パリ街歩き、おいしい寄り道。

パリからの旅・エクサンプロヴァンス滞在記。#3

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最終日はマルシェが目当ての半日。
早起きをして8時半には広場に向かう。
またもや快晴。でもエクサンプロヴァンスは朝夕の気温が低く、天気はよくともまだ寒かった。
8時半のマルシェはまだ人がまばら。

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広場をくるっと見渡すと、食品を扱ったスタンドが並ぶ向こう側に、テーブルクロスを売る店が見えた。行ってみると、前には生活雑貨のスタンドがあり、こちらは日用品コーナーらしい。

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見て回るとカゴのスタンドが3つ。
どこもまだ商品を並べている段階で準備中だったのだが、中に1軒、これはまずい〜いくつも欲しい〜と思う店があった。

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留守にしていた店主の女性が戻ってくると、「これは全部ブルキナファソで作ってるのよ。全部ハンドメイドよ」と教えてくれた。
これも欲しいしあれも欲しいし、でも今日TGVで帰るからそんなには買えない……と言ったら、「あなたまだホテルはチェックアウトしてない? だったらバスルームでこうやって水をかければいいの。そうすれば柔らかくなって折りたためるから簡単に持って帰れるわよ。私もこうやってブルキナから持ってきてるのよ、全部」と、近くにあったカゴを手に持ち、ばしゃばしゃ水をかけて見せてくれた。
ブルキナファソをブルキナって略すのかぁと初めて聞いた略語になんだか新鮮な驚きを感じつつ、カゴを物色。

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どうにか4つにまで絞り込んだ。
ひとつ35ユーロという。
なんなら4つ欲しいくらいの気分だったが、どうにかふたつまで絞った。
買ったのは、ナチュラルな色のものと、緑とオレンジが編み込まれた手前のふたつ。

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カゴはあとで取りにくる、と伝え、支払いだけ済ませて預かっていてもらい、食品のスタンドが並ぶ一角に戻る。
いきなりトリッパ屋さんがあった。
前日に会ったマダムに、プロヴァンスの郷土料理を聞いたら、pieds et paquets(羊・仔羊の臓物と羊の脚を白ワインとトマトで煮込んだもの)と、aïoli(おろしにんにくを入れて作るオリーブオイルベースのマヨネーズ)と教えてくれた。
加えて、「でもpieds et paquetsはレストランにはないわよ。お惣菜屋さんかマルシェに出る専門の店で買うもの」と言っていたのだ。
あったよ、本当に。
おまけに、エクス風トリッパっていうのもある。
どうしよう……持って帰れるだろうか。
店のムッシュに、パリまでTGVで持ち帰るのは無理がないかと尋ねると、私の横にいた地元の人らしいマダムも一緒に「だ〜いじょうぶよ〜」という。
じゃあまたお昼ごろ、買いに戻ってきます!と伝えて、ほかの店を見に。

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テイクアウトのアイオリを売るお店を発見。

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イカのファルシなんてパリじゃ売っていない。
やっぱり面白いなぁ、地方のマルシェ。

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ジャム瓶も、プロヴァンスらしい布をかぶっている。

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日用品が売っている一角とは反対側にブロカントが少しだけ出ているのを見つけた。

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デッドストックの布巾を数枚購入。

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噴水広場から伸びるメインストリート、cours Mirabeauにはずらっと衣料品のスタンドが出ていた。「意外に、よいドレスもあったりするのよ」と、前日、件のマダムから聞いていたから、覗いてみると……

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たしかにヴァカンス中にリゾートで着るのによいかも〜と思うロングのワンピースが。
この日に帰るのでなければ買ってしまいそうだったが、今回はワンピよりもトリッパを優先しよう、と決めた。

ハチミツなども買ったので、カゴを取りに行ってからいったんホテルに戻り、荷作りをしてチェックアウト。
マルシェが出ているのとは噴水の反対側にある停留所からバスに乗り、11時に予約していたセザンヌのアトリエに向かった。

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前に一度だけ撮影で訪れたことのあるセザンヌのアトリエ。
また来たかったのだ。
やっと、再訪!

