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ボローニャ「森の家」暮らし

ロックダウンの過ごし方―自然のリズムに身を委ねる4月。

「月曜日から1週間、ボローニャ中の学校は休みになる」
とメールがあったのは、その前日の日曜日、2月23日の夜だった。

毎週末、ボローニャ郊外の田舎の家で過ごしている私たち、その夜ボローニャ旧市街に戻る予定を返上、それから今日まで私と子どもたちはずっとここで暮らしている。

原因は世界中を揺るがしている、新型コロナウイルス。
当時、ボローニャも位置する北イタリアの多くの州の学校が休みになったので、公園には人があふれ、スキーヴァカンスに行く人たちもたくさんいた。
ハグやキスの挨拶習慣、手洗いがよく身に付いていない、マスクにとても抵抗がある(マスクをする人はよっぽどの病持ちと懸念される)などのほか、根本的にイタリア人は指示に従うことがとっても苦手。そんなことも急速にウイルスが広がった理由だということは容易に理解できる。北イタリアから急速に広がったウイルスで、あっという間にイタリア中がロックダウンとなった。

外出は基本的に居住地域内の食料品や医療品などライフラインを確保する場合に限られ、買い物に出かけるのは一世帯ひとりずつ。ペットを連れて出られるのは家の周り200m以内。となると、集合住宅に生活する子どもたちが外に出る機会はまったくないということになる(3月31日の段階で、親1名が自分の未成年の子ども1名を連れて住宅付近に限り散歩することは可能に) 。9歳、6歳、2歳の子どもを含む5人と犬1匹でボローニャの狭いアパートにいたとしたら、一体どうやって毎日過ごしていたことか。ストレスレベルは想像を逸する。

建築、設計、修復を生業とする夫のパオロの業種も、建築現場はストップしたものの設計業は市をまたいで移動することが許可されているので、パオロは田舎の家と町を移動できる。それで下山するたびに、途中にあるテントの直売所で野菜を買ってくる。8割方ベジタリアンの食生活をしているので、新鮮な野菜のほか豆や穀物、植物性ミルクのストックがあれば食べるには困らない。

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オーガニックの大豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、ブラックビーンズ、アマランサス、蕎麦の実、チアシー ド、ヘンプシード、クルミ、カカオなど、1~5㎏パックは主にアマゾンでオーダー。ボローニャ界隈では運送業はほぼ通常通り機能しているので、こんな時は本当に助かる。

長期間子どもたちが家にいることは珍しいことではない。毎年夏休みは3ヵ月半もある。けれど、もちろん状況はまったく違う。何より友達と会えないし、どこにも行けない。それと、進むはずだった学業(これは小学生くらいまでだとイタリアにいるとそこまで気にならない・・・のは私だけかも?!)。とにかく毎日リズムが大事だと思い、3月中旬から大きな黒板に午前中の時間割と午後やりたいことなどを書かせ始めた。

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タスクとお手伝いなど、できたことはポイントに。

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現在バールやレストランもすべて休みなので、再開したらそのポイントでバールでホットチョコレートが飲める、とか、新聞スタンドで雑誌(ゆまはクロスワード、みうは雑誌に付いて来るおもちゃのほう)が買える、とか、たいしたことではないけど子どもたちにとってちょっとスペシャルなことができる、という特典が。

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はじめは張り切っていつもより早い7時過ぎに起きていた子どもたち、徐々に起床時間が遅くなり、午前中に1科目できれば良い方、なことも。

パオロが朝いる日はこんなシーンもあるけど、

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すぐ脱線。

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ホームスクールは私たちにはなかなかハードルが高い。

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宿題は、始めはラインのような携帯電話のコミュニケーションツールで送られてきていたけれど、そのうち4年生のゆまクラスはGoogle Classroomで送られ、オンラインで提出するように。

