パリ街歩き、おいしい寄り道。

パリからの旅・アルザス日記。#1

11月にメス(Metz)で開催された大蚤の市で、とても状態のよいサルグミンヌの皿を見つけたのだが、すでにかなりの荷物で持ち帰ることのできない状態だった。
それで半分だけ支払いを済ませ、取りに来られるまで預かってもらうことにしていた。
やっと取りに向かったのは先週。
せっかくだからいろいろと寄り道することにした。

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8時13分にパリ・東駅発の電車で9時44分にメスに到着。ちょうど駅舎の背に朝日が当たっていた。

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駅にはコインロッカーがない。
でも案内所で聞いてみたら、すぐ近くにあるtabacにロッカーがあって預かってくれるという。
行ってみると、tabacの看板はあってタバコも売っているけれどカフェではなくて文房具屋さんだった。
荷物を預け、お散歩へ。
黄色いトーンの道に、窓枠の形が可愛い建物を見つけた。

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前回来たときには時間がなくて訪問できなかったカテドラルへ。

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その横にある常設のマルシェも前回逃していた。
ので、入ってみる。

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地元産のチーズが並ぶ。アルザスといえばマンステール、と思っていたが、このフロマージュリーにはブリーがたくさん。

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なんとこちらのお肉屋さんは、牛、豚、仔羊、仔牛、そして牛と豚の合挽きまで勢揃いしていた。牛と豚の合挽きは、フランスで初めて見た。やはりファルス(詰め物)料理が多いからだろうか。

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そしてチーズケーキがいっぱい。平日の朝でマルシェ内は閑散としていたけれど、これだけ並んでいるということは、きっと買いに来る人がいるのだよなぁ。

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コの字型のマルシェを抜けてカテドラルへ。外から見る以上にずっと立派で美しい。

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天井にフレスコ画がない分、ステンドグラスが映えている。

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光の加減によって床に映し出される色と影が綺麗だった。

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繊細さと力強さが相まった印象。

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高い天井まで続く窓を見ていると、反対側のステンドグラスの色が反射して、揺れ動く様子にいつまでも見ていた。ステンドグラスの総面積は6500平米分もあるそうだ。

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そして高さは42m。本当に光の移り変わりが美しかった。

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カテドラル脇の観光案内所で地図をもらい、アルザス料理を食べられる店を教えてもらった。行ってみると、朝通ったときに“ここはイマイチかなぁ”と内心思っていたところだった。でも中を覗くと、奥まで広く、結構な賑わいだ。旅先では観光客を目当てにしたような典型的な店に入るのも楽しくて好きだ。「いいかもね」と友人と言い合って、ランチを食べることにした。料理だけではなく、グラスで頼めるワインもアルザスが中心。ピノ・グリやゲヴュルツトラミネールなど5種類あって、アルザスならではの脚がグリーンのグラスで出てきた。

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オーダーした料理はフラムンキューシュ。アルザス版ピザのようなもの。昔、コルマールとストラスブールの間にある専門店に夕食に行ったら、地元の人たちが、何枚も何枚も、ビールを片手にフラムンキューシュを食べ続けていた。ブルターニュでは、シードルをお供にそば粉のガレットを何枚も食べるので驚くけれど、アルザスではそれがビールとフラムンキューシュになる。

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生地は薄いが大きいので1枚食べたらおなかいっぱいになった。
駅の反対側にあるポンピドゥーセンターへ向かう。

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タイミングよく前日にリ・ウファン展が始まっていた。この展覧会も観られる!と思って、メス再訪の日程をフィックスしたのだ。

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天井までもが作品にぴったりな気がした。

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この間隔を決めるのに、どれくらいかかるのだろうなぁ。

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砂に埋められた作品の次の展示室に先に行った友人が戻ってきて言った。「この部屋の作品から色が繋がってるよ」

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「ほら、縁にほんの少しだけ見えるブルーが次の部屋にあるの」。ほんとだ〜!と子どものようにうれしくなって、ふたつの部屋を行ったり来たりした。

16時に駅で、ブロカント屋のムッシュと待ち合わせをしていた。無事、お皿25枚を受け取り、荷造りをして、17時のTGVに乗って、コルマールへ。

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翌日は雨の予報だったから、日が完全に沈む前に、と駅からホテルまで歩いて向かい、チェックインして“ちょっとお散歩しよう”と外に出たら、雨がしとしと降り始めた。そして驚いたことに、19時すぎで、開いている飲食店はほぼなかった(2軒だけ見つけた)。「風邪ひいちゃうね」とホテルで食事をすることにして、急ぎ足で帰った。

ラ・メゾン・デ・テットLa Maison des Têtesというレストランもある宿を予約していてよかった。メニューにはアルザス料理もあり、テーブルの間隔もたっぷりしていて、暖かい色の明かりに、すでにおいしそうな気がした。
プレッツェルの佇まいにも惹かれた。

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「ひと皿で、しっかりした食事になるので、前菜は必要ないですよ」と言われ、メインだけ、アルザス料理を2品注文した。牛・豚・仔羊肉とジャガイモの煮込み料理ベクオフ(bäckeoffe)と、シュークルート。

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ベクオフはたしかにすごいボリュームだったが、味はとても優しかった。お肉がたっぷりなのに、するする食べられた。

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シュークルートもしかり。途中で飽きちゃうかなぁと少し不安だったのだが、飽きなかった。日本からの友人も「お野菜食べやすい!」とパクパク食べていた。これまで、シュークルートを完食できた記憶はなかった。ちょっと食べたいとは思うのだけれど、最後に飽きてしまう。そしてしょっぱいことが多い。実は、こんなに優しい味だったのかぁ。これ食べ比べたらおいしいのとそうじゃないのがあるんだきっと、と楽しくなってきた。

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早起きして疲れていたはずなのに、おしゃべりが終わらなくて、いつのまにか最後のお客になっていた。

続く。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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