ボローニャ「森の家」暮らし

まるまる1ヶ月ナターレ色。小さな幸せが詰まった12月。

一年でいちばん盛りだくさんで忙しい12月。なぜなら、ナターレ(クリスマス)にまつわる催しが目白押しだから。

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子どもたちは朝起きてきたら着替えもせずまっすぐキッチンに。暖炉に足を突っ込んで読書。何でも読むけど、やっぱりナターレの雰囲気の本が気分。

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それからナターレカウントダウンカレンダーのところに。12月1日から25日まで、日めくり式に開けて行く。中にはお楽しみが。

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カレンダーはいろいろなものが出回っているけれど、私は手づくり。中身は文房具、ナッツ、ビスケット、庭作りのための球根やタネなど、主に役に立つものやスナック。

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マシュマロが入っている日は当たりの日。早速暖炉に走って焼きマシュマロ。

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焼きマシュマロは、誕生日と、この時期のお楽しみ。

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ビスケットを焼く回数は12月がいちばん多い。

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塩ビスケットは飾り用。オレンジの皮は数日分ためて置いて星型で抜いて飾ったりプレゼントに添えたり。

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ユリアとビスケットを作るのも恒例イベント。

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親友のアーティストで、ドイツ人のユリアには、ナターレの習慣をたくさん教わった。ドイツのナターレはイタリアよりロマンチック。12月にビスケットをたくさん用意しておくのは、雪の中、誰かが温まりに訪れた時に、お茶と一緒に振る舞えるように。そんな思い出話しを聞きながら、バターとスパイスの香り漂うビスケットを作るのは、至福の時。

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去年まではボローニャのユリアの家で作っていたけれど、今年はうちで。ユリアの子どもたちは長女のゆまと、次女のみうと同い年。小さい頃からよく遊んでいて、もう何年も12月6日のサン・ニコラの日は一緒にお祝いしている。

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南イタリアの港町、バーリの聖人、サン・ニコラは、サンタクロースの元となった実在の人。トルコ生まれのサン・ニコラが貧しい子どもたちに美しいりんごを贈ったところ、翌朝にはりんごは金になっていたという伝説から、子どもたちの守護聖人と言われている。イタリアではこの日をお祝いする地域はごく一部な一方、ドイツやベルギー、スイス、オーストリアでは、国中で大々的にお祝いするそう。5日の前夜には、玄関先に子どもたちの靴がずらりと置かれ、サン・ニコラ(ドイツではニコラウス)が贈り物を残しておいてくれるのを子どもたちはワクワク待つ。

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”サンタ”が子どもたちにプレゼントを届けてくれるのは本来この日。地域によっては12月13日のサンタ・ルチアの日にロバに乗ったサンタ・ルチアが贈り物を届けてくれるそう。今では25日のナターレにバッボナターレ(直訳でクリスマスパパで、いわゆるサンタクロース)が来るようになっているので、ヨーロッパの子どもたちは12月には何度もプレゼントをもらう機会があるのだ。

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ナターレのデコレーションは、12月8日、無原罪の御宿りの日に行う。祝日のこの日から本格的なクリスマスシーズンに入る。

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家のあちこちを徐々にナターレ仕様に。

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散歩で採取してきたものや友達のところで分けてもらったモミの木の枝などを使ってみんなでデコレーション。

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綺麗な苔が生えたキノコは山みたい。次女のみうが頂上にテーブルと椅子をおいて、脇には山小屋を建てた。黄色い実はヤドリギの実。

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プレゼーぺは、ジェズ(イエス・キリスト)降誕シーンを再現した模型で、ナターレの飾りに欠かせないもの。うちのプレゼーぺは手作りで、エッセンシャルなもの。街中や教会では、大小さまざまなジオラマが飾らる。

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町のメインストリートの水場には、毎年こんなプレゼーぺが登場。

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馬小屋の中、聖母マリアとキリストの養父ジュゼッペ(ヨゼフ)の間には、バンビーノ・ジェズ(ベビーのキリスト)。教会や多くの家庭では、ベビーのキリストはイブの24日の夜、ミサのあと、日付が変わると同時に飼い葉桶の揺かごに置かれる。ジオラマには光が昼から夜に変化する光の演出があって、三女のたえはこれをいつまでも見ていたがる。

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イブには町のバールにホットチョコレートを飲みに行くのが子どもたちの楽しみ。でも今年は24日から1月6日まで数日除いてイタリア全土でロックダウン。それで前倒しでイブの前日に。バールはナターレの挨拶を交わす人たちで大にぎわい。

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1796年創業のボローニャのチョコレート屋、マイアーニのホットチョコレート。バール用のインスタントだけど、パンナがたっぷり乗ったこのマグを前にニコニコの三姉妹の姿を見るのは私も楽しみ。そしてここで待ち合わせした隣町のお客さんに、ナターレ前最後の作品を無事納品、ほっと一息。

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営業は18時までの規制だけど、この日は警察も見回りを控えていたようで、時間オーバーしていたけどみんなで乾杯!