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教えてもいないのにキーボードを使ってせっせと入力、終わったら提出ボタンをクリックして採点を待つ。PCやスマートフォンがある時代に生まれたニュージェネレーションのテクノロジー機器への順応力たるや。 最近になって週2回、オンラインで授業も始まった。1クラス23人を4つに分けてGoogle Meetを使ってレッスン。中学校では毎日1、2時間だそう。先生も大変だ。

1年生のみうのクラスは、Padletという別のプラットフォームを使って宿題がくる。1年生はオンラインで入力は難しいので、先生のビデオレッスンとダウンロードしたものを印刷して書き込んで写真を撮ってアップロードして提出、したりしなかったり。これもプリンターがない家庭は難しい。

何しろみんな初めての経験。勉強がうまく進まなくても仕方ない。
それよりもいまは大切ことがたくさんある。

何よりいまを、この季節を、身体いっぱい感じること。

田舎にいるとお天気もエンターテイメントだ。
春先は朝の数時間だけでも窓からの景色はガラリと変わる。

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霧に包まれた朝。

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日が昇るにつれて霧は晴れ。

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流れ行く雲は飽きずに眺めていられる。

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数週間前には突然の雪。
翌日にはほとんど溶けてしまったけど、この日みうは暗くなるまでほとんどずっと外にいた。

アパート暮らしの友人の子どもは「今日は特別で外で遊べるよね?雪だもん!」と小さなテラスに積もった雪でミニチュア雪だるまを作ったそう。
春爛漫の日もだけれど、この時も、あぁみんなここに来れればいいのに!と心底思った。

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日が昇ってお昼前には、雨でなければ何はともあれみんな外に出るように促す。

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いつも水が溜まっているところには毎年カエルが卵を産む。

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でもオタマジャクシになるまでに水が干上がったり食べられてしまったりで、足が生えるまでは見たことがあるけれど、カエルになったところはほとんど見たことがない。今年はどうかな。

3月下旬は寒さが戻って朝は零下になることもあり、種を植えたりガーデニングは様子を見ながら。上弦の月の時は地上に育つ植物を、下弦の月の時は地下に育つ植物(主に根菜)を植えるといいとのことで、気温と月を見ながら種を植える。豆類はどちらの月の時に植えてもいいそう。

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いままでは暖かくなってから直に畑に種を植えていたけれど、今年はグリーンハウス的なものを作って発芽の様子を観察してみることに。

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昨年は暖かい春の日が続いたので3月早めに種を直植えしたら、4月に寒さが戻り、5月は冷たい雨の日続きで不作だった。過去にたくさん買い付けたオーガニックの種で、発芽保証期間が過ぎている野菜や花の種がたくさんあったので、試しにそれも植えてみた。もう3週間経ったけどそれらしきものは数個しか発芽していない……。雪も降って気温が下がったことも良くなかったのかも。暖かくなってから直植えしたい種が控えているので、そちらに期待したい。

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それでも何をしなくても自然の恵みはこんなに。去年の春植えたイタリアンパセリは、夏には目立たなかったのに秋になってからどんどん増え、冬の間も豊富にあってとても重宝。春になってボラジも昨年落ちた種からまた生えて来た。タンポポ、ミント、ハコベ、オドリコソウにオオバコ。摘み草料理の楽しみを知ってから、私たちにとって庭中がエディブルガーデンになった。

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子どもたちは自然の中で想像力豊かに遊んでいる。
飛べなくなったハチにタンポポのベッドを作ったり、イバラの茂みに秘密基地を作ったり、ネズミが逃げ込んだ穴の周りにチーズや穀物を置いて家を造ったり。

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ゆまはよく摘み草料理や植物レメディーの本を持ち歩いて、薬草にもとても詳しくなった。家族や友だち相手にポップアップクリニックやレストランをやっている。みうも切り傷擦り傷を作っては、ゆまに葉っぱで治療してもらうんだとかけて行く(ちなみに切り傷にはセイヨウノコギリソウ。傷を治すハーブとしてギリシア神話の英雄も使っていた)。

