ボローニャ「森の家」暮らし

イベント目白押しの夏。毎日お祭り気分の7月。

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ヒマワリが咲き誇り、麦は収穫され、藁ロールが転がる森は、夏真っ只中。

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うちの裏のアルファルファの畑は、2度目の収穫が終わった。

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トラクターが円筒状の藁やアルファルファのロールをころりころりと作っていく様子を眺めるのはとても楽しい。

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そして残されたロールは野外インスタレーションのよう。

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末っ子たえはいつでもロールに乗りたがる。

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夏の風物詩。

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7月の第一日曜日には、隣町のベーカリー、カルツォラーリが主催するマンジロが開催される。

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10キロほどの山道を歩きながら食べたり飲んだりする楽しいイベントは、今年で20周年。

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トレッキングコースにある集落の薪のオーブンで焼かれたピタパンは、コリアンダーがアクセントのアジアンサラダが挟まれた。

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サラダのレシピは、各地でアジアンフュージョンの料理のワークショップをするアンジーのもの。

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丘を越え山を越え、

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次の休息地点へ。

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小高い丘の上では、環境のガーディアンである蜂の生態を保護し、生物多様性を強化して、環境を守る活動から生まれたBeeBoのハチミツで作ったレモネード。

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途中冷たい湧き水でリフレッシュ。

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いろんなタネが入ったクラッカーがヒラヒラぶら下がって可愛かった森では、ブラスバンドのパフォーマンスも。

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なが~いフォカッチャのサンドイッチは、カットする場所によって具が違って楽しい。

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エディブルフラワーのデコレーションがワイルドなシュークリームは緑のバックに映えて絵画のよう。

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2021年から毎年参加しているマンジロ、3年前4歳弱だったたえは、ほぼ私がおんぶしていたけれど、今年はひとりで完歩。

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当時のたえを覚えている参加者もいて、「大きくなったね!」と声をかけられた。

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毎年7月半ばには、地元でいちばんの夏祭り、麦の収穫祭が行われる。

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通りには市がたち、3日間朝から夜まで賑やか。

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日本から遊びに来てくれたPale Juteのオーナー、コータさんと、仲良しの板谷ゆかさんと一緒にお祭りへ。

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農場の動物と集落の旗を掲げたパレード、昔の脱穀機の実演など。

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毎年生パスタの実演をしていたラッファエッラ一家は、今年は実演は無しでパレードに参加。

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トスカーナをベースにするファンクソウルリズム&ブルーズのファントマティックオーケストラは、ここ数年お祭りのたびに来てくれて盛り上げてくれる。

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第一次世界大戦前の脱穀機は今年も健在。

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こちらは教会の広場で展示されたミニチュアの脱穀機。機械式でちゃんと実物同様に動く。

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広場には昔のおもちゃや昔ながらの仕事の実演や展示が。

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古代麦の丈の高い麦わらを編み込んで作るカゴ。

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友だちのカロリーナは編み方を教わっていた。

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鍛造

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木工

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ブドウの蔓や柳のカゴ

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羊毛の加工

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刺繍など、どれも魅力的で次世代に伝えたい手仕事ばかり。

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こちらは夏のお楽しみの夜店。毎週水曜日の日没から夜中まで開催。

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誰でも出店できるので、プロ、アマチュアほか子どもたちが本やおもちゃを売っていたりもする。

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手作り化粧品やマクラメと天然石のアクセサリーを作る友だちサラの石鹸、愛用中。

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町で唯一のデリカテッセンも夜中まで営業中。みんなよく夜中にドーナツや揚げクリームパンを食べている。次女のみうが選んだのはチキンナゲット。

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この日は毎年恒例の木製ゴーカートレースが行われた。プレゼンターは今年もエレナとガブリエレ。ガブリエレは半分金髪のカツラにタイツにヒールで、半分はスーツの不思議なコスチューム。

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それぞれのチームにユニークな応援団。

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急な坂の上の幼稚園から出発して教会の前を下り、目抜き通りの裏がゴール。団体戦で、合計で点数を競う。

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帰りはトラクターのワゴンに乗って楽々。

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ローコストなこんなイベントに人が集まってコミュニティが盛り上がるって最高。

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こちら村の広場で行われたピッツァコンテストは、今年初のイベント。

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3チーム、それぞれがピッツァ・マルゲリータと、スペシャルピッツァで争う。

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どのチームでも親しい友たちが腕をふるっているので、友情ではなくピッツァで審査しなければ。

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3チームともプロや玄人はだしがいて、ハイレベルの戦いになった。

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生地は3チーム合計600個が準備されたそう。

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チケットは400枚ほど売れたという。ピッツァにビールとソフトドリンクで参加費は大人15ユーロ、子ども10ユーロ。集まったお金は地域に還元されるので、参加者にも主催者にもうれしい結果。毎年恒例になりそうなイベント。

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22時半をとっくに回って表彰式。マカロニを箱に入れて投票したピッツァコンテスト、優勝したのは圧倒的な点数を稼いだセレーナのチーム(右)。おめでとう!

