ボローニャ「森の家」暮らし

旬を食してエネルギーチャージ。大地の恵みに感謝する10月。

10月も末になり、朝晩冷え込むようになって来た。

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6月から10月の半ばまで、家の一部(キッチンと2部屋)を貸していたけれど、全部屋に暖房がないので貸しアパートは来年の初夏までお休み。夏の間貸していたダイニングキッチンの暖炉前は、毎朝こんな感じで賑わっている。

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木々は色づきはじめ、散歩が特別に楽しい季節になった。

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この時期向かう先の定番は、栗林。今は栗の収穫で立ち入り禁止のところが多いけれど、うちや友だちの栗林なら大丈夫。

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お楽しみは栗拾いにキノコ狩り。

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ポルチーニやタマゴダケなど、大人気なキノコは名人たちが朝早くに森に入って収穫してしまうので、私たちが行く頃にはそうそう見つからない。

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でも、人気度が低いカラカサダケやアイタケは、玄人は見向きもしないようで、たいてい見つかる。これで十分楽しいし、美味しい。

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ナイフで根元近くを切って収穫。子どもたちはキノコを食べるのはあまり好きではないけれど、探すのは大好き。

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いつも木々や草花、大地に「ありがとう」を言って恵みを分けてもらう。木登りをしたり、木の穴を覗きこむ時も「ごめんください」というような言葉を言っていて微笑ましい。

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栗は拾って来たばかりのものはすぐには食べず、広げて干して、水気を飛ばして熟成させると甘みが増すと、今年知った。丸みのある面に横に切れ目を入れたら、暖炉の炭火で炒る。

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切れ目がぱっくり開いたら、布で包んで少しおいて布の上からゴリゴリ押すと、皮と薄皮が剥がれやすくなる。

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焼きたての栗といったら、香ばしくホクホク美味しい。ちなみに栗とひとことで言っても、大振りのマローネと小ぶりのカスターニャと2種類あり、マローネは炒ったりシロップやリキュール漬けに、カスターニャは茹でたり粉にして使う。

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残った栗は雑穀と炊いて栗ご飯に。この辺りには栗林がたくさんあり、栗街道もある。栗はかつては貧しい人のパンと言われ、山間に暮らす人たちは栗で長い冬をしのいでいた時代があった。さまざまなミネラルや植物繊維を多く含み、栄養価がとても高い栗。豊富に含まれているビタミンCもデンプン質に包まれているので熱にも強い。できることなら毎日食べたい。

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キノコは探すのは好き(特に長女)だけど食べるのは苦手な子どもたち。でもオーブン焼きは大好き。

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パン粉にみじん切りのニンニク、タイムやパセリ、塩、オリーブオイルをかけてオーブンでグリル。

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カリカリになったら出来上がり。

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昔は大好きだった、トンカツ並みの満足感。

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キノコはたくさん集めたら、炒めてパスタソースにして冷凍保存、あるいは乾燥させる。学校帰り、キノコ通の友だちのところに寄ったら、10キロは集めたというシバフタケを掃除しているところだった。このキノコは甘みがあってとても美味しいのよ! とティツィアナ。硬い茎と草を除去、そのあと何度も水で洗って土を取るそう。大変そうだったので掃除を手伝ったたら、一袋くれた。美味しかったけど、掃除に手間がかかるので、自分が調理するなら大きくて扱いも楽なカラカサダケのほうがいいと思った。

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秋の味覚、もうひとつの楽しみは、カボチャ。庭に撒いた堆肥(ロバのフンを混ぜたコンポスト)から勝手に生えて来たカボチャは、夏には森からやって来たヤマアラシの被害にあったけど、大小いろんな形ができて楽しい。

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カボチャも子どもたちはあまり好まない。でも秋冬はほとんどの料理にカボチャを入れている。カボチャのほかに、いろんな野菜を蒸し煮にして、オートミルクとブレンダーで回し、固くなった天然酵母パンにニンニクをこすっていろんなタネとフライパンで炒って塩、とオリーブオイルで味付けしたものをトッピング。クミンとコショウなどのスパイスや雑穀、タネやナッツ、ヘンプシードやイラクサの粉(ファイバーとプロテインが豊富)、はたまたアシュワガンダ(朝鮮人参のような効能のあるハーブ)など、できるだけ毎食たくさんの品目を摂れるように工夫している。夫のパオロが早く帰って来た日や週末は、彼が魚介を使ったシンプル(で美味しい)なリゾットやパスタを作るので、子どもたちはパパご飯を楽しみにしている。そのうち料理好きなゆまも食卓担当してくれるかもしれないと期待している。

