【医師監修】子宮頸がんのワクチン、子どもに受けさせるべき?

Beauty 2021.03.11

婦人科検診はきちんと受けていますか?
マンモグラフィーは受けているけどほかは受けていない、などどこまで検査するべきか悩むところ。ましてや子どもに婦人科にまつわる検診やワクチンを受けさせるべきか、となるとますます悩んでしまいます。
人には聞きづらい&インターネットで調べてもはっきりとはよく分からない……そんな疑問に医師が答えます。今回は、小学校6年生から中学校3年生の間に接種すべきとすすめられている子宮頸がんワクチンについて、国立がん研究センター研究所の医師、増富健吉先生に聞きました。

Q:子宮頸がんのワクチン、子どもに受けさせるべきでしょうか?
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文・増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)

答えは「はい」、受けさせるべきです。その理由を詳しくお話ししようと思います。

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まず、子宮頸がんは「感染症」です。パピローマウイルスというウイルスによる感染症です。「パピローマ」とは「疣(いぼ)」のことで疣の原因ウイルスなのです。疣は「腫瘍:できもの」の1つではありますが、「良性」の腫瘍を指していますので基本的には放置しておいても見た目が悪いこと以外に問題はありません。一方で、「悪性の腫瘍(できもの)」のことを「がん」といいます。この「疣の原因ウイルス」であるパピローマウイルスと一言で言っても、100種類くらいのウイルスが存在します。そのうちの、「たちの悪いウイルス」は、子宮頸部に感染すると子宮頸がんになったり、肛門に感染すると肛門がんになったりします。また、男女問わず外生殖器に感染すると尖圭コンジローマという「疣疾患」の原因や男性だと陰茎がんなどの原因ともなります。

最初に、「子宮頸がんは感染症」という表現をしましたが、そう、子宮頸がんは、パピローマウイルスが子宮頸部に感染することで引き起こされる「がん」なのです。このところ、感染症の話題の中心は、新型コロナウイルスですが、この新型コロナウイルスに対してでも、人類が待ちわびた「ワクチン」がいま世間では大変注目されています。感染症に対する人類の戦い方の中心は、「ワクチン」なのです。人類は、長年の研究により、子宮頸がんの原因が、パピローマウイルスであることを突き止め、その対策として、約10年ほど前にワクチンという強力な武器を手にしたのです。この、「強力な武器」を使わず、子宮頸がんに罹ってしまうのは、なんとなく残念な気がします。それでは、「残念な話」の具体的なことをお話ししましょう。

子宮頸がんのワクチン、日本では、2013年に国がお薬としての使用を認め、「積極的なワクチン接種」を公的資金で無料で受けることができる仕組みを推進しました。しかし、残念ながらその後「ワクチン」による副反応が大きく取りざたされて、直ぐに定期接種が一旦、中止となってしまいました。日本以外の海外での接種率は70%を超えていますが、日本での接種率は0.5%程度にとどまっています。このままでは、積極的に予防接種を受けた場合に比べると、日本の現在13歳から26歳にあたる女性の2万人以上も多くの女性が子宮頸がんに罹患し、5000人以上も多くの女性が子宮頸がんで亡くなるという計算もあるくらいです。また、最近では、接種率の高い国々から、子宮頸がんの高い予防効果を報告する論文が続々と公表されているなか、依然として日本では接種率の低さが世界的にも問題視されています。いまは、再び公費での接種が可能となっていますので、できるだけ、性交渉の前までに受けるようにしてください(15歳までは国が費用を負担してくれます)。例えこの年齢の時期を逃してしまったとしても、そして、自己負担であっても、子どもさんに受けさせてあげるべきです。

「予防可能ながん」ってあまり無いんですよね。感染症が原因だとわかっているからこそできるできる「がん」予防。新型コロナウイルスのワクチンが大注目の昨今ですが、将来の辛い病気の予防のために、子宮頸がんのワクチンも是非受けるようにしましょう。

増富健吉(ますとみ・けんきち) 
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。

photo:istock, texte:KENKICHI MASUTOMI

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