ボローニャ「森の家」暮らし

ナターレはやっぱり特別。感謝でいっぱいの12月。

月日はめぐり、いよいよ12月。今月は子どもたちにはお楽しみが盛りだくさんだ。

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ジェズ(キリスト)の誕生を祝う、ナターレ(クリスマス)をカウントダウンするアドベントお楽しみカレンダー。それぞれの家庭で既成のものや、手作りのものを用意。うちではモミの枝などを使った飾りに、25個の小さなお楽しみを吊るしたものが恒例に。

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11月末に次女のみうのクラスで、コロナウイルスの陽性の子がいたため、2週間オンライン授業に切り替わった。授業は午前中だけ。それで一緒にナターレの飾り付けに使う植物を集めに。

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枝を切るときは、「ありがとう」を忘れずに。切り口にキスをするのがみう流。

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常緑樹の青々しい香りは、この季節のワクワク感を盛り上げてくれる。

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オークの落ち葉は本に挟んで暖炉の脇で乾かして。

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カレンダーの日付を書いた。

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お楽しみカレンダーのトップバッターは、ビスケットの型。

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これでデコレーション用のビスケットを作るのだ。材料は塩と小麦粉と水。食いしん坊犬、メリーナさえ食べないしょっぱいビスケット。

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たくさん作ったので、三女のたえは幼稚園にも飾るんだ、と翌日園に持っていった。

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こちらは美味しいビスケット作り。親友ユリアはドイツ人で、彼女からイタリアではメジャーではない、ナターレの習慣をたくさん習った。ユリアの長男ニコライとうちの長女のゆまは同い年で(次男と次女のみうも同い年)、ベビーシッターをシェアして以来9年来の付き合い。ナターレの行事ももう何年も一緒にお祝いしている。アドベントカレンダーもアドベントキャンドルを灯すのも、ユリアの影響から。

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12月5日の夜、贈り物を持ってやって来るサン・ニコロ(聖ニコラウス)のお祝いもかねて、一緒にビスケットとリースを作った。

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ドイツでは11月末には大量のビスケットを作って、ナターレの時期の絶えない来客やお持たせに備える。今回は3種類のビスケットを準備。ユリアのママは5、6種類は常備していたそう。出身のテュービンゲンは中世の街並みの大学都市で、川にそっていくつも学校が並んでいる。ユリアが学生だった時、川は冬には分厚く氷り、休憩時間になると学校から数メートル向こうにある凍った川にみんなが走り出て、アイススケートをして遊んだそう。そんな故郷の思い出話しを聞いて、感心したり大笑いしたりするのが、毎年楽しみだ。

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この夜、子どもたちはドアの外に靴を並べてサン・ニコロの到来を待つ。サンタクロースの原型と言われるサン・ニコロはこの夜、良い子にはプレゼントを届けてくれる。イタリアではマイナーなこの習慣ですが、ドイツやベルギーなどの北ヨーロッパの友だちはみんなお祝いしている。

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朝になったらこの通り。

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一緒にお祝いするのは、楽しみも思い出も格別。まだまだ何年も一緒に祝いたいな。

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イタリアでは12月8日、インマコラータ・コンチェツイオーネ(聖母マリアがキリストを受胎した日)の祝日に行い、この日からナターレ期間が正式に始まる。今年もツリーは古い木のハシゴを使ったもの。

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散歩道沿いや友だちの家の庭に生えるモミの木の枝に、近くの町のチャリティーショップで調達した球や、東京にあるブティックのペールジュートが作ってくれた、私のイラストを活版印刷したカードで装飾。

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暖炉の上も彩りが増して、ナターレの気分が盛り上がる。

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こちらはみうが担当したプレゼーぺ(キリストの生誕を再現したジオラマ)。今年は子どもたちが通学している町で、楽しいプレゼーぺのプロジェクトがあった。

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町を見下ろす松林の中、70箇所にプレゼーペが飾り付けられた。

