ボローニャ「森の家」暮らし

まだまだ続く夏休み。旅心を刺激される8月。

バカンスが始まって3カ月目。8月にもなればもうみんな何度か旅行に出ていて、そろそろネタに尽きてくるころ。そんな事情だけではないけれど、バカンスの土産話と一緒に近くから遠くから友だちが遊びにきてくれた。

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アルフレッドとクリスティーナ一家は、ローマとバッサーノの友だちを連れてきた。みんなが遊びに来てくれたのは気付けば2年ぶり。昨年の9月にはふたりが手がけるユニークなスタイルのベジタリアンレストラン、パストノマデで和食を振る舞った。毎月一度、各国の料理をネイティブなシェフが振る舞うイベントを行っている。今度韓国料理の会があるというので、長女のゆまは絶対いく!と張り切っている。

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毎年夏にトスカーナにキャンティから遊びに来てくれるミリットは、イスラエル出身のグラフィックデザイナー。もう何年も生け花を習っていて、ここ数年陶芸を習って器も作っている。今年の夏はスペインのアーティスト・イン・レジデンスに滞在して、各国から集まったさまざまなアーティストとの交流と、クリエイティブプロセスに没頭した体験談を聞かせてくれた。

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ミリットとマヌエルは、5年前、ボローニャの旧市街からフィレンツェの南、サン・カッシャーノ・ヴァル・ディ・ペーザの古民家に引っ越した。

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あたりには葡萄畑とオリーブ園、糸杉が並ぶトスカーナらしい景色が広がる。野菜やチーズほか、ワインやオリーブオイルも近所のオーガニック生産者のところから直接買いに行けるとても素敵な環境。友だちから借りているという家もふたりのセンスが光っている。

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ミリットの家からシエナ方面に30分行くと、とても素敵な川がある。2年前から一緒に行こうと誘われていた川にやっと来れた。

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ユニークな形の岩に、明るい色の川床。川はエメラルドグリーンからターコイズのグラデーションで、とても幻想的。

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行ったことはないけれど、まるでタイにでもありそうな印象の景色。はるばる来てよかった!

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タイ風の川からミリットの家に戻ったら、漬物つくり。

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料理が上手なミリットは、発酵食品にはまっている。

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この日はお昼に食べたスイカの皮のピクルスを作った。

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夕食の準備。ミリットは、とても薄い生地が何層にも重なったフィロを使ったオーブン料理を作ってくれた。パリパリの生地の中にジャガイモとかぼちゃのフィリング。ナツメグがきいている。私は揚げだし出し豆腐を作った。

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素敵なテラスでご飯。バカンス気分倍増。

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翌朝、日の出とともにウォーキングに出かけた。肩に支障が出て、しばらくストレッチもヨガも辞めてみてとカイロプラクターに言われてから、ウォーキングを始めた。この日は川沿いの道をてくてく歩いて90分。日中は溶けそうなくらい暑くなるけれど、早朝ウォークは気持ちいい。

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散歩中に見つけた羽根はグッドラックのサイン。

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帰ったら子どもたちも起きていて、マヌエルがコーヒーを淹れてくれていた。

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オーバーナイトオーツとキアシードにフルーツをのせた朝食。うちでも毎日これを作っていた時期があった。

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外でお絵かきする人、宿題する人をおいて、ミリットと町へ。

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エミリアロマーニャと雰囲気が違ってワクワクする。

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ミリット行きつけのバールのテラス席でおしゃべり。スペインでのアーティスト・イン・レジデンスの後、フランスでクリエイティブワークショップに1週間参加してきたばかりの彼女、今度はイスラエルの執筆家の詩のワークショップに参加するそう。好奇心のおもむくままに、結果を求めずいろいろな体験を積んでいる彼女にたくさんインスピレーションをもらった。

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家に帰ると子どもたちはいろんな作品を作っていた。これはみうが描いたミリットの家と、昨日の川の絵。

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お昼は庭で。蕎麦サラダに焼き生春巻。中身はキャベツ、春雨、豆腐、ズッキーニなど。
8月はたくさんのイベントがあった。

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ラヴェンナ近くのリゾート地、チェルヴィアの塩田のなか。

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ここで行われたのは、ビーズのアクセサリーブランド、コッラニーネ・コロラーテ(色づいたネックレス、の意味)の4周年お祝いディナー。

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招待してくれたブランド創立者ロレンツォとジャコモには、ふたりのブランドのロゴが入った雲を贈った。

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ケータリングを担当したのは、料理教室やイベントで売れっ子のシェフ、アッズーラ。

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旬の野菜と果物をメインに構成されたメニューは私好み。

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塩田に映る夕日をバックにフラミンゴの群れが飛んで行くシーンはまるで映画のよう。

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ゲストにはガラスのビーズのブレスレットが贈られた。

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彼らのネックレスをパリのオリンピックでイタリアの女子バレーボール選手たちがつけて、見事史上初の金メダルを獲得。幸運を呼ぶネックレスと話題になった。

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4周年おめでとう!

