Kōki, が出合った、シャネルN°5 の世界。

Beauty 2019.10.21

2018年9月から、シャネル ビューティ アンバサダーを務めるKōki,。今年5月、シャネルN°5 の故郷、南仏グラースでローズ ドゥ メの収穫と香料の抽出を見学した彼女が、今回、シャネルの専属調香師オリヴィエ・ポルジュが指揮をとるパリ郊外の香りのラボを訪れた。ふたりの再会はグラース訪問以来2ヵ月ぶり。フィガロジャポン2019年12月号(10月19日発売)では紹介しきれなかった、N°5 にまつわる物語もあわせてご紹介します。

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専属調香師のオリヴィエ・ポルジュの案内で、今日は、香りのクリエイションの本拠地、パリ郊外にあるシャネルのラボを訪問。

シャネル社の香りのラボがあるのは、パリの隣町。ブローニュの森を見渡すテラスのあるガラス張りの明るいフロアで、オリヴィエは笑顔でKōki,を迎えてくれた。「Bonjour!」の声が上がり、スタッフとともに2ヵ月ぶりの再会を喜ぶふたり。幼い頃から夏はパリで過ごしていたKōki,だけに、オリヴィエとの会話はすべてフランス語。アクセントのない流暢なフランス語に、「どこで習ったのですか?」とオリヴィエも感心することしきりだ。
2ヵ月前にグラースを訪ねたばかりのKōki,は、ラボに並ぶ数々のエッセンスにも興味津々。グラースで聞いたアイリスの香りの抽出の話を確認したり、見慣れない原料やエッセンスの名前に質問を投げかけたり。「このままだと全部の香りを試してしまいそうですね」とオリヴィエから冗談が出るほど、熱心なラボ訪問となった。

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4人のスタッフの席が向かい合う、香りのオルガン。ブルーの遮光瓶に入ったエッセンスがアルファベット順に整然と並ぶ。

ラボは、中央に大きな香りのオルガンが鎮座するクリーンな空間。大きなガラス壁から外光が入り、真っ白な壁に、ブルーのボトルが美しく映える。「エッセンスは光を遮るブルーのボトルに入っています。このオルガンは4人用ですから、グラースの工場から届く原料が新鮮な状態で利用できます」とオリヴィエ。「嗅覚は環境に非常に影響されやすいので、ラボのクリーンな環境は重要です」。ここにはシャネルの香り創りに必要な原料が揃っており、その数は600〜700種も! グラースで栽培されるジャスミンやローズ ドゥ メのエッセンスをはじめ、コモロ諸島のイランイランなど、オリヴィエは次々にムエットにエッセンスを取り、N°5 のキーとなる原料をKōki,に紹介。

「N°5 のフローラルアコードには、サンダルウッドやヴァニラの温かなノートが加わっています」(オリヴィエ) 
「どうしてブルーの瓶に入っていないものがあるのですか?」(Kōki,)
「エッセンスに比べ、ワックスに移したコンクリートは劣化しにくいからですよ」
「アイリスのエッセンスは、地中で3年過ごした根をさらに3年間乾燥させて、蒸留して得るものです」(オリヴィエ)
「本当に長い時間がかかるのですね」(Kōki,)
「サンダルウッドは木の中心からエッセンスを抽出します」(オリヴィエ)
――Kōki,の好奇心いっぱいの素直な問いかけに、オリヴィエの説明にも熱が入る。

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グラースのジャスミンやローズ ドゥ メなど、シャネルの香りづくりの重要なエッセンスが並ぶコーナー。

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根や実、葉など、さまざまな原料が並ぶ。ヴェチヴァーのエッセンスは根から。パチュリは葉から抽出される。

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ラボ案内の後、オリヴィエのオフィスに席を移して、今度はじっくりとN°5 とマドモアゼルの物語を聞いた。
「母がN°5 とココ マドモアゼルをつけているので、私にとってN°5 は、いつも家に漂っている、大切で心を落ち着かせてくれる香りです」というKōki,に、オリヴィエはN°5 の物語についてこう語ってくれた。

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香水、オードゥ パルファム、オードゥ トワレット、オー プルミエール、N°5 ローまで。それぞれの時代の調香師によって、N°5 の新しい解釈が生まれてきた。

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左から、シャネル N°5 オードゥ トワレット 50㎖ ¥10,780、同 オードゥ パルファム、同 オー プルミエール、同 ロー オードゥ トワレット(すべてヴァポリザター)各50㎖ 各¥13,200/以上シャネル

「N°5 にはとても豊かな物語があります。発表当時、香水の世界とモードの世界は完全に別のものでした。いっぽうに香水業者があり、他方にモード界があったのですが、ガブリエル・シャネルは、このふたつが結びついていると直感したのです。そして、初めてのクチュリエの香りを誕生させました。ポール・ポワレも香りを発表しましたが、それはロジーヌという名前で、彼自身とは違う名前だった。ガブリエル・シャネルはシャネルの名前で香水を出したのです。ですからN°5 は、まったく新しい意図を持った、まったく新しいタイプの香水。彼女が調香師エルネスト・ボーに依頼したのは、人工的な香水を創ることでした。香水を、ドレスを構築するのと同じように構築したいと望んだのです。つまり、単にバラやジャスミンやスズランの香りを表現するのではなく、もっと複雑な形でした。いまもN°5 が抽象的な香りと言われるのはそのためです。そしてこの複雑さゆえに豊かで、誰もが違った印象を受けるのです。それが、N°5 のミステリアスな魅力。また、N°5 は初めて広告を行った香水のひとつです。1937年にガブリエル・シャネルはこの香りのプロモーションのために自ら写真に登場したんですよ」

