ボローニャ「森の家」暮らし

充実の隔離生活。リセットでリフレッシュする2月。

2月に入って早々に夫パオロの大工たちが例のウイルスらしきものにかかった。案の定パオロも体調が怪しくなり、寝室に隔離。数日後PCR検査で陽性に。それで一家で隔離生活に入った。

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長女のゆまと次女のみうはオンラインで授業に参加。小学校も中学校も冬から常に誰かしら隔離生活をしている状況なので、先生も生徒も慣れたもの。中学校は8時から14時まで繋がりっぱなし。小学校は8時半から13時まで30分繋がったら30分自習が基本。

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三女のたえは姉たちが授業中、はじめの頃は「たえもしゅくだいする!」と日本のドリルを引っ張り出してきて、数字や知恵ドリルをやりたがった。

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ひとり遊びをしている間、私は家事や仕事。

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気がつくとアクリル絵の具で遊びだして、

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すごいことになっていることも多々。こちらモンスター。

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今度は魔女。

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折り紙は最近ゆまがよくチュートリアルを見ながら作っている。

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たえはコラージュ専用。

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ボタンに、壊れた時計に、いろんなものを貼っていた。

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みうは石に絵を描いたり、

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葉っぱで色々作ったり。

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ずっと天気が良かったので、外でもたくさん遊んだ。

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幼稚園には大きな庭があるのに寒かったりぬかるんでいたりすると外には出してもらえない。特にこの2年、先生たちは子どもたちが体調を崩さないように気をつけてきたのだろう。でも子どもは風の子。室内に一日中いるより、外の空気に当たって泥んこになって遊ぶ方が絶対にいい。

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ボローニャでみうとたえが通っていた保育園、幼稚園は雨でもなんでも外で遊ばせる特殊な園だった。長靴にレインコートも常備して、汚れてもへっちゃら。親もそれを望んでこの園に通わせる人が多かったから成り立っていたのだろう。

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室内には2階から滑り降りる木の滑り台や、ぶら下がれたり登れたり飛び降りたりできるようにもなっていて、とても楽しかった。いまの幼稚園ではできないことがいろいろあるけれど、うちでたくさんさせてあげたい。

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これからいい季節になるので、放課後も外でたくさん遊べるようになる。

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9月から10月にかけて作り始めたコンポスト。4ヶ月たってひっくり返してみたらいい感じの堆肥になっていた。これはひっくり返してもう数ヶ月おいておく。

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こっちは1年経ったコンポスト。ウッドチップが主な材料で、まだまだ大きなピースが残っているのでふるいにかける。

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古い引き出しを改造して作ったふるい。

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下にはふかふかのコンポスト。

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畑は耕さないノーディッグ式の2年目。1年目は畑一帯に15センチコンポストを敷き詰めるのに苦労したけど、今年からは冬に一度だけ2、3センチ撒けばいい。秋に苗を植えたサラダや、夏に種が落ちて増えたボラジがあるこのエリアはたえの畑。ここに早速コンポストを撒いた。

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苗作りもホームメイドコンポストで。パーライト、バミキュライト、ロックダストを混ぜて、

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種まき。基本的に上弦の月の時は土の上に伸びる植物、下弦の月の時は根っこを収穫する植物の種をまくといい。

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古い雨どいにはグリーンピースを撒いた。発芽して少し大きくなるまでグリーンハウスに。

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豆は直接畑に撒くと鳥が食べてしまうので、この方が安心。植え替えは、畑に溝を作って雨どいからスライドさせる方法。去年チュートリアルを観て、やってみたかったのだ。楽しみ。

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2、3日後、サラダ系の種はあっという間に発芽し、太陽の方へ伸びていた。ノーディッグガーデニングの考案者チャールズ・ドウディングにならって、種はマルチソーイング。サラダ系は小さな容器に筋状に撒いて、これくらいになったら仕切りのあるポットにひとつずつ深く植え替える。

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ビーツやラディッシュもマルチソーイングで5~10くらい一緒に撒く。チャールズのビデオで「一緒に育つ方が嬉しいみたい、ほらね。」とビーツや玉ねぎを、にこにこ見せていたのが印象的だった。

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去年もこうしてたくさん発芽させてから畑に植えた。問題はモグラだった。柔らかいコンポストにはミミズもたくさんやってきて、それを食べにモグラがたくさんトンネルを掘るのだ。モグラはネズミのように根っこを食べることはないけれど、穴を開けるので根が痛んでしまう。超音波を発する機械を土に刺したり、モグラが嫌がる匂いを発するものをトンネルに撒いたりしたけれど、効果はいまいち。先月遊びに来た友だちと話していると、芝生をダメにするモグラに悩まされていた彼は一日中芝生を眺めていて、動きがあるところを見計らってシャベルでひと突き、はいさようなら……。これが一番の対策だというけれど、この方法は私には到底出来ないので、もうひとつ効果抜群だったという方法をやってみた。

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モグラの穴が横に通っているところを掘り、テラコッタの植木鉢に濡れた新聞や枝など煙がたくさん出るものを入れて火をつけ、植木鉢を横にして埋め、上から蓋をし(写真のように高い蓋でなくていい)、トンネルに煙が行くようにする。煙で炙って追い出す作戦だ。彼は、200メートルくらい離れたところから煙が上がったりしたと言っていたけど、残念ながら他の穴から煙が上がるのはみられなかった。これを3箇所くらいでやってみたけど、その後トンネルは増えていない気がする。これで安心して苗を植えられるといいけど。

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秋冬を通して収穫し続けているボラジ。零下の朝が続いた時は不織布をかぶせていたので、葉は小さくなったものの、凍ってダメになることはなかった。

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お昼は大抵たえもキッチンに立ちたがるので、(飽きるまで)一緒に料理。玉ねぎ、人参、セロリなど炒めて、ジャガイモと水を加えて、煮えたらボラジを加えて、柔らかくなったらミキサーに。

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この日はフジッリと合わせ、緑のパスタの出来上がり。

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ドルチェも一緒に作った。ミキサーで粉状にしたオートミールに、カカオ、ピーナツバター、チアシード、刻んだチョコレートに溶かしたココナッツオイル、デーツシロップを混ぜてボール状にして冷蔵庫に。

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焼かないピーナツバター&チョコレートクッキーの出来上がり。

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この日はバレンタイン。パパにケーキ、ではなく、近所の友だちの誕生日ケーキを焼くことに。この数日前に私とゆまも陽性になったものの、熱とあちこちが痛いのが1、2日続いただけで回復。みうも夜発熱したようだったけど朝には元気だったので検査もしなかった。そんなわけで子どもたちは元気を持て余していたら、普段はボローニャにいて週末だけやってくる近所の友達一家も兄弟で陽性になり、10日間は森で隔離中だと聞いて大喜び。

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14日は次女のネカの誕生日だったので、授業が終わってからケーキを焼いて届けた。

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小雨の中、ネカたちは外で遊んでいた。

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おめでとう! 思わぬサプライズにネカ大喜び。

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気の合う友だちが近所にいて、本当によかった。

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私と子どもたちはあっという間に回復したけれど、オーバー60で肥満気味のパオロは回復に何倍も時間がかかった。熱も咳もほとんどなかったけれど、なにせ体力がなく、ずっとベット生活。それでたえはご飯を一緒に届けたら、「パパに本を読んであげる」と部屋の隅に椅子を持ち込み、何十回も読んだ本のお話をしてあげていた。

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1週間はベッドで食事をしていたパオロ。その後私たちも陽性になったので、食事は一緒に摂るように。それでもみんなたいしたことがなかったのは、一年間ビタミンC、D、亜鉛、クェルセチンなどを摂って身体作りをしてきたおかげだと思う。

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パオロに症状が出始めて4日後にホームドクターに連絡するも、何も処方してくれなかったけど、親友のIPS細胞の研究者で循環器学のドクター、カルロに連絡すると、抗生物質や薬局で手にはいる薬を用意してくれた。カルロはこの2年たくさんの人たちを身近な薬で治して来た。初期に手当てすればほぼ何て事ないのだ。抗生物質を6日摂っていたので、回復に発酵食品は欠かせない。健康を取り戻すには土作りからと、農業から変える活動をしている大尊敬するドクター、ザック・ブッシュは、抗生物質を摂った後、乳酸菌などのサプリを飲んでも3ヶ月経っても腸内の良い菌はほとんど増えなかったけれど、サプリを摂らず発酵食品を摂っていたら1ヶ月で多くの良い菌が増えたという臨床実験の話をしていた。冬に入って早々から常備している自家製サワークラウトは毎日、発酵ものに目覚めた友達のシェフ、フランコが作ってくれたカボチャやビーツのピクルス、3年ものの味噌など、毎日少しずつ発酵食品を摂るのは習慣に。

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2カ月前から朝の習慣に加わった、アユールヴェーダのタングスクレーピング。朝起きたらまず口をすすいでスクレーパーで舌を綺麗にする。寝ている間に、舌の上に溜まった雑菌や肝臓が出した老廃物などをこすり落とすのだ。もうこれをしないと一日がスッキリ始まらない。子どもたちにも一度で習慣になった。この後大人はレモン半分を絞った水500mlを飲む。これはかれこれ1年以上続けている。パオロは2週間近く寝ている間に6キロ減量。1日1、2杯は飲んでいたワインを絶ったのも効果があったのだろう。あと10キロ減らないと標準にならないので、これを機会に減量を考え始めた。

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ちょうど私も1月から月2回断食を始めたところ。減量が目標ではなく、デトックス、免疫力アップ、血液や肝機能の浄化などが目的。ハタヨガを教わっているガブリエレが、興味があればとエカダシのカレンダーを教えてくれたのはちょうどいいタイミングだった。エカダシとは第11番目の日という意味で、新月、満月からそれぞれ1日目に一日断食をする。ちょうどこのブログを書いている今はエカダシの日(国や地域で時間が変わるので、興味のある人は滞在国の日程カレンダーを探す必要がある) 。今回は6時9分から翌朝3時42分なので、丸一日と寝ている時間を入れると合計33時間になる。一日中暖かい飲み物を飲んでいるので、お腹もたいして空くこともなく、頭も冴えている(写真は先月。松葉とローリエと生姜を煮出したものを飲んでいた) 。断食のメリットは何年か前から読んでいて興味があったけれど、やってみるに至らなかった。先月ガブリエレに「今日エカダシだよ」、と教えてもらった時、よしやってみようと考える事もなく実行できたのは、2年間ベジタリアンの生活なのと、メディテーションも日々の習慣になり、精神的にも準備ができていたからかもしれない。

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パオロは自主的に、ウィークデーはランチを抜くようになった。保温ポットに入れて持っていく暖かいお茶を飲んで過ごしている。週末は朝食を抜くので16時間の断食ができる。調子は良さそう。これに一日20分の運動を加えたいところ。これからの季節早く夕食を終えられれば(これがなかなか難しい)、食後に散歩できたらいい。

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私は38度の熱が出た翌日、急遽頼まれたオーダーに取り掛かっていた。地元出身でボローニャ界隈で人気のパン屋さん、カルツォラーリに、バレンタイン用のチョコレートのパネットーネに刺す「愛の矢」を30本頼まれたのだ。弓はうちのポストに入れて納品。スタッフが取りにきてくれた。それに、置き土産も。

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焼きたてのパンと、パネットーネが門に引っかかっていた。

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残ったアルミのワイヤーで「愛の矢」を作って刺した。塩キャラメル味のチョコレートパネットーネに、口福を味わった。

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15日間隔離生活をしている間、大きい作品も作った。去年の夏に依頼されて先送りにしていた作品は、3メートルあるソファーの上に飾りたいというもの。リクエストは自然のスカイラインで、あとはお任せだった。イラストを描いて壁に投影して拡大し、たえに手伝ってもらって実物大にトレース。

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出来上がり。これがなかなか可愛かったので、もうすぐボローニャにオープンする友だちのビーガンのお弁当屋さん、パスト・ノマデ(放浪食の意)にも作ってあげることに。

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野菜やハーブの畑の景色に添えた言葉は、「庭(に植物)を植えることは、未来を信じること」。オードリー・ヘップバーンの名言のひとつ。

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同じくお弁当屋さんに作った気球に添えたのは、「笑顔を植え、笑いを育て、愛を収穫する」。

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人に喜んでもらえることほど嬉しいことはない。パオロの世話も、病み上がりに大急ぎで作った「愛の矢」も、友達の新しい冒険を祝って作った作品も、何も見返りを期待せず、純粋に相手の笑顔を想って動いたり作ったりしたこと。

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すべてはエネルギーでできている。いい気は同じバイブレーションのものを引き寄せる。今月の隔離生活は、新しいスタートを切るためのリセット期間になったようでとてもよかった。

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春はこれから。新しい季節が楽しみでならない。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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