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そして思い立ってはキッチンに立つ。

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すると「わたしもやりたい!」と妹たちもキッチンに立つ。

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最後の片付けまでやってくれればいいんだけど。

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妹たちと外で遊んでてくれたらまぁいいか、と思ったり。

これは丸太の電車に乗ってコルシカ島の海に行くところ。お供は焼きたてシナモンロール。お手伝いも遊びにできたらこっちのもの。

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ぬかるみでドロドロになった靴を洗うのはみんな大好き
(この後、要お風呂)

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薪を積むのもいい運動。

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ゆまもみうも上手に暖炉の火を起こせるようになった。

1日部屋を暖かく保つにはどれだけ薪が必要で、それには木を切らないといけなくて、うちの薪は森を整備するために切った木で、燃やすとCO2が出て、じゃもっと木を植えないとね、昔の人みたいに摩擦で火を起こしたら、ライターがいらなければプラスチックゴミが出ないね……。

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学びの場はどこにでもあるのだ。

いろんなオンラインコミュニケーションツールを使ってインタラクティブなレッスンも体験。

友人でベジタリアンシェフのピーナは、毎週水曜日に料理教室。

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粉物と冷蔵庫の中にあるものを使って作る、がテーマ。

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フレッシュパスタ作りに初挑戦。

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ハーブや花を挟んで好きに切って最後は冷蔵庫のありもので各々作ったスープで茹でる。

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みんな何度もお代わりした。
これでパスタ作りに開眼。

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卵が入らないセモリナ粉の生地は、黄色はターメリック入り、緑はイラクサ入り。
見よう見まねでストロッツァプレティとニョッケッティを作った。

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ゆまが黙々と成形するなか、たえはやっぱり遊び出した。

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おかげでマーブル模様のかわいいパスタができた。 遊びの中に学びはいくらでもある。

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もうひとつ、バーチャルに参加しているのが、メディテーションのサハジャヨガ。毎週火曜日にイタリア内外と繋がって行う、コレクティブメディテーション。

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夜ご飯前の時間、フルで1時間参加できることはなかなかない。でも子どもたちも静かに座って目を閉じ呼吸に集中する。雑念が湧いたら呼吸に意識を集中させるようにする。特に小さい子は、はじめは5分。続けているとだんだん長く集中できるようになってくる。メディテーションの後は清々しい気持ちに。こんな時こそ、大人も子どももリラックスしていたい。目を閉じていまに集中する。そしてすべてとつながる。メディテーションはこんな時だからこそ、みんなに必要なことなのかもしれない。

イタリアでの新型コロナウイルスの感染ピークは過ぎたかも、と言われているものの、感染第2波の恐れも報道されている。世界中に広がったウイルスは、身体だけではなく、思考や意識をじわじわ侵している。それがいちばん危険なことかもしれない。

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エネミーと思っていたものが、観点を変えてみれば救世主だったということもある。これがいま、この時代に流行したのは、何か大いなるものの意思によるものかとさえ感じられる。

この世情のなか、さまざまなレベルで苦しんでいる人たちがたくさんいるなか、ソーシャルメディアで森での生活の様子をシェアするのは控えたほうが良いのではと思ったこともある。

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でも、豊かな自然に、日々の小さな瞬間に、元気な子どもたちに、穏やかな気持ちになれる、笑顔をもらってありがとう。と、楽しみにしていてくださる方がたくさんいると知り、これがいま、私にできることなのかなと、続けることにした。 こんな形で世間に少しでも貢献できるなら、この上なく幸せだ。

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~私の好きなもの~
大地のかおり
木々の景色
雨の触感
ロビンの歌声  そして生きていることを全身で感じること  目を開けたまま夢見ながら

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移りゆく雲や青々してくる大地を見ながら毎日思う。
いま、ここに生きていられることに、感謝しかない。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。

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