Be UnFramed / FLOWFUSHI 新しい時代の潮流と、TAOが考えるアイデンティティ。
Beauty 2018.12.26
ルールや常識といったフレームを飛び越えたアイテムを提案してきたビューティブランドのFLOWFUSHI(フローフシ)が、2018年末でブランドに終止符を打つ。今後は舞台を世界に移し、ブランド名も一新、次のステージでの挑戦をしていくことを発表した。
そんなFLOWFUSHIの「UnFrame」な精神を体現する9名にフォーカス。今回のゲストは、トップモデルとして世界で活躍し、現在は女優という新たなチャレンジで可能性の枠を広げているTAOさん。海外で活動しているからこそ感じる、日本ならではの"フレーム"とは...。
TAO
千葉県出身、ニューヨーク在住。14歳でモデルデビュー。20歳で単身パリへ飛び、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのランウェイに出演し、雑誌や広告でも活躍。2009年より拠点をニューヨークに移し、13年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」や、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。
フレームと自由の間で見つけた「自分らしさ」。
TAOさんが見えないフレームらしきものを初めて感じたのは、小学生の時。
幼稚園がモンテッソーリ教育で、先生から与えられるプログラムではなく、自分のやりたいものをやりたいだけやる、という環境だったんです。それが卒園して公立の小学校に行くと、何もかもが違う。カルチャーショックを受け、窮屈でアジャストできないような気分になりました。象徴的だったのが絵の具セットのこと。買う時にブルーとピンクを選べたのですが、1学年120人中、女子でブルーを選んだのが私ひとりで、6年間「女なのにブルーを持つなんて変わっている」とからかわれたんです。違和感を覚えながらも、小中学生の間は頑張ってフレームにはまろうとしていました。皆と同じものを選んだり、なんとなく同調したり......。
複雑だったのは、父親がリベラルだったこと。
皆が右なら、お前は左へ行け、と枠から出ることを期待されていて、それも逆の意味で "呪い" でした。その後進学した高校は、一転して自由な私立で、人と違うことがステイタス、みたいな。さらに大学の専攻がパフォーミングアーツ学科という、個性とサービス精神がぶつかり合うカオス(笑)。私ってつまらないな、普通だな、という戸惑いを感じながら、自分らしさを失わないようにしよう、と。
世界を舞台に仕事をする中、日本人的な自分を意識することもあるという。
ビジネスシーンでの会話は、相手に合わせて基本は肯定から入ります。嘘や思っていないことは言わないけれど。でも、欧米では「それは違うよ!」と言える人が多いんですよね。「No」が言えないことに自己嫌悪を感じたこともありますが、その日本人らしさも私に染み付いているパーツ。無理に変えようとは思いません。ただ、他人の評価を気にしないで突き進める人には憧れますね。
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海外で芽生えた、アジア人としての意識。
ニューヨークに生活の拠点を移して10年が過ぎた。日本を客観的に見ると、誇らしい部分が多い反面、もったいないと感じる部分も。
いまだに女だから、男だから、というフレームが残っている気がします。日本はフェミニズムがきちんと理解されていなくて、過激なものとして捉えている人が多いですよね。女性は権利を主張しないほうが幸せになれる、という意識が抜けないのは残念。そういうオールドスタイルの概念に支配されているから、メイクやファッションも「モテるかどうか」が軸になってしまうのではないでしょうか。
ビューティはもっと自由でいいのに――。
日本の流行の早さと敏感さにはいつも驚かされます。周りに置いていかれることにプレッシャーを感じている若い女性も多いみたい。でも流行っているから、皆が持っているから、という発想で横並びになるのはつまらない。そう思うと、コンサバティブな "きれい" を無視したガングロギャルや原宿文化は、個性があってかっこよかったな。
ニューヨークに生活の拠点を移して10年を過ぎ、アジア人という括りを意識することも増えた。
私たちは、日本はアジアいちの先進国だと教育で刷り込まれている部分があり、偏ったプライドを持っています。それが向上心に繋がるのはいいこと。でも、同じアジアの国に対して偏見を持つのはとても悲しい。それこそ、なくなってほしいフレームです。アメリカでは映画『クレイジー・リッチ!』がヒットし、アジア人の存在感が増してきています。私たち日本人もその輪の中で一緒に盛り上がりたいし、結束力を強めていけば世界の中でも堂々と勝負できるはず。これから先も日本人であり、アジア人であることをポジティブにとらえ、次の世代が臆せず夢にチャレンジしやすい環境づくりを応援したいですね。
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TAOのアンフレームなメッセージ。
売れている現状に満足せず、もっと大きな舞台で勝負したい、というFLOWFUSHIの姿勢は素晴らしい。世界でも唯一無二の存在になってほしい。
photos:TAK SUGITA (Y’s C), stylisme:CHIE ATSUMI, coiffure:KENICHI(EIGHT PEACE), maquillage:SADA ITO(DONNA), texte:ERI KATAOKA