パリ街歩き、おいしい寄り道。

パリからの旅・アルザス日記。#3

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前日到着したときにはすでに日が暮れかけていてうまく宿の全貌写真が撮れなかったのだが、今回予約したHôtel Cour du Corbeauは、趣のある心踊る姿をしていた。
表通りから中庭を通って奥まったところに建物があるから、とても静か。
通りに出ると、前にイール川が流れている。
橋を渡ってすぐのところで開催される、地元の生産者だけが出店するマルシェへ。

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マルシェの手前、川側に、これまた地元の生産物を扱う食材店La Nouvelle Douaneがある。
ワインやチーズに生鮮品が売られる中で、面白いのがマスタード。
中辛、マイルドと辛さの違いがあるだけでなく、リースリング風味、ビール風味と、パリでは見たことのない、いかにもアルザスを感じさせるものも並んでいる。

ホースラディッシュと記されたものは、マスタードに混ぜ込んであるのだろうか。
気になる……

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この食材店に平行するようにファーマーズマーケットが出ていて、前回、もみの木のハチミツを買った生産者さんのスタンドへまず向かった。
すると、この日持ってきていたもみの木のハチミツはすでに売り切れ。
前回は朝一の電車でパリから来て、9時過ぎにはもうマルシェにいたのだが、この日はホテルで少しゆったりし過ぎた。出遅れた〜。
ムッシュの家の裏にある栗の木から取れたハチミツを勧められ、「でも栗(のハチミツ)はクセが強いから……」と躊躇していたら味見させてくれた。
このムッシュのはそれほどクセがない。
「栗も喉にいいよ」と言うので買うことにした。

次は、マダムに教えてもらったプレッツェル屋さんに。

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さまざまなシードのついた手作り感あふれるプレッツェルが売られていた。
店の人は“bien cuit (よく焼けたの) ?”と好みの焼き加減をお客さんに聞き、焼き色を見て渡している。
迷った末、カボチャの種とクミンがついたものを買ってみる。

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プレッツェル屋さんの向かいに、チーズやソーセージを売るスタンドがあり、前回ここで買ったcarré des Vosgesというチーズがとてもおいしかった。
このスタンドは人気で、大抵の人がプレッツェルをいくつか手に取り、列をなしている。
ここでもプレッツェルをひとつ、そしてcarré des Vosgesを買った。

プレッツェルは、最初に買ったところのは生地がしっかりしていて、アペリティフのお供によさそうだ。
後から買った方は、もちっとしている。おいしい。
プレッツェルってベーグルときっと兄弟だよなぁと感じる。
形が凝っている分、プレッツェルのほうが宗教行事などの特別な機会に作られたもので、それがシンプルな形になって大衆化した、とかじゃないかなぁ。
プレッツェルが兄な気がするなぁと、食べながら勝手な想像をした。

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アルザスで収穫したハチミツを扱うスタンドがまたあった。
作り手さんによって味が違うから、ここのも試してみよう、と買い逃してしまったもみの木の蜂蜜を買う。

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結構な列ができているスタンドに目をやると、“鴨とガチョウと家禽”と看板に書かれていた。
鶏じゃなくて、まず鴨とガチョウとあることにものすごく興味が湧いたけれど、さすがに生肉をTGVで持ち帰るのは憚られた。
ちょっとしたポイントで、“パリでこんなの見たことないなぁ”と目を奪われるものがそこかしこにある。

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このマルシェが延長するような感じで、ブロカントが出ている。
どちらも毎週土曜開催。
メスからストラスブールを通過して先にコルマールに行ったのは、金曜はコルマールでブロカントがあって、ストラスブールは土曜というスケジュールをどちらも楽しみたかったから。
500gのハチミツを何瓶かと、プレッツェルにチーズを抱えたままだとゆっくり見られない、と思い、一度ホテルに荷物を置きに戻ることにした。

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ついでにチェックアウトも済ませ再出発。
さっきとは逆の方向に行く。
ホテル入り口の並びにあったレストランが前夜とても賑わっていた。
次回、入ってみたいと思いながらメニューを眺める。

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1ブロックほど行った川の向かい側に観光船の乗り場があった。
乗り場の向こうにもテントが見えて、ここまでブロカントが出ているらしい。

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橋を渡る手前に、可愛いチョコレート屋さん。このエリア、好きだなぁ。

