パリ街歩き、おいしい寄り道。

パストーレと、ラクロッシュ展。

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私はパリの端っこに住んでいる。
ストが続くパリで、中心地まで出るのは、なかなか時間を要する。
でもだからって、家の周辺にとどまっているのもそろそろ厳しいぞ、と焦りが出てくるようになってきた。
ここまで強硬に長引くのはこれまで経験したことがない。
意を決して、出かけることにした。
バスとタクシーは優先レーンがあるから、本来なら、渋滞時に有利だ。
タクシーに乗るのもよいのだけれど、不思議なもので、バスだと渋滞で詰まって動かない時にも「仕方ない」と思えるのに、タクシーに乗ると「どっか迂回できないのかな?」とか「結構メーター上がるなぁ」とか、「この運転手さんイライラしてるなぁ」とか気持ちがせわしなくなる。
それで乗れそうなら、バスを使うことにした。
目的地の近くまで行く路線を探す。
バスを乗り換えないかぎりどうしたって、バス停から1〜1.5kmは歩くことになった。
実際、全行程を徒歩で行くのとバスと、かかる時間はほとんど変わらなかった。
だから私の出かける時間帯、通勤ラッシュ時に被らない行きはバスに乗り、帰りは歩いた。
幸いにもこの12月のパリは寒さが和らいで、歩くのにはとても気持ちがいい。
11月のうちから予約をしていた、友人とのランチにも、バスと徒歩で向かった。
店は9区。パリのほぼ真ん中だ。
サンラザール駅まで行くバスに運よく乗れた。
普段なら30分くらいだけれど、1時間10分かかった。
バスの中はみんな譲り合っていた。
かなり混み合っている中に、目の不自由なムッシュが乗ってきて立っていた。
そしたら、横にいた女性が、席を譲ってもらえないか、と若くて座っている人たちに話しかけ、もちろん!と手を挙げた人がいた。
次の停留所で止まった時に、乗り込もうとする人たちに声をかけ待ってもらって、まずそのムッシュを席に座らせ(同時に降りる人もいるからけっこう車内でごちゃごちゃした)、その後にみんながどこからともなく示された合図を待って、乗ってきた。
私が乗ったバスは、どれも毎回穏やかな空気だった。

さて、サンラザール駅から早足で20分くらい。
Pastoreに着いた。
今年5月にオープンしてから、数日前に予約が必須の人気イタリアン。
店内は満席で、なんだかとてもよい空気に満ちていた。
隣の席にいた30代と思しき女性3人組は、ワインを1本開けたようだ。
料理人の友人とだったので、前菜3品、メイン2品をまず注文。
お互いの最近の話をしながら、メニューに書かれた料理の内容もすでにおぼろげで食べ始めた。
カラスミの風味が全体に絡んだポタージュが後を引き、食べるのだけれど、何の味だかわからなくてメニューを見返したら、素材はジャガイモと栗だった。
鴨とヘーゼルナッツのラグーで和えたパスタにはオレンジの皮が香り、魚介のニョッキにはサフランが利かせてあって、とても華やいだ気分になった。
それで、チーズも食べて、デザートも頼んだ。
いい時間を過ごしたな〜とホクホクして店を出た。


ずっと行きたいと思っていた展覧会が、この日最終日だった。
場所はヴァンドーム広場からすぐのL’Ecole des Arts Joailliers(宝飾芸術学校)。
お腹いっぱいの赤ら顔で、火照りを冷ますようにはちょうどよい距離だ。
宝飾品にはそこまで興味を惹かれないのだけれど、この展覧会には友人が関わっていて、珍しく、行く気満々だったのだ。
メゾン・ラクロッシュという、1892年から1967年に存在したジュエラーの展覧会。
かつて王侯貴族からも愛されたというラクロッシュは、1892年創業、1901年にラ・ぺ通り15番地、カルティエの隣に店を構え、その後1938年にはヴァンドーム広場に移転した。
いや〜、びっくりした。
どうだー!!という宝飾品ではなく、繊細で、かつ華やかで、ペンダントウォッチ(最初の写真)やブレスレット、ブローチに、何度もため息が出た。
そして、それら宝飾品の詳細が記されたノート。
もっと早くに行くべきだった。
願わくば会期を延長してほしいなぁ。

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外に出ると、日が暮れ始めたヴァンドーム広場からの空がきれいだった。
街灯が灯される前のこの時間帯が、パリはいちばん美しいと思う。
こんなに堂々と、平日に、散歩することがまかり通る1時間半の帰りの道のりは、何だかご褒美みたいだった。

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川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


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