オ・バビロンと、マイヨール美術館。
ボン・マルシェのrue du Bac沿いの出入り口から30メートルもないところに、オ・バビロン(Au Babylone 13, rue de Babylone 75007)というビストロがある。
ここは昼しか開いていない。
中を覗くと、一見、どこかの社員食堂かと思うような、常連客しかいない雰囲気だ。
この店がとても好きだ。
メインにはたいてい、ジャガイモの付け合わせで、仔羊の腿肉のローストだったり、仔牛のローストだったりがスライスして出される。
その盛り付け加減も、焼き汁がかかっているところも、ホームステイをしていた頃に食べていたごはんを思い出させ、力みのない三姉妹によるサービスと相まって、こちらも一気に余計な力が抜けるのだ。
遅く着いたら、もうメインで残っているのは子鴨かサーロインだけよ、と言われた。
それで、胡椒ソースのかかった小鴨に。
デザートはクラフティにしようとしたら、これももう売り切れてしまっていた。いちばん下の妹が作るクラフティがまさに家庭の味でおいしい。
逃してしまったこの日の具は、ミラベルだった。
マイヨール美術館で9月に始まった企画展のタイトルにルソーの名があったので、行きたいと思っていた。
オ・バビロンからは歩いて5分とかからない。
正規の美術教育を受けず独学で絵を習得した画家たちのことを「素朴派」というそうだ。
アンリ・ルソー以外に知っている画家はいなかったけれど、ルソーは初めてパリへ旅行に来た時にオランジュリー美術館で作品を観てから好きで、今回見た風景画もやはり好きだなぁと思った。
ピカソが最初に買ったという『マダムMのポートレート』とタイトルが付いたルソーの絵も展示されていた。
それを見て、『楽園のカンヴァス』(原田マハ著)をまた読みたくなった。
あれは本当に夢中で読んだ小説だった。
心が掴まれるような絵は特になかったのだけれど、
静物画に描かれている食べ物を見るのはいつでも興味深い。
そうかぁ120年前にもフランスのメロンはいまと同じ形をしていたんだなぁ、とか、ワインのボトルもいまと同じだ、とか、そんなことを思う。
お肉屋さんの様子を描いた絵も、そういう意味でとてもおもしろかった。
セラフィーヌ・ルイという女性画家の花を描いた絵が最後のほうに何枚も展示されていた。
画家自身のうちに抑えきれないエネルギーがそれらの絵に乗せられているような印象だった。
あまりの強さに、なぜだか、逆に切なさを覚えた。
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