『フィリップス・コレクション展』が始まりました。
こんにちは、編集NSです。今週から三菱一号館美術館で始まった『フィリップス・コレクション展』に行ってきました。展覧会のチラシに「全員巨匠!」とありますが、その言葉どおり、ドラクロワ、セザンヌ、ロダン、モネ、ゴッホ、マティス、ジャコメッティなどなど、誰もが知る近現代の作家の絵画・彫刻、計75点が出展されています。
アンリ・マティス『サン・ミシェル河岸のアトリエ』1916年。フィリップス・コレクション蔵。
フィリップス・コレクションとは、アメリカのワシントンDCにある私設美術館。鉄鋼王を祖父に持つコレクター、ダンカン・フィリップスが1918年に創設し、彼の私邸にて1921年に一般公開を始めました(当時の名はフィリップス・メモリアル・アート・ギャラリー)。これはニューヨーク近代美術館(MoMA)よりも早い開館なのだそうです。
ダンカン・フィリップス(1886~1966年)が蒐集したのは主に、彼と同時代を生きた作家たちの作品。評価の定まらない同時代の作品をコレクションするのは、とても難しく、一方で愉しみに満ちたものだと想像しますが、今回来日したコレクションの一部を見るだけでも、フィリップスの先見性や見識の深さを感じることができます。
1848年の二月革命に着想を得たオノレ・ドーミエの『蜂起』の、静かな迫力。音楽が聞こえてきそうな、ラウル・デュフィの軽やかな『画家のアトリエ』。旅に出かけたくなるカミーユ・コローの『ローマのファルネーゼ庭園からの眺め』。ピエール・ボナールは、『棕櫚の木』など4作品が出展。現在、国立新美術館では『ピエール・ボナール展』が開催中で、東京はいま世界でいちばんボナール作品がある街かもしれません。
恥ずかしながら私の知らない作家でしたが、オーストリアの作家、オスカー・ココシュカの『ロッテ・フランツォスの肖像』は、美しいと同時に凄まじさも感じる絵。金縛りにあったように見入ってしまいました。調べるとココシュカは、作曲家グスタフ・マーラーの未亡人であるアルマ・マーラーと恋仲だったこともあるアーティスト。残された逸話を見ると、この『ロッテ・フランツォスの肖像』の霊的なオーラもなんだかわかる気がしました。
エドワール・マネ『スペイン舞踏』1862年。フィリップス・コレクション蔵。
作品だけでなく、三菱一号館美術館という場所も、この展覧会を素晴らしいものにしています。フィリップスはくつろげる環境で芸術作品を鑑賞してもらうことを目指し、私邸を美術館として開放しました。今回の展覧会会場のあちこちに、フィリップス・コレクションの写真が展示されていますが、家具が配置された“人が暮らしているような”部屋に絵画が展示されていて、フィリップスが目指した空間を知ることができます。その空間が、ひとつひとつの展示室がそれほど大きくなく、かつてあった暖炉を再現した部屋もあったりする三菱一号館美術館の雰囲気に通じるものがあるんです。
ぜひ、お気に入りをじっくり鑑賞したり、新たなお気に入りを探してみてください。
イレール=ジェルマン・エドガー・ドガ『稽古する踊り子』1900年頃。フィリップス・コレクション蔵。
ミュージアムショップではいろいろな関連グッズが販売されています。面白いと思ったのが「ミニチュア絵画」。この記事中に写真を掲載したマティスの『サン・ミシェル河岸のアトリエ』やドガの『稽古する踊り子』などが、ドールハウスでよく使われる1/12スケールで作られているんです。額の色や装飾も実物に結構似ていて。娘の人形コーナー用に買っていこうとしましたが、せっかく絵が来日しているのですからまずは本物を観てもらい、その後に本人に選んでもらおうと思います。
会場:三菱一号館美術館
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