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イブの日は肉を食べず、夜は魚料理を食べる。食後、暖炉の前に心を込めて作ったビスケットと牛乳を置いて、バッボナターレを待つ。とても風の強い夜で、バッボナターレはソリから降りれないかもね、と心配していたけど。

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翌朝。無事届けられた様子。

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雪予報は夜にずれて、空には最高のプレゼントが。ダブルの虹は、きっとパワフルなエネルギーのポータルだ。

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毎年ナターレは親しい友人家族たちと過ごすけれど、今年は勝手が違って、家族だけ。それでも十分にぎやかな我が家。ナターレのテーブルは何日も前から準備するとか言うけれど、私は当日キッチンに立ってから考えた。特に来客がなければ気楽なもの。星形パイはバジルのジェノベーゼ味。長女のゆまがひねって作った。今年初めて作った干し柿は、アーモンドをはさんでアンティパストに。かぼちゃとズッキーニのオーブン焼き。ひよこ豆のフムスにはビーツを入れてピンクに。

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プリモは、ボローニャのナターレに欠かせない詰め物をした生パスタ、トルテッリーニ。家で作るのが理想だけど、大の仲良しでクライアントでもある友達夫婦がボローニャで大人気の生パスタ ショップ、ラ・スフォリア・リーナをしているので、いつもここにオーダー。これをブロードで茹でるだけ。

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セコンドは、ブロードに入れた骨つきの鳥肉をほぐして蒸した野菜と温サラダに。美味しいバルサミコと地元のオーガニックオリーブオイルで。

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パネットーネの食べ比べもこの時期の楽しみのひとつ。右はボローニャのフォルノ・ブリーザ、左は地元のフォルノ・ディ・カルツォラーリ。どちらもパン好きがトップクラスにマークするユニークなパン屋。暖炉やオーブンで軽く温め直すのが絶対おすすめ。バターとパネットーネ酵母が香り立ち、幸せが詰まっているようなパネットーネに鼻をうずめる衝動にかられるのは私だけではないはず。

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どこの家庭でもナターレにはテーブルに果物やナッツ、チョコレートやお菓子が置いてあり、友達が尋ねてきては、おしゃべりしながらつまむのだ。数年前、南イタリアの友人宅でお祝いした時は、朝から晩までテーブルには食べ物がずらりと並び、ひっきりなしに食べていた。それに比べると、うちのナターレの食卓は超ミニマル。

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翌26日はサント・ステファノで祝日。イブから3日間続くお祝いの最後の日だ。昨日の夜から雪がちらついて、朝にはほんのり雪化粧の景色に。この日は前日までの残り物を食べる、三が日の最後のような雰囲気。

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私は初めてパッサテッリを作ってみた。パン粉、パルミジャーノ、卵、ナツメグとすりおろしたレモンの皮をこねて、ジャガイモの絞り機で絞り出し、グラグラ沸いたブロードで茹でる。いたってシンプルながら滋味深い一品。

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茹でる際に崩れてしまったけれど、ロマーニャではタルドゥーラ(方言でプレスした、の意味)と呼ばれ、グルメにはパッサテッリよりポイント高い料理らしい。あとは、グリル野菜やフムスの残りなど、いわゆるいつもの食卓。

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イタリアでは通常イブの夜、ナターレは家族や親戚と、サント・ステファノは友人を訪れたり映画を観に行ったりして過ごす。今年は移動規制もあり、ボローニャから遊びにくる友達の訪問もほとんどなく、お昼のあとは夫と、あるいは歩く気のある子を連れて、キリッと澄んだ空気の山道を散歩。

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すっかり葉が落ちた栗林。凍った葉っぱの上をザクザク歩き、美しい緑のグラデーションの苔を撫で、好みの白い枯れ枝を拾い、ローズヒップの中身を絞り出して舐め、草の間を飛び跳ねる野ネズミを見守る。立ち止まっては、すべての細胞に酸素と大地のエネルギーがいきわたるように深呼吸。愛を吸い込んで、感謝を吐き出すんだよ、と子どもたちにいうと、ありがとう、ありがとう、 ありがとう。と合唱になった。

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そして夕日に照らされた家に向かって帰る。子どもたちは暖炉に足を突っ込んで、本をかかえてみかんでも剥いて、賑やかにケタケタ笑うだろう。なんでもない日常の、幸せな風景。

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冬至の前夜、アンナマリアの導きで、深い霧の森の中、火を灯してネイティブアメリカンの光の儀式に参加した。先住民の人たちは何千年も昔から自然を観察してきた。彼らは火、太陽、星々 からの光のエネルギーをよく理解していて、光のバイブレーションを体内に取り入れるようにしていた。そしてその光をスピリチュアルなチャントや歌、舞踏儀式に反映させ、この小さな惑星を超えた生命の知性に繋がり、過去4000年の記述、記憶された歴史に先立つ文明を生み出した。最近の科学では、伝統的なチャント、歌、踊りがテロメラーゼを活性化する数少ないもののひとつであることが明らかになった。テロメラーゼは、遺伝子の末端を再生して再生と長寿をサポートするヒト細胞核の酵素で、細胞不死化酵素として研究が進められている。未だ古代の集団的な文化と意識より効果的な薬やテクノロジーは発見されていないということは、非常に興味深い。今年最後に世界に贈りたい作品。

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朝日を浴びて、深呼吸。全身にエネルギーを満タンチャージ。青々した大地に寝転び、四つ葉のクローバーを探す。いつも窓の外にくる鳥たちに、パンくずを置いておく。りんごの花のピンクのつぼみが、開くと純白になるのに気付く。ルビー色に光るざくろを、口いっぱいに頬張る。空を見上げては、七変化する雲の色や形にため息する。月の満ち欠けのリズムを意識して、過ごし方を考える。

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幸せを感じる瞬間は、いくらでもある。それに気付けば、“la vita è bella” 人生は美しい。

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自然の中にいるだけで、そこで深呼吸するだけで、幸せはチャージできる。都会に住んでいても、積極的に身近な自然を探して、鈍った五感を取り戻そう。夜はキャンドルを灯して、今の、太古の、そして未来の光を意識しよう。そしてそこから生まれる会話を楽しもう。光の連鎖は希望の連鎖。もう始まっている新しい時代に、たくさんの人と光で繋がれますように。そして世界が光で満たされますように。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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