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赤いリボンを目印に、プレゼーペを探して歩く。

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明かりが灯っているものがあったり、近くにあった風車を思わせるものがあったり。

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真っ暗になるまで(といってもまだ17時台)明かりを照らしながら歩き回った。

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子どもたちは電灯を持って走り回る。こんな冒険、最高に楽しい。

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12月中旬から、隣町ではナターレ市が立っている。

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大好きな地元のパン屋さん、カルツォラーリは、焼きたてのパネットーネとホットアップルジュース(グラッパも加えられる)のスタンドを本店のすぐ近くに出店。

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この日は焼きたてのパネットーネがお目見え。

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代表マッテオは、いつも楽しいイベントを企画してくれる。焼きたてのパネットーネは、こうして逆さまにして冷ますのだ。

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ほっかほかのパネットーネは箱の中でも逆さまで持ち帰り(通常は冷ましてから袋に入れて箱に)。

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このパネットーネ、美味しいし可愛いのでお歳暮に買い込んだ。箱にはパネットーネができるまでのストーリーが描かれている。

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パネットーネを乗せたお皿は、ペールジュートと作ったホリデープレート。森の動物たちと冬のホリデーシーズンを毎日お祝いする気分で描いたイラストが、フォレストグリーンとゴールドでお皿に飾られている。

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このお皿にいろんな美味しいもの盛って楽しでもらえるのね! と思うと、にんまりせずにいられない。カルツォラーリのモンタナーロ(山人)と名のついた洋ナシとクルミのパネットーネを食べながら、ワクワクと感謝の気持ちでいっぱいに。そんな気持ちでふと思いついて作ったのは、カルツォラーリの看板娘、ジーナ。(ちなみにパン屋で20年来使われている天然酵母の名前はジーノ) 。ピック状の足がついていて、パンに刺せるようにした。これはジーナの生みの親マッテオにプレゼント。工房に届けたら、思わぬ贈り物に感激していた。

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12月は感謝の月。読書家の子どもたちにと自分が描いた絵本を贈ってくれたエマヌエレ。インスタグラムで私を見つけて以来、毎日載せるストーリー(もともと実家への便りのつもりで始めた)を楽しみにしていて、うちの暖炉の前で絵本を楽しんでくれたらいいな、と思ったそう。お返しに、メッセージに添えて描かれた小鳥を作ってクリスマスカードにして送った。

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「auguri」とは、あなたに良いことがありますように祈っています、とか、おめでとう、という意味で、お祝いに欠かせない言葉。

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あまり会えないけれど、前世から繋がっているに違いない!と思うベアトリーチェが遊びにきてくれた時は、小さなリースとカード、それに地元の粉挽き屋さんのレンズ豆や、パスタなどをプレゼント。

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小学校のすぐ近くにあるポッジョローネは、界隈の畑で無農薬の小麦、古代麦、トウモロコシなど、それに豆類を栽培。昔ながらの方式でゆっくり挽いて上質な粉を作っていて、2世代目の若い兄弟が情熱を持って経営している。パオロの大工さんやお世話になっている建築家たちにも、ポッジョローネのパスタやレンズ豆と、カルツォラーリのパネットーネをお届け。

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身近な友だちには、ナターレのご挨拶にクローバーのスプーンを。添えた野生のタイムは、古代ギリシャでは勇気と活力を与え、心を癒してくれると信じられていた。タイムの芳香成分には、抗菌や咳止めの効果もあり、ハーブティにも使われる。いろんな想いを込めて、ラッキースプーンと 勇気のハーブをセットにして贈った。

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23日、学校が終わり2週間の冬休みに入った。学校帰りにいつものバールへ。

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ここでナターレの前には、いつもホットチョコレートを飲むのを子どもたちは楽しみにしている。

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熱々のホットチョコレートにたっぷりのパンナ。ごちそうだ。