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地元に戻ってここは近所の友だちが自宅の庭で毎年開催する夏祭り。毎年町中の人がくるのではないかというくらい沢山の人が集まる。

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今年は主催者の親戚のはるかちゃんがおにぎりを握るというので、私も90個握っていった。

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こんなお祭りを仕切っているのは男性陣。準備から片ずけまですべてこなす。みんなほんと楽しそう。

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持ち寄りの料理を味見するのも楽しい。毎年ここでしか顔を合わせない人たちもいて、子どもたちの成長にみんな目を見張る。

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DJはこの辺りの夏祭りで引っ張りだこのDJ SUMBi。工場勤務のおじさんは、照明や音響を車に積んでどこにでも出張DJ。年齢関係なくみんな盛り上がって楽しそう。 

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市役所の広場であったのは、環境教育イベントなどを主宰するグループが主催したパエリアの会。

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おじさんたちふたりが大きなパエリア鍋に丁寧にトッピング。どこから来たの?と聞くと、「美術高校から。ふたりともクラスメイトだったんだ」って。ちょっと笑った。おじさんたちはお祭りに燃えるのだ。

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出来上がり。

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こんな大鍋ふたつと小鍋ひとつで150人で食べて少し余ったくらい。サフランがきいていて美味しかった。

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市役所の反対側の教会の前では教会チャリティくじ引き大会。

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一回1ユーロ。子どもたちはサランラップやシャボン玉セットしか当たらなかったけど、おもちゃのデジタルドラムが当たった友だちに「(うるさくて)迷惑かもしれないけど!」と譲ってくれて末っ子たえは大喜び。

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隣町の教会のお祭りでは市場の他に大きなステージが設けられ、毎晩遅くまで賑やかだった。

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人里離れた集落の小さなお祭りでは、薪のオーブンでパンやイノシシ、ジャガイモが焼かれ、バイオリンやギター、クラリネットにパーカッションなどで伝統的なフォルクローレな演奏に、若者もお年寄りも一緒に踊っていた。

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バッリ・モンタナーリ、山人のダンスと呼ばれる踊りは村祭りでよく踊られる。とても楽しそうなので、クラスが開催されたら是非参加したい。

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いつもだと9月上旬に1週間ほどバカンスに出掛けるところ、うちの長老の犬、ゆずがあちこちガンでそろそろ末期かもしれず、置いていくのは可愛そうなので、みんなで留守にするのは辞めた。

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子どもたちにはいろいろ体験させてあげたかったので、友だちにバカンスに連れて行ってもらえたり泊まりに来てくれたり、日帰りや一泊二日で子どもたちと遠出したり、普段と違ったことができてよかったかな、と思う。写真は、次女のみうが親戚みたいな友だちヴェロニカに姪っ子と連れて行ってもらったソレントで。

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ゆまは9月からドイツ語でドイツ式の授業をする高校に進学することを自分で決めた。親友のドイツ人ユリアに相談して、ドイツ語の環境に慣れるためにユリアのスイスの家に3週間近く泊めてもらった。ドイツ語強化合宿と思ったけれど、結局はユリアのお母さんと朝1、2時間ドイツ語を勉強して、あとは幼馴染のユリアの子どもたちとイタリア語で遊んでいたのでどれだけドイツ語を覚えられたかわからないけれど、初めて長期で家を離れ、ホームステイをさせてもらったことはいろいろ刺激になったに違いない。写真はイタリアとスイスの境界線にあるマッジョーレ湖で。カヌーを漕いだり、5メートルの高さから飛び込む体験もしたそう。

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何か特別なことをさせてあげようと思わなくても、子どもたちはいろいろなことを思いつくもの。

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川底の石を砕いてこねたら粘土になることがわかった時は、みんなで一生懸命こねていた。

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それを身体中に塗ったり盛ったり。

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私もいろいろ作って楽しんだ。

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長い枝があれば子どもたちはいつだって小屋を作る。

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暗くなるまでプールに入ったり、

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遅くなるまで映画を観たり。

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夏休み、きっと楽しめたと思う。

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旅人の友だちガイアからオーダーされたこの作品は、川で待ち合わせして渡した。遠くに住む友だちへの誕生日プレゼントだそう。ハート、トラ、ブドウのツルにバラ、オリーブの枝がリクエストだった。作品づくりのプロセスは、イマジネーションの旅のよう。本を読んだり映画を観たりするのもそう。好奇心と想像力を刺激される旅をたくさんしたいと思う、夏のおわり。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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