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こうして生まれたN°5 は、歴代の専属調香師による4つの解釈、4つのN°5 となって現代に継承されている。オリヴィエは、自身の解釈であるN°5 ローについて、「N°5 のDNAにリンクし、その美意識をコンテンポラリーな形で表現した」と語る。再蒸留してグリーンでフルーティな面を引き出したイランイラン、濃縮したオレンジのエッセンスに秘められた、よりクリアなアルデヒドなど、N°5 の言語で綴ったよりフレッシュな香りは、Kōki,も大のお気に入り。「カジュアルな気分の時に、N°5 ローをつけたいと思います」

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10月19日から、ロンドン、ソウル、香港、上海に続いて、遂に東京で開催される『マドモアゼル プリヴェ』展では、N°5 によってガブリエル・シャネルが築いた香りの世界が、オートクチュール、ダイヤモンドジュエリーの世界と並んでスポットを浴びる。ときに、ワークショップを含みながら、シャネルの素晴らしい世界観を味わえる構成で人々を迎える。
オリヴィエは語る。「展覧会は、ガブリエル・シャネルが表現したさまざまなことに、現代の視点で光を当てるものです。もともと非常に豊かなものであった彼女のビジョンを、解釈し、新しく再生していくことができるか ――新しいクリエイションはこのように原点と共鳴するのです」
インタビューを終えたKōki,は、「とっても楽しかった!」と満面の笑み。
「オリヴィエさんは本当にエレガントで素敵なかた!」とすっかりファンに。実は、フランス語でのインタビューに、「心臓が口から飛び出しそうだったの!」とも明かしてくれた。
春に訪れたグラースでは花の収穫と原料となるエッセンスの抽出を、今回のラボ訪問では、シャネルの香りの象徴であるN°5 の物語と香りのクリエイションの秘密を垣間見て、ますます香りの世界に興味が湧いたそうだ。

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シャネルのデザインコンセプトにあるオリジナルなシンプリシティを、実際に触れて感じるKōki,。

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そして、2019年10月17日。19日から開幕する『マドモアゼル プリヴェ展』の内覧会に訪れたKōki,にもう一度、話を聞いた。

191021-VIP_Koki-2.jpgパリにあるマドモアゼルのアパルトマンをインスピレーション源にしている会場を歩くKōki,。

「7月にお会いしたオリヴィエさんとの会話を思い出して、いまいちばん印象に残っているのは、『フレグランスとは、纏う人ごとに違う香りになるし、女性のすべてを表現するものなのです。彼女の仕草、歩き方や笑い方。そんなことまで表現してくれるものなのです』という言葉です」
シャネルの名香N°5 が、オートクチュールのファッションや、ハイジュエリーとともに展示されている本展覧会。7月のパリのアトリエ訪問でよりいっそうN°5 の知識を深めたKōki,にとって、この展覧会はどんなふうに映ったのか。

「昔からN°5 をつけいていたのですが、ラボを訪れた時に、N°5 を構成するあらゆる原材料や香りの成分があって、N°5 は本当に大きな花束のような香り、と実感しました。オリヴィエさんの香りを表現する言葉は、さまざまな表現が使われていて、そしてロマンティック。調香師という仕事は詩人のようと思ったし、画家という仕事にも似ているように思えました」
『マドモアゼル プリヴェ展』は、シャネルのキーカラーである、白、ベージュ、赤、黒、ゴールドの5つの色に基づいて、シャネルというメゾンの魅力に迫る構成になっている。
「5色のイメージを深めてくれるのが、パリにあるマドモアゼルのアパルトマンからのインスピレーションであることがとても興味深いな、と感じながら展示を見ました。たとえば赤のコーナーならアパルトマンにあった本の背表紙から、白のコーナーはブティックの螺旋階段の鏡からと、ひと色ずつ異なる発想源があることがとてもおもしろかった」

191021-VIP_Koki-3.jpgひとつひとつの展示を、時間をかけてゆっくり眺める。

実際にKōki,は、パリはカンボン通り31番地のシャネルのアパルトマンにも訪れている。
「マドモアゼルの部屋は素晴らしかったです。とにかく個性的で、ディスプレイの仕方もユニークだし、シャンデリアも! ライオンや麦など、ガブリエル・シャネルがデザインのインスピレーションを受けたすべてのモチーフがちりばめられていて……」

最後に、ここを訪れる人々へのメッセージをくれた。
「アパルトマンからさまざまなヒントを得て作られているこの展覧会は、実際にそこを訪れたかのような気分にもさせてくれます。歴史あるブランドのバックグラウンドがわかるように工夫された展示は素晴らしいし、ふだん近くで見ることができないオートクチュールのドレスもあります。シャネルのエッセンスを感じることができる場所なので、ぜひ多くの方に訪れてほしいです」

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『マドモアゼル プリヴェ』展
期間:10/19~12/1 
会場:B&C HALL︲天王洲アイル 東京都品川区東品川2-1-3 
開)11時~20時(最終入場19時30分)
入場無料 
https://mademoiselleprive.chanel.jp

●問い合わせ先:
シャネル カスタマーケア
0120-525-519(フリーダイヤル)

photos : YUJI ONO, texte : MASAE TAKATA(PARIS OFFICE)

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