生理用品を使わない女性たち。
Beauty 2018.12.23
彼女たちは生理用品を使うのをやめた。自分の身体をうまくコントロールし、経血が出そうになるとお手洗いに行く。4人の女性たちが、自分を解放し、身体本来の機能を取り戻し、生理期間を快適に過ごす方法について語った。
「月経血コントロール」を実践する女性たちは生理用品を使わない。 photo : iStock
まだモウド(32歳)は2015年11月以来、生理用ナプキンや経血カップを使用していない。「月経血コントロール」を始めて数カ月後には、生理用品を使用する必要がなくなった。今回取材した30代女性たちにとって更年期はまだ先で、「月経血コントロール」は実践する価値がある。モウドは経血が出るタイミングを自分でコントロールし、お手洗いで流すと言い、詳細を次のように語る。
「排尿をした後、膣の周りにある筋肉のペリネ(骨盤底筋)を引き締め、そして緩めます。残った経血をしっかり出し切るため、子宮に圧を加えるようにします」。生理期間中、毎日続けるのだ。彼女はこのメソッドを始めてから、開放的になり、自分自身の理解が深まったという。
「月経血コントロール」はアメリカで始まり、フランスでは2015年にウェブで紹介されて以来、注目を集めていることは確かだ。フェイスブック上の「月経血コントロール」グループがその人気に火をつけ、メディアの関心も後押しして急速に広まっている。
また、ジャーナリストで作家のエリーゼ・テューボ氏による著書『Ceci est mon sang: Petite histoire des règles, de celles qui les ont et de ceux qui les font』(La Découverte刊)がきっかけとなり、生理周期について公の場で意見が交わされるようになり、「月経血コントロール」への注目が更に高まった。
生理用品を使うことが面倒くさい、また節約の観点から始める人もいる。25歳のマリーは節約のためだけではなく、生理用品に含まれる有害物質や環境ホルモンに対する不安があるという。
自然に還り、身体本来の機能を取り戻す
インタビューをした4人の女性のほとんどが、自然回帰や地球環境への関心が高い。「以前より健康的な食生活を心がけるようになりました。環境にも配慮するようになり、身に着ける物にも関心を持つようになりました。必然的に生理用品に対しても疑問が沸くようになり、化学物質でできたタンポンやナプキンを使い続けることが不安になりました」とロクサーヌ(23歳)は回想する。モウドの場合、化粧品などにも気を配っている。生理用品の使用をやめて以降、髪を洗う際は水と古くから洗剤として用いられているホワイトビネガー(トウモロコシ、大麦などから作られた無色透明のアルコール酢)やサボン・ノワール(黒オリーブ石鹸)、ココナッツオイルを使用するようになった。
ジャーナリストのテューボ氏いわく、このメソッドを実践すると、経験を通じて自分の身体と向き合い、コントロールする方法を見つけ出すことができるという。ただし、実際行ってみると個人差がある。「月経血コントロール」を実践する前に、実践している人に話を聞いてみよう。またはいま一度身体の機能について学んでほしい。
タニヤは10年以上このメソッドを実践しているが、30歳近くなってようやく生理中、身体の中で起こっていることについて理解できるようになった。「生理の日をメモするようにしたわ。それから性欲が高まる日、気分がよくない日、気分が浮き沈みする日などを見極めていったの」
生理期間中、心身の揺らぎはクライマックスを迎える。マリーは自分の経血がいつ出るかがわかると言う。「痛みが経血を知らせてくれるわ。排尿するときと同様、我慢してお手洗いに行き、そしてリラックスして排出するの」マリーは1分程度でそれが可能だ。子宮の収縮や痛みを感じることができない場合、練習して身体の感覚を理解する必要がある。タニヤは唇に血液が流れるのを感じるのがサインだと言い、そのほかの女性たちは膣に血液が流れるのを感じると言う。
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ペリネを意識するようになる
「女性たちは自分の身体をコントロールすることは不可能だと思いがちである」
― エリーゼ・テューボ