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先日シェフのフランコが遊びに来た時、カボチャのマリネを持って来てくれた。いろんな方法でカボチャを食べてきたけど、マリネは初めてだったかもしれない。オーブンでグリルして、オリーブオイル、酢、ニンニク、ミントのマリネ液に一晩漬ける。ニンニクが苦手な人はカボチャを漬けた後に外せばいい。夏の間は蒸してグリルしたナスを同じようにマリネしていた。思い出すだけでお腹が空くほど美味だった。

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雑穀パンのトーストに水とレモンで練ったタヒニ(中東の生ゴマペースト)を塗って、マリネしたカボチャを、と若いボラジの葉っぱを挟んだパニーノを作ってくれた。大好きなものがたくさん詰まったパニーニは、最高に美味しかった。

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ちなみにタヒニはうちの食卓に欠かせない食品。ヒヨコマメや大豆のフムスを作るときのほか、生姜、レモン、メープルシロップと合わせたドレッシング、焼かないお菓子にも大活躍。時に口さみしくなると、スプーンですくってハチミツを少し垂らしてパンに塗ったりそのまま食べたりして いる。

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ひとくちで脳天に響くほど、幸せになれる美味しさ。

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夏の間花が咲き、タネが落ちて秋に生えて来たボラジ。今畑は大好きなボラジがたくさん生えている。まったく手のかからない万能なハーブで、トマト、キャベツ類、カボチャ、イチゴなど様々な植物 と相性が良く、ミツバチなどポリネーター(花粉を運んでくれる虫)が好んでやってくる。また、

カバークロップ(土壌を良くする作物)としても使われる。小さな畑、またはテラスで菜園をして
いる人にも是非お勧めしたい。

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毎日あちこちの株から少しずつ収穫。若い葉は生食、大きい葉はチクチクするので炒めたり煮たり。ほうれん草と同じ感覚で使える。

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子どもたちがいちばん喜ぶのは、パリパリで香ばしい揚げ物。ヒヨコマメの粉を溶いたものにくぐらせて、さっと揚げる。夜ご飯の前にあっという間に無くなってしまう人気ぶり。ボラジには カリウムやカルシウムが豊富で、発汗作用、抗炎症作用、抗うつ作用もあるのが知られている。

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畑には、今月芽キャベツ、トスカーナの黒キャベツ(細長い葉)、ラディッキオ、サラダ菜などのほか、ニンニクと玉ねぎを植えた。

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抜いたトマトやナス、大量のカボチャの蔓などは、雑草と一緒にコンポストに。これら緑の葉っぱ(窒素)の上にはダンボールや藁など (炭素) を、それにさまざまなバクテリアが活動している出来上がったコンポストを少し。こうして緑と茶色の要素をラザニアのように何層にも乗せていく。こうすると、数ヶ月後には良質な堆肥ができる。

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いちど下の方をのぞいてみたら、ミミズがたくさん来ていた。

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いい調子だ。仕上がったコンポストは、冬になったら畑に1、2センチの厚みでまく。それで畑の追肥メインテナンスはおしまい。イギリスのノーディッグガーデニング推奨者、チャールズ・ドーウィングの教えだ。

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週末にはサマータイムが終わる。朝が来るのが1時間遅くなり、夜が来るのが1時間早くなる。学校から帰ってきたらもう暗いのでこんな風に外で遊ばなくなるのだろう。そしてもしかしたら 今回時計の針を1時間戻したら、もう針を動かすことはなくなるかもしれない。2018年からEU欧 州連合協議会では夏時間を続けるか否かの協議が行われていて、来春から夏時間か冬時間、好きな方を選ぶようになる。お隣フランスはもう針を動かさないと決定しているけれど、イタリアは 未だ不定。タイムゾーンが混乱したら旅行者にとっては大変だと思う。ここにいたらあまり関係ないけれど。それに、時間は人間が作り出した概念であって、イリュージョンにすぎない。というのは、また別の話。

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世の中ますます混乱が続いている。新聞や主要ニュース番組が取り上げる操作されている情報がすべてだと思っている人もいる。それはそれでいい。一方、疑問を持って自分なりのリサーチを始め、マトリックスから目覚めた人もたくさんいる。私は自分の感覚に同調するかしないかの物差しに従うようになったら、導かれるかのように世界が開けた。そして知ることになった。闇に葬られた歴史のこと。世界を操っている1%の人たちのこと。彼らと密接に繋がっているバチカンのこと。エリートたちが計画している人道ではない未来のこと。すでに技術はあるのに儲からないので潰されてきたクリーンエネルギーやヒーリングの方法。人の意識と精神世界。宇宙の法則。そしてすべては繋がっていること。