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のどかな空気と惜しみない光が変わらずにあった。

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この窓のあるこの空間を何度思い出したことか……

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やっぱりいいなぁ。

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庭側からの光の強さと、その光から隠れるように掛けられたコートに帽子。

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写真には入れないように撮ったけれど、実はこのテーブルの手前にロープが張られていた。
以前来たときにはなかったものだ。
見学のシステムも変わっていて、アトリエ室内に受付のコーナーが設けられていた。

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階段から外に見える光の美しさに、光を思いっきり浴びたい気になった。
1階の売店で鉛筆を買った。
私は美術館のグッズを売るショップで鉛筆をよく買う。

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花のアーチをくぐって庭散策。
この白い花がとてもよい香りで、ジャスミンではないけれど少しジャスミンみたいだった。
売店で何の花か聞いてみたら、誰も知らず、でもジャスミンじゃないってことだけは、そこにいた数人みんなが確信していた。

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ロトンドの噴水は街の南側にある。
でも北側にはアトリエから歩いて行けた記憶があった。
売店で聞くと、10分ほどというので、歩くことにした。
ほぼずっと下り坂で、10分かからずに、市庁舎広場に通ずる道に入った。
途中の広場で、ドアを開け放した美しい教会があったので、入ってみる。

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光がきれいで空気の柔らかい教会だった。

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オルガンも立派。

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とても大きな聖堂で、中世のような柱の何本も立つ空間があり、

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その奥にきれいなブルーが印象的な壁画が描かれていた。

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教会の中から外を見ると、真っ青な空と光が待ち受けている。

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光と影のコントラストがくっきりな広場のカフェ。

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レトロな店構えのパティスリーを見つけた。
この色の少なさが魅力的。

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オレンジとレモンの香りが付いた揚げ菓子を買うことにした。
そしてお菓子は、薄くて軽くて甘さも控えめで素朴なおいしさにポキポキ折ってどんどん食べてしまい、しゅわしゅわした飲み物が欲しくなった。

店内は、外から見る以上にレトロだった。

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お菓子屋さんを出て右に行ったところの広場はどうも花市のようだ。

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その次の広場には、野菜のマルシェが出ていた。
前日通りかかったときとは出店しているスタンドが異なり、この日はどこも生産者のスタンドだった。

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パン屋さんでも見かけていたgibassiéという平たいパンの専門店があった。

もともとはクリスマス用のものだった、エクサンプロヴァンス周辺の伝統パンだという。
いまは、祝い事のときだけでなく年中売られているそうだ。
オリーブオイルとオレンジの皮のすりおろしが入っているものを買った。

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もうすでに12時になっていたので、急いで朝行ったマルシェに戻り、pieds et paquetsとエクサンプロヴァンス風トリッパを買う。

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そして、前日教えてもらった、プロヴァンスの家庭料理的なものが食べられる店、Fanny’sに向かう。

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人の往来が少ない通りにテラス席が出ていた。

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この日の料理は、干し鱈のアイオリと、プロヴァンス風赤ワイン煮込み。
食べてみたかったアイオリにした。

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干し鱈でも、塩気は十分に抜いてあり、そしてふっくらしていた。
アイオリも思っていたよりニンニクの入り方は控えめ。
とても食べやすかった。

電車の時間が気になり、デザートは取らずに退散。
ここはまたエクスを訪れるときに、食事に行きたい。

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実はデザートを取らなかった理由はもうひとつあった。
ホテルのすぐ近くにあったテイクアウト専門のカウンターピザ屋さん。
ここのメニューに、デザートピザがあり、それには®マークがついていた。
何かというと、ヌテラ・ピザ。
とてもとても食べてみたかった。
けれど、結局、荷物が多すぎに加え、時間もぎりぎりで断念。
これには後ろ髪をひかれた。
でもおかげで次回の楽しみができた。

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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