「月経血コントロール」は魅力的で実現可能な方法である。しかしながら、私たちの誰もが生理用品なしで生活することは可能だろうか。婦人科医のピア・ド・ライルハック医師は疑問を呈する。「経血量が少ない女性には取り入れやすいものの、平均もしくは多めの場合は30分毎にお手洗いに行かないかぎり、実現が難しいでしょう。その場合、ペリネを意識しても経血は流れてしまうと思います。生理学的にそうできているのです」
一方、ロクサーヌはその意見とは真逆だ。「たとえ経血の量が多かったとしても、誰でもできると思うわ。始めた当初、私もそうだったの。ペリネを意識することが大切よ。そして自分の身体と心に自信を持つことね」と述べる。
テューボ氏は、疑問を呈する人にも理解を示す。「皆生理のことを知っているようで知らないので、多くの人は信じ難いでしょう。また、歴史的にいえば、女性たちは自分の身体をコントロールすることなど不可能で、ペリネを自力でコントロールすることは無理だと考える傾向があります。しかし、それができるからこそ、私たちはヨガをしたり、ペリネを鍛えたり、出産することが可能なのです」
「月経血コントロール」に最近関心がある人たちは、身体へのアウェアネス(意識)の部分に特に興味を持っている。アウェアネスを高めるためには脳と身体を結びつける高い集中力が必要となり、最初のうちは失敗を繰り返す。マリーは次のように回想する。「お手洗いに行くまで我慢できると思っていたけれど、そうではなかったわ」
「お手洗いにばかりいても、経血が出てくるタイミングを知るのは難しいわね」とトニヤは言う。ロクサーヌにとって最も難しかったのは自分の気持ちに集中し、ペリネを正しく動かす方法を見つけることだった。「強制的に自分の心と身体に集中するために、生理用品は使わず、少しずつ筋肉を動かす方法を理解していきました」
生理期間中をもっと快適に過ごす
「生理期間中も心身穏やかに過ごせるようになりました」
―ロクサーヌ
「月経血コントロール」を実現するには努力が必要だが、取り組む価値はある。生理中もっと快適に過ごせるようになるのだ。「月経血コントロール」を始めると、パワーバランスが変化し、トニヤは長い期間悩まされ続けた生理とうまく付き合えるようになった。「長年、生理は私にとってはただの生活習慣でした。けれども生理と向き合うようになったいま、自分の女性としての“性”を受け入れるようになりました」とトニヤは語る。
「生理期間中も心身穏やかに過ごせるようになりました。もう悪夢のようには感じません」とロクサーヌは言う。「月経血コントロール」は、生理そのものだけでなく、すべてにおいてよい影響があるようだ。トニヤは自分の身体の調子も整い、パートナーとの関係もよりよくなったと言う。「自分の身体と向き合うことで性欲も増えたわ。自分自身にもっと耳を傾けることで婦人科系が健康でいられるようになったわ」とモウドは語る。
「かつて西欧社会では、生理について公の場で語られることはほとんどありませんでしたし、むしろ恥ずべきことでした。生理中というのは何か不安定で謎めいたものだったのです。女性たちは痛みを否定したり、痛みがあって当然だと考えたり、むしろ痛みはあるべきであると考えてきました」とテューボ氏は語る。彼女は、生理とうまく付き合っていくことは今後、公衆衛生の課題となると考えている。「生理期間というのは人生の長い期間を占めます。 それを考えればこそ、自分自身を恥じることや生理現象に対して何もできないと長い間悩むことは、自尊心や健康上、顕著な影響があると思っています」
「月経血コントロール」は女性にとって足かせとなるのか?
「月経血コントロール」に否定的な人たちは、女性にとって精神的負担が増えることや強制的にならないかを懸念する。
「このメソッドを生理と上手に付き合うよい方法だと理解を示したり、試したりすることは素晴らしいでしょう。しかしながら、女性はただでさえ多くのプレッシャーを抱えながら生きていますから、あまり負担にならないようにだけ気をつけましょう」とテューボ氏は述べる。
インタビューを受けた女性によると、このメソッドをマスターするには最低3サイクルの時間が必要だ。 「忍耐は必須です。そして、1日でも休憩したいときはナプキンを使いましょう」とトニヤは主張する。マリーは「月経血コントロールをやりたいときだけ、ゆるく取り入れているわ」と言う。マリーは会社に出勤するときだけ、生理用品を使用し、自宅で過ごすときは使わないと言う。
texte : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi