ダイエットや疲労回復に、信じてはいけない、5つの食事療法とは？

「効果抜群のサプリ」「1週間で5キロ減量」……一見、身体に良さそうな気がしてしまう、おばあちゃんの知恵袋的な口コミ健康法。けれど、中には問題を引き起こすものもあるから要注意。栄養学の専門家ふたりが解説する。

身体に良さそうな、おばあちゃんの知恵袋的な口コミ健康法。なかには問題を引き起こすものもあるから注意したい。photo : Getty Images

奇跡のダイエット法、魔法の食材……SNSや健康食品を取り上げる個人サイトには、短期間でダイエットを成功させる、疲れの出やすい秋にも元気一杯、などと謳ったアドバイスがいっぱい。ただし口コミはフェイクな情報もあっという間に広めてしまう。ときには健康に悪影響を及ぼすものが混じっていることもあるから気をつけたいところ。ふたりの専門家が、巷にあふれる食餌療法の嘘と本当を検証！

レモンジュースで痩せる？

栄養学専門医のローランス・プリュメ（1）は「レモンには一般によく言われる痩身効果はありません」ときっぱり。柑橘類のレモンがビタミンCを豊富に含むのは確かだが、ダイエットに効果はない。レモンがダイエットにいいと言われるのは、レモンの酸性化作用に理由がある。レモンの酸が胃の中で食べ物の分解を助けると思われているからだ。しかし「口の中で酸性だからといって、体内でもそうとは限りません」と、心理栄養士のディミトリ・ジャックは言う。「レモンは酸性ですが、体内に入るとアルカリ性になるからです」。また胃を目覚めさせるために朝起きたらレモンを摂るといい、という説にも根拠はない。ぬるま湯にレモン汁を加えたレモン水を飲んでも、特に消化器官は活性化されない。デトックスレシピの信奉者には残念なニュースだ。

太らないために夜の炭水化物を控える？

「夜に炭水化物を摂ることに害はありませんし、少量を野菜と一緒に摂るなら、体重増加の要因にもなりません」とプリュメは言う。「夕食で避けるべきものは、ソースがかかった料理やアルコール、甘いデザート。寝ている間はカロリーが燃焼されず、過剰に摂取した脂質と糖質が夜間に脂肪に変わるからです。だから夕食は、少量の肉や魚あるいは卵に必ず野菜を添え、あとはパン、乳製品、フルーツ。これで十分です」

炭水化物は悪者、という考えは、ジャックによれば、時代遅れの知識に囚われた「思い込み」。日曜日の夜にサーモンパスタを食べるのが大好きなのに我慢していた人も、これで安心だ。ただし、夕食はあくまでも軽めに。それは、寝ている間はエネルギーが消費されず、寝る前に摂取したカロリーが蓄積されやすいから。19時以降の食事は軽めに、これが穏やかな気持ちで夕食を摂るための秘訣だ。

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野菜ジュースを飲んで痩せる？

特に有名なのはキャベツスープダイエットだが、これこそ健康に害を及ぼす危険のあるダイエット界の不届き者。タンパク質をほとんど摂らないため、食餌療法としてバランスが偏っているだけではない。プリュメによると「ダイエット期間中、過剰な食事制限で栄養が偏り、不健康な痩せ方をするだけでなく、体調も崩しやすくなる。栄養不足になり、脂肪ばかりか筋肉も落ち、メタボリズムが変化してしまいます。“ヨーヨー現象”（減量してはまたもとの体重に戻りリバウンドを繰り返すこと）も招きやすい。そもそも、ほとんどのダイエットは長期的に見ると体重増加に繋がることが多いのです」

液体だけの食事を続けていると、身体は脂肪ではなく筋肉をエネルギー源として使うようになる。「これはメタボリズムにとって重大な変化。肥満の要因になる可能性も」。ダイエットは専門家の指導を受けて食生活を見直し、経過を見ながら行うこと。そして、スポーツも大切だ。確かに忍耐が必要な方法だけれど、その代わり理想体重を長く維持することができるはず。

ティースプーン1杯の酢を飲んで消化促進？

一見害のなさそうなアドバイスだが、実はデリケートな腸内細菌叢を乱してしまう危険が。種類によって差はあるけれど、一般的に、酢は単独で摂取するには酸性成分が多すぎ、そのまま摂ると、膨満感や腹痛の原因になる。消化を良くしたいなら、「食べ物をすぐ飲み込まずに、時間をかけてよく噛むこと」がジャックのアドバイスだ。ジャックは、咀嚼訓練を通して、食べ物との関係を改善し、健康的な食習慣を取り戻すための指導を行っている。「よく味わって食べることは忘れられがちですが、実はとても大切なことなのです」

疲労回復や抜け毛対策はサプリメントで？

魔法のように効くと話題のサプリに走るより、まずは毎日の食生活を見直してみよう。栄養不足を補うには、バランスのいい食事を摂る方がはるかに有効だ。「さらなる健康上の問題を引き起こさないために、噂を鵜呑みにしたり、栄養補助食品をむやみに試さないように」とジャックは話す。「バランスのいい食事を摂ることに時間をかける人が少なくなっていますが、実はこれこそが健康のために最良の方法です。簡単なうえにおいしい、そしてすぐに始められる。誰にでもできる健康法です」とプリュメは言う。

当たり前のことだけれど、奇跡のような方法は存在しない。特に、食のように生命を維持するための基本的な欲求に関しては。自分に適した食餌法を知るには、医療の専門家に相談するに越したことはないというわけだ。

（1）ロランス・プリュメ『食事大全』エロル出版、568ページ
Dr Laurence Plumey « Le grand Livre de l’Alimentation » エロル出版、568ページ