってこそですね。

「もちろん私にもイザベルにも個人的な嗜好があって、それが完全に一致しているわけではありません。ただ、香水の有名ブランドがよく使っている香料の中で、ふたりが共通して苦手なものがいくつかあるんです。逆に言うと、彼女が開発するものの中には、私にとって嫌いな香料が入っていないということ。よく『グタールの香りはほかと違いますね。どんなユニークなものを使っているのですか?』と聞かれるのですが、むしろ使っていないものがあるんです(笑)」

―新しい香り「ボワ ダドリアン」は、1980年に誕生した「オーダドリアン」を再解釈したものですが、今後もこういったリブート的なアプローチは予定していますか?

「それもひとつの方向性ですが、大変難しくもあります。たとえば、“プチシェリー” は、私が10代の頃、母が私をイメージして作ってくれたもの。私も成熟してきたので、それに応じた香りを作りたいと思ってこの3年ほど “新しいプチシェリー” に挑戦していますが、なかなか難しく完成に至っていません。まだまだお待ちいただくことになりそうですが、諦めないで頑張っていきます」

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左から、ボワ ダドリアン オードパルファム、ボワ ダドリアン オードパルファム(ユニセックスボトル) 各50㎖ ¥20,088 100㎖ ¥27,324/ブルーベル・ジャパン

●問い合わせ先:
ブルーベル・ジャパン株式会社 香水・化粧品事業本部
0120-005-130(フリーダイヤル、受付時間10:00~16:00)
www.latelierdesparfums.jp/brands/goutalparis

 

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