高温多湿な日本の夏、「カビ毒」が体調不良を引き起こす?
Beauty 2021.06.11
桐村里紗
除菌するよりも、環境の中での微生物との共生を提案している私が「これだけは気をつけて!」とお伝えしたいのが、家の中や食品に発生し、健康に悪影響を及ぼすカビの毒「マイコトキシン」です。
あまり耳慣れない名前かもしれませんが、特に高温多湿な梅雨時から夏の日本は、世界的にもカビが発生しやすい環境ですから、とても身近な存在です。
しかしながら、ほとんど認知されておらず、美や健康への意識が高い人でもカビ毒についてはノーマークなのではないでしょうか?
お風呂場など、わかりやすくカビが生えやすい場所の対策はしていても、実は、カビはそれどころではなく身の回りに潜んでいます。
バスルーム以外も、カビ対策してますか? photo:iStock
日本には「麹カビ」など、よいカビを活用した発酵食品もありますが、注意しないと、環境や食品のカビ毒に知らず知らずに侵されて、心身の不調を起こしているかもしれません。
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原因不明の体調不良、カビ毒が原因かも……?
カビ毒「マイコトキシン」とは、カビが産生し、人に健康被害を及ぼす化学物質のこと。
食品には、目に見えるカビが発生することがありますね。
これは、本来目に見えない小さなカビが大量に集まってコロニーを作ることによって、目に見えるようになっているものです。彼らが分泌するカビ毒は、まったく目に見えず、ホコリや空気中、さまざまな食品の中に隠れています。
カビそのものは加熱によって死滅しますが、カビ毒は加熱に強く、いちど汚染されると食品からカビ毒を取り除くことは難しくなります。
そのカビ毒が、原因不明の不調を引き起こしていることも。
● 全身倦怠感・疲労感
● めまい
● 記憶力や集中力の低下
● 抑うつ傾向、不安
● 体温調節の異常や寝汗
● 筋肉痛、関節痛
● 光が眩しい、目のかすみ
● 皮膚の日光過敏
● 消化器の不調
● 肝機能や腎機能の障害
● 咳や息切れ
何気ない症状がほとんどですが、発がん性のリスクも。カビ毒についてまったく気にしたことがない人は、注意してみてください。
原因不明の不調の原因は、もしかして……? photo:iStock
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カビ毒の発生、自宅での要注意ゾーンは?
カビが発生する条件は、高温多湿で高栄養であること。
じめじめするこの季節には、特に家の中にカビが発生しやすくなります。
まず、この辺りにご注意を。
● エアコンのフィルター
● カーテン、ファブリック
● カーペットのゴミやホコリ
● 湿った布団
● 家具や押し入れの中
● 浴室、脱衣所
● 洗濯機
これらは、いずれも湿気がたまりやすく、カビの栄養分となるゴミやホコリ、垢や汗なども豊富な場所です。
水が淀み、風通しが悪い、停滞した場所には、健康を害するカビが生えやすくなります。要するにフローがなく「心地悪い」と感じる環境は、人の心身を害します。
一方で、常にフローのある心地よい住環境は、人の心身を癒やします。
住まいの居心地を保つことは、ヘルスケアにとっても大切ですよ。
次回は、食品に含まれるカビ毒と解毒の方法についてお伝えします。
コーヒーなどの加工品や穀物など、気づかずにカビ毒を摂取していることも……!?
text:RISA KIRIMURA
桐村里紗
医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「四則和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
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