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赤が似合います、草彅剛さん。

横浜の神奈川芸術劇場KAATに、草彅剛さん主演の舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』を観に行きました。中華街などにも立ち寄れる週末に訪れても楽しい場所。いい作品を多数上演する、フィガロの演劇レビューページにもよく登場する劇場です。

草彅さんの演じる役は、シカゴのギャングのボス、アルトゥロ・ウイ。ブレヒトが原作で、戯曲が書かれた当時は、アルトゥロ・ウイはナチスのヒトラーを想定していて、本作を演出なさった白井晃さんは、ブレヒトの勇気に度肝を抜かれ、演出手法に感服する、というようなコメントを残されています。

200122_2.jpg撮影:細野晋司

この舞台での草彅さんは神懸かっている! まさに演劇の神が降りてきて憑依しているかのごとくです! 表情に宿るエロス、その横顔のシャープな美しさにほれぼれしました。白井さんは、ブレヒトによるヒトラー=ウイを、どこか現代のアメリカ・トランプ大統領の登場と重ねて考えていたり、ポピュリズムの台頭への警告のような意味を込めていらっしゃる部分があるのかもしれません。ミュージカル仕立てに演出し、ジェームズ・ブラウンの泥臭さと熱がこもったソウルミュージックと掛け合わせる、という白井さんのアイデアに、観客である私も打ちのめされるほど素晴らしいと感じました。舞台装置はブロードウェイばりの派手さ・明るさが前面に押し出されている点も、この演目のアンビバレントな魅力。

セリフの中に、劇場であるKAATにも触れていて、これがなんだか音楽ライブの時の「来たぜ、ヨコハマ!」的な臨場感もあって乗れました。

主役である草彅さんのダンスがきれっきれ!「形」の美しさ、止まった瞬間のフォームがきれいで、ますます本作の根底に潜む意味が、草彅さんの表現によって主張されていくように思えました。そして、すごい持久力で踊り続けるのです……。

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赤と黒が基本色になっているのもスタイリッシュでした。草彅さん、本当に赤いスーツが似合います。こんなに鋭く演じ切っているのに、アンコールではやわらかな草彅さんに戻り、観客たちに応えてくれた姿に、ファンの方々は本当に痺れたのではないでしょうか。スーツケースを預けて観に来ている方々も。劇場の荷物預り所であんなにたくさんのミニスーツケースを見たのは初めてでした。

パンフレットのコメントで草彅さんがこちらのカフェ「VENT VELA」のアイスクリームを褒めていて、立ち寄ってしまいました。売れ行きが良すぎるそうで、私は最後に残っていたひとつをいただきました! なんて運がよかったんだろう……。

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KAATの入っている建物の1階にあるカフェのプレミアム生クリームソフトアイスクリーム「クレミア」¥638。くるんである生地がラングドシャー! 濃厚でミルクの味が濃く、味わうだけて豊かな気持ちになりました。

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KAAT前の通り。マチネの終わりに看板をぱちり。横浜の夕闇の街をひとり、JR関内駅まで歩きました。

ところで、話は変わりますが、ナチス映画は実はすごく人気があり、配給的にも観客動員が見込めるとされています。ヒトラーが登場しなくても、ナチスによって迫害された人々を描いた作品もたくさんあるので、この舞台を観て興味を持った方々はぜひ。タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009年)、米国アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞したハンガリー映画『サウルの息子』(15年)などもそうです。

『アルトゥロ・ウイの興隆』
2020年1月11日(土)~2月2日(日)
KAAT神奈川芸術劇場・大ホール
演出:白井晃
www.kaat.jp

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