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そのセレーナ、人気のバールを兄弟で経営していて、大抵朝5時からのシフト。夜中まであったピッツァ大会で疲れているかと思いきや、翌々日にはロッククライミングに誘ってくれた。

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うちからドライブすること30分。トスカーナ州にあるロッキーノは、こんもりした丘の隣にある岩山で、トレッキングやロックククライマーに人気。

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セレーナのパートナー、マッテオがインストラクターをしてくれて、初心者の私たちでもロッククライミングを楽しめた。

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高所恐怖症の長女、ゆまは低いレベルでチャレンジ。上まで無事登れて喜んでいた。

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たえはロープもなしで素足ですいすい登っていて、マッテオに才能ある!と太鼓判を押されていた。

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いつも素足のたえ、足はしっかり開いて健康児そのまま。ヒールを履くのが夢だけど、マノロブラニクは難しいねぇ。

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ロッククライミングは少なくともひとりはパートナーが必要で、ロープを下で引っ張っていてくれる人との信頼関係が大切。それに持久力、判断力も問われる。子どもたちと一緒にできるのもいい。時には諦めて、人に支えてもらうことも大事。いろんな教訓がある。私もセレーナも困難な岩山があると燃えるタイプだね、とマッテオは笑う。そうかもしれない。

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ひとりで仕事をするのも好きだけれど、共同で作り上げるのも好き。親友でドイツ人アーティストのユリアと、来年の2月にある展示のために準備を始めて2カ月ほど。

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ボローニャ旧市街のユリアの自宅兼アトリエは、それはそれは素敵な空間で、ユリアの実験的な作品やさまざまな素材に囲まれて、ここにいるだけでクリエイションの神さまが近くにいるよう。

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5月から週2度ほど下山して作品を試行錯誤で一緒に作ってきたものの、まだこれ!というものは生まれていない。今回の展示スペースはギャラリーではないのでいろいろ困難。初めての試みがちゃんと形になるのには、少なくとも一年間はトライアンドエラーを繰り返さないと、というユリア、本当にそう思う。

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編み、織りなどの技術を使ったファイバーアートを得意とする彼女は、焼き物も手掛け、織った生地を土に埋めてから焼いたり、鉱物で染めたり、さまざまな素材と技法使って作品を制作する。

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焼き物に使う土の採掘場で合宿している時に思いついたという形を一緒に作って見ることに。

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思い立ったらすぐ行動。休憩もそこそこに、環境が許すなら朝から晩まで制作に打ち込める私たち。なんでも話せてお互いの意見を尊重し、美意識をシェアできて同じリズムで作業を進められる。最高のパートナーだ。

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夏休みに入ってすぐ、ユリア一家はスイスの家に行ったものの、仕事を進めるためにひとりで戻ってきた。それで数日私も下山して作業。2泊3日の合宿は、とても楽しかった。この日は朝6時半に朝食、その後すぐに作業を初めて、昼頃ユリアと別の仕事をしているアントニアが魚を買ってきてくれて、一緒にランチ。

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それから黙々と作業を進め、夜は私の友だちがあちこち遠くから集まったので一緒に外ご飯。

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一歩家を出ると町の喧騒のなか、あるいは大自然のなか。どっちも経験して、今は相対的には自然の中が好きだけれど、たまには女友だちと夜の町を散歩なんていうのも悪くない。

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家で仕事をしていると、毎日の掃除洗濯、食事を作ったり、おやつをせがまれたり、宿題しなさい、片ずけしたの?と何度も言ったり、動物の世話をしたり、子どもたちが喧嘩して呼ばれたり、集中できる時間は15分、多くても30分といったところ。

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ユリアはこの夏初めて3週間家族と離れてひとりで制作に打ち込んでいた。1週間は焼き物の土の採掘場にひとりこもって、実験を繰り返した。日常的な思考回路から脱するにはまる3日かかった。それからは別の世界にチューニングされたようで、ひらめき力が高まり、さまざまな作品の卵が生まれたという。友だちはスペインの人里離れたアーティスト・イン・レジデンスで自分と向き合って制作に没頭する体験をしてきたばかり。私もそんな時間が必要だとつくづく思う。

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うちの長女と次女がユリアの長男と次男と同い年で、小さい時から兄弟のように育ってきた。今はゆまはユリアのスイスの家でドイツ語を学ぶために合宿中。それも、9月からユリアの長男ニコライと一緒にボローニャの高校のドイツ語科で勉強することに決めたから。育ってきた環境はまったく違うけれど、通じるものがたくさんある私たち、前世でもきっと強い絆で結ばれていたに違いない。この人生でも彼女といろんな体験ができて幸せ。

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夏は友だちが遊びにきてくれることが多く、大勢でテーブルを囲む機会も多い。

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それでいろんな料理を作った。あるいは作ってもらった。

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ここのところ何人もの女友だちと深い深い話を交わす機会がたくさんあった。重大な決断をした人たちは、そこに至るまでに明らかに何か大きな力による導きがある。みんなそれぞれがアウェイクニング、目覚めの時を迎えていて、みんなが同じ大きな波を体験している気がする。

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自分の外の世界は内の世界を映し出し、自分の内の世界は外の世界に反映される。争いの時代は終わり、お互いから学び合い、支え合い、ともに輝く時代に移行していると感じる。

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この世で絶対的なことは、自分が存在すること。自分の名前。それに、私は子どもたち3人をこの世に生み出したこと。それくらい。あとは不変なものは何もない。人生も食事と同じでずっと同じだと退屈だ。同じ素材を使っても、スパイスや調理法でバラエティに富んだ料理を楽しみたい。未知の味や食感も体験したい。酸いも甘いも目一杯味わいたい。そして新しい扉を開けて、新しい風をあらゆる感覚を使って感じたい。そんな、好奇心と遊び心がうずうずする、灼熱の候。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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