
タジンと、コニャック=ジェイ美術館。
これだけパリに住んでいても、まだ行ったことのない美術館がいくつもある。
そのひとつにコニャック=ジェイ美術館があった。
これまで訪れる機会はなかったけれど、メトロの通路で、興味深い企画展のポスターを目にし、行ってみたいと思った。
場所はマレ地区、ピカソ美術館からほど近い。
しばらく顔を見に行っていないモロッコ料理店、ル・タジンのマリー=ジョゼに会いに行こうと、タジンを食べてから美術館へ向かうことにした。
今回初めてひとりで食事に行くと、いつもと変わらず店主のマリー=ジョゼは、懐の温かいお母さん、という形容がぴったりな抱擁で迎えてくれた。
この店のメニューの字体が好きで、開くたびに、いいなぁと思う。
この日もじっくり見ていたら、“そういえばこのタジン、食べたことないかも”と思う一皿があった。
ベルベル人の仔羊と野菜のタジン。
前菜は取らずに、タジンだけ食べることにした。
のだけれど、注文を受けたマリー=ジョゼは、これ食べて待っててね、とナスのピュレを出してくれた。
実家に帰ったような心持ちになりながら、ナスのピュレをいただく。
ずっとスタッフとして働いていたムッシュの姿がこの日はなかった。
聞けば定年退職したそう。
少し寂しさを覚えながら、運ばれてきた湯気の立つ野菜たっぷりのタジンを食べた。
身体も温まって美術館に歩いて向かう。
うっかりすると見過ごしてしまう控えめな佇まい。
催されていたのは、『18世紀パリのメルシエ商会』。18世紀のパリで、芸術やモードなどラグジュアリー文化の発展に大きく寄与したメルシエ商会のアーカイブを展示した企画展。
家具やシャンデリアなどの商品のデッサン、王家のために作られた食器、受注票、当時のメルシエ商会の様子を描いた絵など、マリー=アントワネットの世界のようで、見入ってしまうものがたくさんあった。
私は大学時代の専攻が日本文化で、2年か3年のときに古文書学演習というゼミを取っていた。
授業では、武士が土地のやりとりをするときに交わした文書を解読する。
展示品の中に、デュ・バリー伯爵夫人の注文が記された文書がありワクワクした。
好きなのだ、こういう歴史を垣間見る文書。
おまけに、昔の筆記はたいてい美しい。
そしてやっぱりフランスの歴史を勉強したくなる。
今年こそは、フランス史の本を読もう。
*お知らせ*
今週末、1月19日と20日に、『日曜日はプーレ・ロティ』刊行記念イベント第2弾を開催します。
原宿のeatripにお邪魔して、フランスのブロカントで見つけた花瓶にも使えるピッチャーや、普段使いしたいお皿、そして本も販売する予定です。
月に1度、週末限定でオープンするeatrip morningでは、私が持ち帰ってきた食材や調味料を使ってパリをイメージした朝ごはんを野村友里さん率いるeatripの方たちが用意されます。
“パリの朝ごはんとブロカント”
1/19(土)、20(日)
eatrip morning
8:00~9:30L.O.
ブロカント
8:30~19:00
*eatrip、昼と夜の営業は通常どおりです。
*レストラン併設のフラワーショップ“the Little Shop of Flowers”のほうに、私は終日おります。
@eatripjournalと@thelittleshopofflowersに素敵な告知がアップされています。
お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
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