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情報の多さと闇の深さに圧倒され、羅針盤を見失ってくじけそうになる人もいるだろう。私は台風の目の中にいるような、安心を感じている。何が起きようとも、私は大丈夫。自由は自分の意識次第であり、どんな時でも自由を選択することができることを学んだ。時には吹き飛ばされそうになったり取り乱すこともあっても、芯に戻る方法を知った。救済者を待っていたり、外部に答えを求めたり、誰かのせいにしていては、いつになっても幸せにはなれない。答えはいつも 自分の中にある。何をしても間違いはない。自分を責めない。人も責めない。感情を逆なでされたり卑下されたりした時、どう自分が反応するかを観察し、認め、その感情にしがみつかず、流す。責めてくる相手や許され難いことをしている人は、その人自身が抱えている深い問題があり、それは自分のせいではない。その人に悪を望むのではなく、同情心と愛をおくる。

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いつでも深呼吸することで、自分の芯に戻れる。大地に座る、草木に触れる。そのエネルギーに 触れる。無機物を含めたこの世の存在の全てにエネルギーフィールドがあり、人の意識は常に共鳴 している。目をつぶり自分の中の光を意識し、それが広がり自分がすっぽり入ったイメージをする。それは自分のエネルギーフィールドのプロテクションにもなる。

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子どもたちにも、深呼吸して負のエネルギーを流して良いエネルギーを得たり、恐れや怒りから自由になり内側の状況をコントロールできること、自分の中の光のパワーのこと、エゴと高次元の自分のこと、見えないけどそこにある意識体のことなど、経験を通して伝えている。朝学校に向かう車の中で、晴れでも雨でも太陽に挨拶をして、今日も一日良い日であることに感謝するのと、夕食の時にその日にあった感謝したいことを3つあげるのは毎日の習慣に。長女のゆまは深呼吸と自分なりのプロテクションの方法を習得し、何か自信を身につけたよう。次女のみうは動物的感覚に優れ、空や草木にいろんなサインを見つける。三女のたえは特別大地とのコネクションが強いよう。何か守られている感じがする。

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陽がとっくに落ちたあとに、ひとりで森に入ってメディテーションと祈りを捧げたあとのこと。目を開けたら霧が出ていて、薄明るい空と木々の影が美しかったので写真を撮った。すると虹が写った。祈りの返事をくれたと思った。すべてが万全なサインだと思った。

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夏の間に使っていたキッチンに飾った「個人の権利宣言」。数年前、友だちの思春期のお嬢さんにプレゼントとして依頼されたもので、訳があり引き取られなかったもの。気に入っていたので手元に残ってよかったと思っていた。ボローニャからの引っ越し後、目につくところに飾っていなかったけれど、ふと読み返したら、今こそ考えたい大切なことが沢山書いてあったので、みんなが見られる場所に飾った。

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1.私は罪を感じずに拒否する権利がある。
2.私は人生の中で、適切な方法で喜びと平穏さを経験する権利がある。
3.私は決断をする権利がある。
4.私は間違える権利がある。
5.私は考えを変える権利がある。
6.私は無条件の愛を与えたり受けたりする権利がある。
7.私は怒りを感じ、それを表現する権利がある。
8.私は尊厳と尊重の権利がある。
9.私は選択する権利がある。
10.私はリラックスして、セルフケアする権利がある。
11.私は恐れ、罪の意識、恥を経験し、それを解き放す権利がある。
12.私は失ったものを後悔する権利がある。
13.私は個人情報を保持する権利がある。
14.私は他の人と意見が合わなくても良く、同時にそれに対して罪を感じなくて良い権利がある。
15.私は進化し、身体も精神も感情も霊的にも成長する権利がある。

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今、知らぬがまま手放しかけている権利が沢山ある。プライバシーや言論の自由はすでに奪われている。選択の自由もそうだ。今この権利を手放したら、あとで後悔しても遅い。沈黙は容認。未来の子どもたちのためにも、ひとりひとりが声を上げ、行動をし、自分の周りから意識を上げていくことが必要だと思う。自分の中の光の力は果てしなく大きく、周囲を巻き込むパワーがあることを思い出して。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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