パリ街歩き、おいしい寄り道。

パリからの旅・エクサンプロヴァンス滞在記。#2

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2日目。
朝から快晴。
セザンヌの像が立つ広場には “ロトンド”と名のついた大きな噴水がある。
たくさんのバスが発着し、観光案内所もあるこの広場に面し、全面ガラス張りのアップルストアが建っているのを見つけ、前日到着したときにとても驚いた。
そして、前回訪れてからの時の経過を実感した。
翌朝セザンヌのアトリエに行きたかったので、観光案内所に寄り、予約をした。

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午後2時に約束があった。
それで、午前中は、お昼を食べる場所を探しつつ街歩きをすることにした。
光と影のコントラストが本当に強い。

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翌朝マルシェが出る広場を見に市庁舎のある方へ向かうと、テラス席で埋まっている小さな広場にも、光が降り注いでいる。

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小さな噴水と少女と光と影と。

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私は初めて入るお店にとても慎重だ。
ストン、とくるものがあれば迷わずにすぐに入る。
でもそれがなかなかこないと、ずっと歩き回る。
人との出会いと同じ感じで、ちょっと人見知りをするのと似ている。
だから知らない街に行くと、初日は食べそびれて終わることも少なくない。
おかげで翌朝はものすごくお腹がすいている。
この日もかなり空腹だったのに、目星をつけたお店はすでに予約でいっぱいで入れなかった。
そこから相当にさまよい、結局、屋内の席に観光客よりも地元の人が多そうだったメインストリートにあるカフェに入った。

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そのカフェのテラス席では高校生たちがホットドッグやパニーニを頬張っていた。
それを横目に、きっとここは安いのだな、と思いながらメニューを見ると、ソーセージとフリットなどの軽食が数多く揃っていた。
おいしいかおいしくないかは別にして、こういう、この地で育った人たちが「ほんと、昔、あそこでよく食べていたよね」というような“ここで育っていたら通過する場所”とでもいうべきお店が大好きだ。
地元の人の心の中に、地元の風景のひとつとしてあるような店。
私の勝手な妄想にすぎないかもしれないけれど、このカフェはそんな場所な気がした。
注文したタルタルステーキもポテトも普通だった。
アジアっぽい味付けだとか、コルネ型に丸めた新聞紙にフリット(フライドポテト)が入ってるような小洒落た盛り付けとかではなくて、よかった。

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土曜の朝、ロトンドの噴水の周辺にマルシェとちょっとしたブロカントが出るというのでこの広場からいちばん近いホテルを予約していた。
初日に泊まったホテルも広場にほぼ面している立地だったのだが、この夜予約していたHôtel de Franceは旧市街側に位置し、街歩きにより出やすいと思ったのだ。
前日、場所を確認したときに“そうか、この最も人の流れがありそうな繁華街に面していたか……”と騒音を心配した。
が、実際部屋に通されると二重窓で騒音対策は万全だったし、窓を開けても“賑わってるな“と感じるくらいでそこまでうるさくはなかった。
入り口はビジネスホテルのようで雰囲気は何もないものの、便利だったし、部屋は清潔だし、バスタブも大きくてアメニティもニュクスだったからよかったのだけれど、ただ、机がなかった。
まぁ、書き物はカフェに行ってすればよいとしても、エクスでのホテル探しは、今後の課題だなぁ。

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取材で知り合ったあるレストランオーナーに「エクスに行くならぜひChâteau La Costeを訪れるといいよ」と言われた。
すぐに検索してみると、以前、フランスにある安藤忠雄作品を調べたときに、見つけたところだった。
ワイン畑もある広大な敷地の中に、数々の建築家やアーティストのインスタレーションや作品が点在しているという。
中心となる棟、アートセンターが安藤忠雄建築で、ほかにもいくつか彼の作品があった。
一般に公開はされているのだが、でも街からは16km離れていて、公共の交通機関は通っていない。
私が完全なるペーパードライバーであることを伝えると、その場所をよく知る友人がいるから迎えにきてもらえばいい、と言う。
はじめ遠慮していたのだが、あれよあれよとオーガナイズしてくれ、行くことになった。
車で30分弱で到着すると、ワイン畑と安藤忠雄建築に迎えられた。

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アートセンターを出るとまず、カルダーの作品『Small Crinkly』。

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少し歩いたところに、フランク・ゲーリーによるミュージックパビリオン。野外コンサートがここで開かれるそうだ。

敷地内には32の作品群が点在している。全部を歩いて見て回ると2時間半かかるらしい。

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安藤忠雄をはじめいくつかのインスタレーションを見て登ったところに28室のスイートのみを擁したホテル、ヴィラ・ラ・コストがある。
景色も存分に楽しめるよう窓に囲まれたモダンなレストランは、宿泊客でなくとも利用できるとのこと。

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通常、宿泊客しか入れないというヴィラも案内してもらった。
入り口のドアがかっこいい。
そしてこのドアの向こうがまたインパクト大。

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フランス人アーティスト、JRの作品。
ヨーロッパ写真美術館で同じテーマの作品を観たけれど、インパクトはここの作品のほうが強い。

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館内のプレイルームにはレジェの作品が壁にかかっている。

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階段の途中には、安藤忠雄作品の写真がかけられていた。

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ロビーのようなフロアに着くと、目の前に景色が開ける。

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来たのとは別の扉から外にでて、スイートの並ぶ通路を抜け、敷地内に残る作品を見に出かけた。

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安藤忠雄作のチャペルを観にけっこう上まで上り、

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板茂のインスタレーション『コモレビ』を通ってから、敷地内の端っこにある、ソフィー・カルの作品を観るために歩き続けた。

ソフィー・カルらしい、心にずどん、と重石が落ちるような文言の施された作品『Dead End』を観て(写真は撮らずに終わった)

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リ・ウーファンの『House of Air』で窓に写り込んだ風景の美しさを見てから、アートセンターへの道を下った。
その途中にも、作品は点在し、また製作過程にあるものもいくつかあった。

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アートセンター前にはルイーズ・ブルジョワによる巨大な蜘蛛『Crouching Spider』が。
胴体は重そうなのに、どうやってあの細い足で支えているのだろうなぁ。

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たっぷりと2時間半、軽くハイキングをしながら作品を観て回る感じで、南仏のワイン畑の空気とアートを堪能して街に戻った。

ホテルのすぐ近くにある販売カウンターだけのテイクアウト専門のピザ屋さんが、何度見ても並んでいる人たちがいて、とても気になっていた。
エクスでいちばんポピュラーな食べ物は、と尋ねたら「ピザだね」と件のレストランオーナーから聞いてはいたのだが、本当に、ピザ屋さんがたくさんあって、箱を何枚も重ねて持ち帰る人の姿をよく見かけた。
そして切り売りもしている。
食べてみたかったから、トマトとマッシュルームのピザを切り売りで1枚買ってみた。
あらかじめすでに下焼きしてあるものを、もう一度焼いて渡してくれて、アツアツだ。
片手で持つには大きくて、置ける場所もなかったから写真は撮らずに食べることにした。
ピザはいつも控えているもののひとつで、だから、こんなふうに切り売りで買えて、小腹を満たすだけ食べられるのはすごくうれしかった。
それに、明日もまた買っちゃおうかな、と思うくらい、なかなかのおいしさだったのだ。
食べ歩きながら、噴水のある小道を散歩し、日が完全に落ちる前にホテルに戻った。
何日も続いていた寝不足と、昼間のハイキングの疲れがお風呂に入ったら一気にやってきて、9時過ぎにはベッドに入り、翌朝6時半近くまで熟睡した。

続く。

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