匂いを想像しながら読む至福、『透明な夜の香り』。

フィガロジャポン8月号の「エディターが恋した、パリの本。」で、編集SKは2冊のうちの1冊をパトリック・ジュースキントの『香水』(文藝春秋刊)で紹介しています。18世紀のパリの街の汚臭に始まり、蒸留される植物、人の髪や肌の匂い……。生々しくグロテスクなミステリーですが、世界的なベストセラー。香りの不思議を感じます。

同号で100年美容を執筆していただいた佐々木奈歩さんと、そんな香りの四方山話をしている時に、「最近の本なら、これ! すごくいいの」とオススメされたのがこちら。

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『透明な夜の香り』千早茜著 集英社刊 ¥1,650

古い洋館に住む、調香師の小川朔がオーダメイドでつくる香りの数々に想像をかきたてられます。嗅覚と記憶にまつわるミステリアスなストーリーなのだけれど、その合間合間にちりばめられる匂いの要素が、どのページからもふわりと香ってくるよう。

そして、この洋館を取り囲む畑から料理するたびに摘み取られるハーブの数々と、それを使ったレシピがおいしそうで……。もっとも簡単な、料理とはいえないものですが、さっそく真似してみたりして。

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そのサロンでバイトを始めた主人公、一香が毎朝用意するのが、レモンバーム(写真)やレモングラスなどとレモン(小説では輪切り)を入れたハーブウォーター。

朔も一香も、何も匂わないような透明な人で(一香は朔のことを紺色と表現しているけど)、その周りにいる人たちが、タバコや土やお菓子など、対照的に強い匂いを放つように感じるのもおもしろいです。読んでいる途中で、私の体臭はどうなんだろうか?とちょっと気になったりもします。香り好きなら絶対読むべし、の本当に素敵な本でした。

そして、読み終わったあと、MICHIRUさんのご自宅取材で試させていただいた、アブラクサスの新月の香りを急に思い出しました。シンと冷たく、水のように透き通る感じが、タイトルの“透明な夜の香り”に合っていたからかも。 

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Moon Eau Collectionという4つのオーデトワレ。左から、Oblivion(新月)、Dazzling Ray(上弦の月)、Totally Force(満月)、Silent Shade(下弦の月) 各30㎖ 各¥9,680/以上アブラクサス

新月の香りの構成を確かめると、めずらしい青山椒を入れたトップから、ジュニパーにスズランやシクラメンのミドル、ラストはフランキンセンスやホワイトムスクへと移ろう、まさに感じた通りの“アイシーペアレント”という香調でした。

あらためて4つのコレクションを試したら、自分の生まれた上弦の月の明るい香りも、まろやかな満月の香りも、浄化されるような下弦の月の香りもそれぞれが魅力的。そして、やっぱりどこか透明でミステリアス。

はからずも7/21は蟹座の新月。ここを起点に月の満ち欠けに合わせて付け替えてみたくなりました。

●問い合わせ先:
アブラクサス
https://ablxs-fragrance.com/?p=4188

※この記事に記載している価格は、標準税率10%の税込価格です。

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