ボローニャ「森の家」暮らし

新年のお楽しみいろいろ。クリエイティビティに染まる1月。

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晴天で迎えた新年。

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初日の出を拝んで気持ち良い一年の始まり。たっぷり初ヨガを楽しんだら、キッチンへ。

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一年に一度のお楽しみ、「日本の美味しいごはん」(と子どもたちは呼ぶ)=お節料理を仕上げる。

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田作り、昆布巻き(中身は豆腐と山芋)。

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栗の粉とサツマイモで作った栗きんとん。

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お煮しめ。

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手まり寿司にしようかと思ったけれど、時間節約で巻き寿司。

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伊達巻はタラ入り。ローストパプリカにはブロードを取った牛肉を佃煮にしたものを巻いた。揚げ出し豆腐、揚げたお餅。煮豆は日本に帰った時に買ったピーナッツの甘煮。

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汁物はボローニャのお祝い事に欠かせない詰めもの生パスタ、トルテッリーニ。漆器は母から受けついだもの。

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イタリアではカポダンノ、一年の始まりは大晦日のことで、新年カウントダウンをして花火をあげて、夜中までパーティをする。それで元旦は遅くまで寝て、だらだら過ごすのが一般的。そんなパーティに行った年も、元旦はお昼に毎年お節を準備してきた。毎年お節を楽しみにしている子どもたちのためにも。日本じゃみんな買えるのに偉いわね、という母。いろいろ材料が手に入らないので諦めるのではなく、工夫して作るのが楽しい。

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お餅は暖炉の炭で焼く。

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締めはお汁粉。多分みんなのいちばんのお楽しみ。

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昨年に引き続き、今年もカゾンチェッロの庭園のガブリエッラにお節のお裾分けを届けに行っ。風邪をひいて「自然の抗生物質のニンニクをたくさん食べたのでここでごめんなさいね」とドアの向こうとこちらで新年のご挨拶。

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翌日、ガブリエッラのルーチョからお節のお礼と写真が届いた。

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さすが日本通のガブリエッラ、素敵なセッティング。

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お裾分けはあげるほうももらうほうも嬉しい。喜んでもらえてよかった!

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1月6日はエピファニア(公現祭)。これで長いナターレのシーズンはおしまい。前夜、暖炉脇に吊るした靴下には、エピファニアの朝ベファーナ(東方三博士にまつわる老婆の伝説に由来する魔女)が一年良い子だった子どもにはお菓子を、悪い子だった子どもには炭を入れていく、というので、三女のたえが三姉妹分の靴下をかけて置いた。中にはみかん、殻つきピーナッツやくるみ、チョコレートなど。炭はなかった。

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ここ数年毎年友だちと作っていたフランスのエピファニアのケーキ、ガレット・デ・ロア(王様の菓子)を、今年はたえと作ってみた。切った時フェーヴ(もともとは乾燥そら豆、今では小さな陶器)が当たった人は、その日いちにち王様に。

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中身はアーモンド粉、卵、バター、砂糖。こんがり良い焼き上がり。焼き菓子、特にバター入りのお菓子の香りは、特別幸せな香り。

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食べるのは一瞬。今年の王様は、長女のゆまでした。

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寒い日が続いた1月中旬、うちに暖房が入った。今まではペレットストーブ3台と暖炉で暖を取っていたけれど、でも古い暖炉は7割の熱が逃げてしまって熱効率が非常に悪い。ゆまの部屋には暖房はなく、いつもストーブにくっついて勉強していた。以前は同じ部屋だった次女のみうと一緒の部屋で寝ればいいのに、絶対嫌だと寒~い部屋で寝ていた。

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この大きな薪ストーブがやってきたのは昨年の夏。薪で2000リットルの水を循環させて温めるシステムで、今までボイラー式で時間がかかったお湯もすぐ出る。ラジエーター(今のところ13台、4階建1000㎡の家全部に設置するには30台以上必要)と施工とバジェットの問題で、整備できたのは今月になってから。

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家に合わせて大きな薪ストーブを設置したので、薪をたくさん使うのには心が痛む。何世帯かが暮らすならいいけれど、日中留守やひとりのことが多いので、無駄が多いように感じてならない。

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何はともあれ、暖かい家は快適だ。夏場は外猫のミミとトトも薪ストーブの部屋に一日中いるようになった。