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それからオレンジとターメリックのお茶をテイクアウトして、ピアッツァに。気温3度、子どもたちは走り回ってジャケットを脱ぎ捨てて遊んでいる。イタリアでは今月からワクチン接種をしていない人はレストランのほか、バールのカウンターも使えなくなった。このバールのオーナー一家とは仲良しで、店内にいても目をつむってくれるけど、文句のあるお客さんもいるだろうしコントロールがあると厄介なので早々に外へ。

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私はレストランやバールを使えなくなって残念な気持ちはあまりないし、美術館や図書館や劇場に行けないのも仕方ないと思う。娯楽はいくらでも我慢できる。でも、バールの友達のように仕事を保つために致し方なく打った人もいれば、打ちたくなくて仕事を辞めた人もたくさんいる。スクールバスのドライバーや先生の何人かは、気づいたら入れ替わっていた。

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先日5歳以上の摂取が可能になり、長女、次女のクラスメイトでも打った子がいる。 やるせない気持ちで胸が潰れそうになる。

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オーストリアでは打たない人はロックダウンと多額の罰金、政府は接種拒否者ハンターを雇用。 毎週、何万もの人が反対運動に参加している。ウイーンに住む友達夫婦も気温0度の中5時間以上街を 練り歩いてデモに参加していた。老人や赤ちゃん連れの人もたくさんいて、胸が熱くなったという。国によっては未接種だと買い物もガソリンもいれられなかったり、未接種者や陽性者を隔離センターに連行する国も。去年だったら陰謀論だと言われていたようなことが実際公に行われている。

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オーストリアがこの実験的ワクチンを義務化した最初の国になった直後、EU代表のウルズラ・フォン・デア・ライエンは、ニュルンベルク綱領(第二次世界大戦でホロコーストを起こしたドイツの戦争犯罪を裁いた国際軍事裁判の際、非倫理的な人体実験研究に対して行われた裁判の結果生まれたもの)を廃止し、ヨーロッパ全体でワクチン接種を義務化するよう求めている。何故そこまでして摂取を押し進めるのか。実験的なものを摂取せずにも治療の方法があるのに。なぜそんなに必死なのか。

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主流メディアでは報道されない、家庭でできる初期治療法を実践し、普通の風邪レベルの症状で回復した人は身近にもたくさんいるし、ユリアの夫、カルロはその方法で多くの患者の病院行きを避けて治療してきた医師のひとりだ。この初期治療方法と、ワクチンと呼ばれる遺伝子セラピーへの懸念の声をあげる権威と勇気ある医師やサイエンティストたち。独裁的で憲法に反する国家行為を起訴する弁護士たちが世界中でたくさんいる。テレビや新聞、主要メディアのオンライン情報しか見たことがない人でも、少しでも疑問がある場合は他の情報源にも目を向けて見て欲しいと心から思う。

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12月21日、冬至の日に、ナターレのスピリットへ感謝と祈りと願いの手紙を書いた。仲良しの自然治療士に聞いた儀式的なものだ。これを24日まで毎日読み返し、25日の0時に燃やした。

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暗闇の中で真っ赤な炭と炎を見つめながら思った。幸せや豊かさ、答えや救世主を外の世界に求めている限り、平安な日は来ない。すべては自分次第。答えは自分の中にある。そんな根本的なことを思い出すために、自分の主権を取り戻すために、この特殊な時代を選んでみんな生まれてきた「同志」なんだな。そのために、それぞれのペースで悪戦苦闘、切磋琢磨、一歩進んで2歩下がったりしながら、今回の人生を精一杯生きている。そう思ったらみんなが愛おしく、いつまでも合掌して浄化と再生の炎を見つめていた。

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ナターレの朝。ツリーの前にはたくさんのプレゼントが。暖かい家で食べ物があって心身ともに健やかな家族と笑ったり泣いたり怒ったり感動したり、感情豊かに元気に過ごせることに、何よりも感謝。

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それにしても賑やか。兄弟が多いっていいな。叔母さんたちからも、たくさんの本に文房具、お菓子や卓上ゲームをもらった。