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橋を渡ったところからの景色も、色合いがとても好み。

ホテルで街の地図をもらった時に、「“プティット・フランス”というエリアも綺麗で、訪れるといいですよ」と教えてもらった。
私は紙の地図が好きで、どこに行ってももらう。
スマホも便利で使うけれど、街の全体図も見たくて紙の地図も併用する。

ブロカントをもう一度見て、お皿を5枚だけ買った。

いざ街歩きへ。

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メスの街は黄色っぽかったけれど、ストラスブールはピンクが目につく。
なんだか、アポロチョコが食べたくなった。

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と思っていたところに、緑の枠が印象的なアンティーク屋さん。
緑の加減が、パリのように強くなくて、可愛らしい。

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いわゆる観光名所らしいところに到着。
教えてもらったプティット・フランス。
あまりにもザ・写真スポット的な街並みに、途端に“あ〜おなかいっぱいだ”と感じて、少し歩いてみたけれどすぐに引き返す。

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カテドラルへの広場へと続く商店街を歩き始めると、店先に陳列台を出した本屋さんがあった。
シリーズで3冊が並んだ中に、「家庭料理」がテーマの1冊が気になって手に取ってみる。
おばあちゃんの知恵袋的なことが買いてあって面白い。
全部がクイズ方式の絵本で、薄くて軽い。値段も下げられている。
家事バージョンの1冊も見始めたら、へぇ〜の連続。
帰りのTGVで読むのによいかも、と思い、買うことにした。

レジに持っていくと「これ、私も買おうと思ってたのよ。まだあるかしら?」と窓の外を見るようにして店のマダムに聞かれた。
「あと1冊ずつありましたよ。面白いですね、このシリーズ。クイズになってて飽きなさそう」
と言うと、そうそう、と楽しそうに頷いた。
そして朝行ったマルシェのことなどちょっとおしゃべりを楽しんだ。

店を出て、入ってきたのとは逆の方向に行こうとすると、もうひとつ出されていた陳列台に、アルザス料理の絵本と、アルザス料理辞典があった。
今朝買い足したハチミツと、そもそもメスで受け取った25枚のお皿が頭をよぎると同時に、いくつもの風味のマスタードが並んだ棚も脳裏に浮かんだ。
アルザス料理、すごく面白そうなんだよなぁ……ぱらぱらとめくると、またもや、へぇぇと思うことがいくつも出てきた。
重くなるのは覚悟で、また2冊を手に、店内へ戻る。

ドアを開けると、接客していたマダムが“あらっ!”という表情を一瞬してから「re-bonjour!!」
と笑顔で新たに迎えてくれた。
彼女の感じのよさに、支払いをしながら、ランチにシュークルートを食べたくてアルザス料理の店に行きたいと考えているのだけれど、アルザス料理を食べに行くときはいつもどこに行きますか?と聞いてみた。
すると、「このすぐ近くに小さな店があって、そこが私はいちばんだと思うけど、あそこは絶対に予約しないと入れないのと、だいたい名前がわからないわ……」と言ってから「でも、シュークルートだったら、あなたが今朝行ったっていうマルシェの近くに名店があるわよ」と1軒教えてくれた。
Zuem Strisselという老舗で観光客も多いが、アルザスの人たちにも評判がよく、地元客が「シュークルートだったらあそこ」と通う店なのだという。
ホテルにも近いし、ちょうどいい。
最後には、近所のオススメの店の名前も思い出してくれ、結局2軒教えてもらった。

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レストランまでの道中にカテドラルが位置していたので、訪問。
土曜日はいつも観光客が多いらしい。
ドイツ語もたくさん。

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シンプルにシュークルートだけをオーダーした。着いた時には満席だったが、ランチタイムの終わりに滑り込んだので、少しずつ静かになっていった。
ここのシュークルートは、前日、前々日とまた違った。
キャベツの千切り具合がまず微妙に違う。
初日に食べたものは、もう少し古漬けっぽくて、かつ、爽やかだった。
発酵が進んでいる印象だ。
ここのはもう少し鮮度がよい感じ。
まさにお漬物とかキムチみたいだ。
そしてこの店ではマスタードが出てこなくて、ホースラディッシュだった。
3日連続で食べて、飽きなかった。
シュークルートにはまりそうだ。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

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