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野生の動物たちには食べ物が少なくなるこの時期。家の周りによく来る小鳥たちのために、今年も餌場を作ってあげた。野鳥の種ミックスを溶かしたココナッツオイルに入れて冷ましたら、鍋ごと木に吊るした。

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吊るしたのは、キッチンの窓から見えるオークツリー。

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この木にかけた鳥の巣にも毎年巣を作りに来るシジュウカラがよく来ている。春になったら猫たちも外で過ごすようになって狙われないか心配だけれど、今年も巣作りしに来てくれると良いな。

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今年初めてボローニャの町に行ったのは、マウリッツィオのバール40周年のお祝いの日。バールの外、ポルティコの回廊には、お祝いに駆けつけた人、いつものように飲みにきた人などたくさんの人が溢れていた。

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ボローニャに来たばかりの2008年から通うマウリのバール。ボローニャ大学の学生、教授、弁護士、建築家、役者、ミュージシャンなど、様々なジャンルの人たちが集まっておもしろい。ここのバリスタだったサラとトーマスは私のルームメイトに。当時のバリスタたちのポートレイトの作品は、今だに飾ってくれている。昔はイースターや大晦日を一緒に過ごしたり、まるで家族の一員のように親しくしてもらっていた。

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手前の黄色いパーカーはミラノから駆けつけたトーマス。今は音響技術で活躍している。

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この40年で50人は雇ったというマウリ。多くのスタッフから集まった40周年を祝うビデオレターが上映されて、みんな大笑いしたりじーんとしたり。お祝いのケーキを一緒に切ったのは、一緒にバールを切り盛りする次女のアティーナ。ふたりを囲むのは、いまと昔のスタッフたち。35年間毎日朝昼通う人、3世代で通う人、ここで人生の転機を迎えた人など、たくさんの人に祝福されたマウリ、これからも何十年も元気にバールの看板おじさんでいて欲しい。

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昨年の4月からユリアと準備を始めたふたり展の準備は佳境を迎えた。オープニング3週間前に大方の作品が出来たものの、何か大きなインパクトを与える作品が足りないと、思い立って作り始めたこの作品。

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大体の方向性を決めた後、インスピレーションの赴くまま作った作品の土台になる構造は、古代あるいは未来の街のよう。

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私が土台を作って、さまざまな素材に顔料などを塗ったものを置いていき、それを私が細いワイヤーで留めたり、その上にワイヤーで構造を作って乗せたりした。

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表から、裏から。

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会場は、ボローニャでいちばん人気なアバンギャルドなヘアサロン。オーナーで、アート通でもあるマルコは、この作品が会場に与えるインパクトが想像を超えていて、感激していた。

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小さな作品の集合体を大きな鏡の上にインスタレーションをしたものの、素敵だけれど、インパクトを与えるにはこの10倍は量がいる。でも、時間が足りない、どうしたものか、とユリアと洗髪台に座って会議。思い立った作品を、翌日深夜まで制作。

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ユリアが米澱粉や顔料を塗った布を、数年前に作った大きな雲の中に吊った作品。

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翌朝ボローニャに運ぶ時の空とのコントラストに胸が踊った。すでに設営したインスタレーションと自然に馴染み、満足の出来に。

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マルコはこんな看板を作ってくれた。(なにやら韓国映画か何かのポスターみたいで)恥ずかしいけれど、「もう40年も毎年アーティストの展示をしてきたので、どんなグラフィックが興味を引くかよくわかるのでこれが絶対良い!信じて!」というマルコ。何ごとも経験だ。天に身を委ねよう......。オープニングは2月8日。詳しくは来月のブログで!

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ハーバード出身の社会学者でライフコーチでベストセラー作家のマーサ・ベックは、最近のポッドキャストで、自分の注目がいくところに人生は向かっていくものだと言っていたのがとても印象に残った。そして、不安はクリエイティビティをシャットダウンするという。逆に、クリエイティビティは不安をシャットダウンするそう。本当にそう思う。

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私は好奇心とクリエイティビティにいつも救われている。いつ何が起きてもおかしくないこんな時代、感謝の気持ちと優しさを忘れずに、変化を恐れず、自分のスーパーパワーと天の導きを信じて、好奇心とクリエイティビティで人生の航海を楽しみたい。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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