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ちなみにナターレ2日前にゆまとみうが書いたバッボナターレ(クリスマスパパもといサンタクロース)への手紙。もう遅いと思うよ、と言うと、パオロがメールアドレスを見つけて、メールで送信。マテリアルガールなみうは、タブレットにアイフォン(本物がいいことを強調)、ポラロイドのほか、文房具にキャッツアイの衣装をリクエスト。ゆまは、とにかく本(去年もらった本の 続きも) 。

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前夜、暖炉の前(消えている方)にようこそのお手紙とケーキを準備。

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みうは暖炉の中に入って、バッボナターレが来た時のシミレーションをして笑った。

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ナターレのランチは、毎年のように一緒に過ごしいる友達夫婦と。

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アンティパストのひとつ、星型のトルタサラータは、トスカーナ黒キャベツとボラジ、ストラッキーノ(フレッシュチーズ)を挟んで焼いたもの。

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プリモはボローニャの伝統に従って、トルテッリーニ・イン・ブロード。詰め物パスタ、トルテッリーニはボローニャで有名な友だちのお店、スフォリア・リーナのもの。1キロあたりの価格はじりじり上がっていて、ボローニャに来た13年前は手作りのものは1キロ33ユーロくらいだったけど、 今や40ユーロ近い。来年は誰かに弟子入りして手作りしてみようかな。

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伝統ではプリモの2品目にラザーニャが。うちではプリモは一品でセコンドに。

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友だち夫婦が作ってくれたブロードをとった鶏や牛肉は、ボッリートミスト(写真外)としてサルサ ヴェルデ(緑のソース)と提供。緑のソースは通常パセリ、アンチョビ、ケイパー、酢、オリーブ オイルにパン粉で作られるが、パセリが八百屋になかったので、人参の葉っぱで代用。なかなか 美味しくできた。それに、ナッツ、レンズ豆、キノコなどで作ったベジローフに、キノコのベジグレービーソース。付け合わせに自家製ザワークラウトやロシア風ポテトサラダも。

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ドルチェはカルツォラーリのパネットーネ。それに果物やナッツをつまみながら大人はおしゃべり。

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子どもたちはもらった本を読んだり絵を書いたり。

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暗くなったらモモたちがやって来た。みんなボン・ナターレ!

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キッチンを片付けて、暖炉の前で一休み。暖炉にくべる薪には大抵虫たちが住んでいる。冬を越すための住処にしているのだろう。火にくべられて、隙間からいろんな虫が出てくる。虫たちは住処を燻され燃やされ大慌て逃げ回るも、木から離れることはとんどない。アリたちもそうだ。初めは薪の上を走り回るも、そのうちじっとして、運命に身を任す。

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子どもたちもそんな虫たちを見つけると、助けられる虫は助けてあげている。けれど、何かありがた迷惑なことをしているような気になるほど、虫たちには潔さがある。死ぬことを恐れていないようだ。ここで終わりではないことを知っていて、どこに帰るのかさえ知っているかのように思えてならない。今、人々を侵しているのはウイルスではない。恐れだ。

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振り返れば、気付きだらけの一年だった。自然の中に身を置き頭から心に戻ると、気付かされることが本当にたくさんある。助け合えるコミュニティを作ること。人それぞれの歩みを尊重し、同情心を持つこと。自分の領域を守ること。自分の真実を声が震えてでも愛を持って伝えること。祈りのパワー。すべてはひとつ。答えは愛。

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今年もみんなワクワクをありがとう。他愛ない瞬間、小さな発見や喜び、自然の中に見つける神がかった繊細な美しさ、なんとも言い難い偉大なエネルギーに胸を打たれたことなどを、ブログやソーシャルネットワークを通してシェアして来た。それに感化されたりひらめきを得たり勇気付けられたという方々、なんらかの形でここから生まれる作品をこれまで、あるいはこれから手にしてくださる方々、応援してくれる両親、家族、世界中の同志たちに、愛と感謝を捧げたい。それに、私が表現する世界が誰かのインスピレーション、気付き、癒しに役立っているようならこの上なく嬉しい。ありがとう、ありがとう、ありがとう。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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