
オペラ『魔笛』に心酔中。
三連休、いかがお過ごしでしたか?
編集Dは、初日から新国立劇場の新制作オペラ『魔笛』を鑑賞してきました。
上演された『魔笛』は、モーツァルトがこの世に最後に残した作品であり、現代美術界の巨匠ウィリアム・ケントリッジ演出のもの。すでに世界各国で上演されている大人気演出作品です。
ケントリッジ氏といえば、木炭とパステルを使ったドローイングが有名。
客席に座ると、オーケストラの音合わせと、そのドローイングで描かれた舞台に見入っていました。
製図のような、星座標のようなドローイング。そこに光の弧が描かれ、ストップモーションにより徐々に舞台の世界が広がっていきます。
物語は少し込み入った登場人物で構成されているのであらすじを紹介すると難しいのですが、とーっても簡略的に説明をすると、王子と娘が結ばれるために試練に挑むファンタジックな冒険物語。(詳細はこちら)
そして、ふたりを取り巻く個性豊かな登場人物が全員、愛おしいキャラクターなのです。
とくに大ファンになったのは、作品の冒頭に王子を大蛇から助ける三人の侍女。彼女たちがあまりに愛らしく、コミカルな動きと軽やかな曲に、緊張しながら見始めた気持ちがいつの間にか解きほぐされました。
物語の冒頭、三人の侍女が王子を大蛇から助けるシーン。撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
そして、娘の母である夜の女王によるアリアのシーン。誰しもが一度は耳にしたことがあるのでは? という有名な曲ですが、高音の歌声の美しさと、まるでプロジェクションマッピングのような演出で宇宙空間へ放たれたような衝撃。
夜の女王、白いドレスに赤い袖の切り返しが、妖艶な美しさと迫力を増大していました。衣装のドレスがどれも華やかなので、そちらも見どころです! 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
ちなみに、このケントリッジ氏が手がけるプロジェクションマッピングのような演出は、初演が2005年。まだまだプロジェクションマッピングが普及していないころ。それを1791年にウィーンの一般市民が楽しめる歌芝居として作曲、初演されたこの作品に落とし込んだところがまた興味深く。時代を超えてなお、このファンタジックな世界観はさまざまな演出により、私のようなオペラ初心者でもじっくりと楽しめる作品として愛され続けているのです。
第一幕と二幕の間には25分程度の休憩も。一緒にシャンパンやコーヒーとともに感想を伝え合うのは、休憩時間がある作品の醍醐味。シャンパンに後ろ髪を引かれながらも、ロビーから見える中庭が気持ち良さそうで、テラスで時間を過ごすことに。新国立劇場はこの中庭を囲むようなロビーも魅力でした。
第二幕は一幕よりももっとあっという間にすぎてしまい、拍手はなかなか鳴り止まず、劇場全体が感動に包まれた余韻に浸り帰路に。
テラスの水辺越しに見えるロビー。シャンパンやワインなどのアルコールから、軽食やデザートのワゴンに、カフェバーも。
ファンタジックな冒険物語は、何度でも観たくなる作品。何より、ケントリッジ氏のあの不思議な舞台の世界にまた迷い込みたい衝動にかられています。
『魔笛』は新国立劇場の2018/2019シーズンの開幕オペラ公演。上演はこのあと10月10日(水)、13日(土)、14日(日)と続くので、ご興味のある方はぜひ。この後も有名なオペラ『カルメン』や世界初演となる『紫苑物語』などが予定されているので目が離せません。
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